Safe, Fresh, and Homemade

「安全」「新鮮」「手作り」を徹底して実践するジュースバー。ファンが急増するそのワケは?

「ジュースバー(スタンド)」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるだろう。ストイックな食習慣? ファッショナブルなライフスタイル? 否、「体と心を健康に保つ近道です!」と話すのは、「TOKYO JUICE」代表のジェフリー・室松さん。2023年、表参道に次ぐ2店舗目として麻布台ヒルズに開業した「トーキョージュース」は、朝8時のオープン直後から大勢の常連客でにぎわう地域の“インフラ”だ。創業の経緯、麻布台ヒルズの店の役割について話を聞いた。

TEXT BY KEI SASAKI
PHOTO BY NORIO KIDERA
EDIT BY KAZUMI YAMAMOTO

自家製アーモンドミルク、オーガニックアサイーがベースのアサイーボウルは4種が揃う。旬のフルーツを使った「リミックスボウル」テイクアウト1750円、イートイン1780円

——現在都内に5店舗、神戸に1店舗を展開され、数あるコールドプレスジュースブランドの中でも絶大な人気を誇る「TOKYO JUICE」ですが、創業のきっかけはご自身の体調不良だったそうですね。

はい。アメリカの大学を卒業し、日本に帰国して会社勤めをしていた頃、慢性的な体調不良が約1年もの間続きました。皮膚炎や疲労感、無力感もひどく、メンタルにも支障をきたすほどでしたね。医者にかかっても改善しないどころか、薬の副作用でさらに苦しむ結果になり。何か食べたことで湿疹が出ることもあり、食事が怖くなって80kgあった体重が60kgまで減ってしまった時期も。よい解決方法がないか、独学で探るうちに、たどり着いたのが食生活の改善でした。今振り返れば、添加物を使用した加工品を何の疑いもなく食べていた上に、圧倒的に野菜が不足していた。ファストフードやコンビニのお弁当はそんなに食べていなかったけれど、それでも体に負担があったのだなと思います。

多くの材料は生産者から直接仕入れる。すべて冷蔵ショーケースで管理。

ナッツやスパイスシード、ドライフルーツなどもオーガニック。

——食生活の問題点を発見したところから、具体的にどのようにして健康を取り戻したのですか。

食品添加物を使った加工品を避け、できるだけ新鮮かつ安全な食材を使って自炊をするようになりました。加えて、野菜や果物から自分でジュースを作り、1日1リットル飲むように。始めた頃は胃の調子もあまりよくなかったのですが、ジュースならば胃に負担がなくたくさんの野菜が摂れた。毎日欠かさず2週間続けたら徐々に体調に変化が見え始め、半年で不調は消えました。野菜ジュースを飲むという発想は、アメリカ生活にヒントがありました。野菜は体にいいとわかっていながらも、一人暮らしで自炊の習慣も乏しいと、食べるチャンスがない。その頃、よく近所のジュースバーに駆け込んでいたんです。私が暮らしていたカリフォルニアにはジュースバー文化が根付いていて、コンビニほどではないけれど、今の東京で例えると「成城石井」くらい?(笑)。身近にあるものでした。

食材をゆっくり圧搾することで、熱でビタミンや酵素を損なうことなくジュースにできる油圧式のコールドプレス機を使用。「グリーングロー」には、これでもか、とセロリを投入!

「グリーングロー」は、セロリやケール、ほうれん草、生姜等のミックスで甘さゼロ。「野菜ジュースは糖分が多い」という常識を覆す、冷製スープのような一品。1,080円。

新鮮で安全な野菜を毎日、気軽に。ジュースバーという新しい提案

——わかりやすい例えです。そこから東京にもジュースバーが必要なのではないか、と。

はい。ジュースバーがあれば、忙しい人や自炊の習慣がない人でも新鮮な野菜や果物を日々の食生活に簡単に取り入れることができると、自分の経験から気づいたので。裏を返せば、東京にはカリフォルニアにあったような気軽に立ち寄れる店がないこともわかった。自分なら近所にどんなジュースバーが欲しいか。考えたとき、改めてドン底の体調不良から救ってくれた食生活を整理してみました。要点は三つ。添加物を使って加工された食品を避けること、安全な食材を新鮮な状態で使うこと、非加熱でできるだけ食材の栄養価を損なわないまま体に取り入れること。この三点が、そのまま「TOKYO JUICE」のレシピの柱になっています。開業する前に妻とともに渡米し、カリフォルニアからアリゾナまでジューススタンドを廻る旅もしました。必要なもの、本質でないものやこと、自分たちがいいと思う店にあってほかの店にないものなどを、整理するために必要な時間でした。

——初めての飲食業で、安全で新鮮な食材の調達には苦労されませんでしたか?

そこに関しては、試行錯誤の食生活改善の体験が役に立ちました。当時、安心して食べられる野菜や果物を求めて、青山の「ファーマーズマーケット」に通っていたんです。1年通ううちに農家さんたちとも話をするようになり、ジュースバーの話をすると、皆さんが快く協力を申し出てくれました。「ファーマーズマーケット」に出店する農家さんの多くは、いわばチャレンジャーです。病害虫などの危険と闘いながらも農薬をできるだけ使わず作物を育てているわけですから。虫食いの跡があったり、形が不揃いだったりすると市場に出荷できないものも出てくるのですが、そこはジュースの出番。私たちが必要とするのは健全な“中身”で、形は関係ないので、共存共栄の好循環を生み出せる。心ある農家さんが事業を継続していけることも視野に入れなければ、安全な野菜を手に入れ続けることはできない。ジュースバーを立ち上げることは、そういった農業や環境の問題にも、微力ながらコミットできるのだと気づきました。

「製造工程もすべてオープンに」がモットー。スタッフの衛生管理も徹底している。

スムージー。パープルは、注目のスーパーフード・スピルリナ(藍藻類)の自然な色彩。

スムージー「ココブルー」のスワール(スピルリナ)アップグレード版。ココナッツミルク、マンゴー、パイナップル、ライムなどを使用した爽やかな味。1,380円。

アメリカを真似ない、市場に阿らない、誠実な商品・店づくりを

——ジュースバーという文化が根付いていない日本で店を開くにあたり、どんな店づくりを心掛けられましたか。

おっしゃる通り、ジュースバーの文化がないので、例えばアメリカの繁盛店のスタイルをそのままコピーしたのではダメだとわかっていました。短期的に話題を集めても、すぐ消費され飽きられてしまう。日本国内の近しい業態——例えばコーヒースタンドなどの——人気店をお手本にすることもなかった。なぜなら、マーケットで必要とされるものではなく、自分自身の経験から“本当によいと思うもの”を届けたいという、揺るぎない思いがあったからです。絶対に譲れなかったのは、オープンキッチンです。理由は二つ。一つ目は、「安全」「新鮮」「手作り」といった看板に嘘がないことをお客様に見て頂くためです。野菜や果物は切るところから。アーモンドミルクでさえ、毎朝店で搾る自家製です。素材や作業工程において、私たちには隠すものが何一つありません。二つ目は、日本にジュースバーの文化がなかったからこそ、商品について説明が必要だったからです。なぜ既製品より値段が高いのか、野菜ごとの栄養価について、それを損なわない非加熱の製法について。説明を必要とするお客様にお伝えしたいことは山ほどあります。オープンキッチンは、ここ麻布台ヒルズ店だけでなく、全店舗に共通する「TOKYO JUICE」のアイコンです。

「店のアイコン」と話すオープンキッチン。若いスタッフがいきいきと働く様子も清々しい。

テイクアウェイの商品も充実。オンライン販売、デリバリーといろんな形でアクセスできる。

——結果、その店づくりも功を奏して、店舗を増やし続けている。食の一ジャンルを拓いたともいえますね。

もちろん慈善事業ではないので、経営を成り立たせないといけないのですが、自分を窮地から救ってくれた、本当にいいものをきちんと提供できれば、必ずお客様がついてくれると信じていました。ジュースを含め食べ物、飲み物は薬ではないので、何が何に「効く」というものではありません。たまに「ジュースだけ飲めばOKか?」という質問を頂くことがあるのですが、答えは「NO」。「まず、添加物だらけの食品や加工品を摂るのをやめてみて下さい。ジュースを飲んで頂くのはその後で」とお答えしています。「私自身が健康になった」ことに嘘はありませんが、「ジュースを飲めば誰でも健康になれます」とは言えない。それぞれの体質や食体験の蓄積が一人ひとりの今の体を作っているので。でも「毎日飲んで調子がいい」「もう手放せない」とおっしゃって、継続的に利用して下さるお客様がいらっしゃるのは事実で、店を開いて本当によかったと思える瞬間です。

——現在は店舗での販売のほか、デリバリーや対企業のサブスクリプション、社員食堂のコンサルティングなど、広い販路を持ち、事業を拡大されています。

企業の経営者やエグゼクティブの方とよくするのが、「ジュースは効率のよい福利厚生だ」という話。社員食堂同様、働く人の健康を支えるもので、かつ、バランスのよい食生活の構築に一役買えるわけですから。私個人の話をすれば、ジュースを飲み始めて9年、寝込むような風邪をひいたことがない。健康な体というのは、元気に働けて、薬や医療要らずで、実に経済的、つまり健康への継続的な投資は、長い目で見ればコスパがいいというか、安上がりだと思うのです。デリバリーのニーズに関しては、嬉しい想定外でした。自社での配達に加え「Uber Eats」も利用しているのですが、ニーズが非常に高く、売り上げの少なくない割合を占めています。この結果は、商品自体が必要とされ、評価されていることの証といえるはず。生活の圏内や動線上に店舗はないけれど、毎日、あるいは定期的に購入したいというお客様が一定数いて下さる。トレンドや“映え”の文脈でバズりがち(笑)な業態ですが、そうではなく、商品そのものが信頼を得ていると自信を持たせてくれるのがデリバリーです。

愛犬の同伴もウェルカム。ある日の「麻布台ヒルズ店」のお客様。

グラノーラ、アーモンドやデーツのペーストなど、オーガニックの加工品も販売。リピーター多数。

麻布台ヒルズから、好循環の輪を広げていく。

——麻布台ヒルズの店に関して。ほかにない特徴や、お客様の傾向などはありますか。

レジデンスにお住まいの方もオフィスワーカーの方々も、とにかく食生活や健康に関心の高いお客様が多い印象です。朝8時オープンなのですが、そこからの2時間は毎日が店の“ラッシュアワー”。この町に暮らす方々の生活に根付けたのだと実感し、嬉しくありがたく思います。森ビルの方に出店の話を頂いたときから「必ずいい店にできる」と確信していました。麻布台ヒルズが掲げる「グリーン&ウェルネス」のコンセプトは、私たち「TOKYO JUICE」の、「野菜や果物で、健康に」という理念とそのまま重なるものだからです。麻布台ヒルズの信条をシンプルに、わかりやすい形でお客様に差し出すことができるのは、我々を置いてほかにないと思ったほど(笑)。開業時から、敷地内の農園で育てたハーブや柑橘などの果物をデトックスウォーターやジュースに使うなど、小さなコラボレーションも続けています。麻布台ヒルズという新しい街を訪れたことで「TOKYO JUICE」を知って下さる方もいれば、「TOKYO JUICE」をきっかけに麻布台ヒルズの未知なる一面に触れる方もいる。好循環はここにも、生まれているように思います。

トーキョージュース


毎日の生活にヘルシーな選択をしていくことで、クオリティの高いライフスタイルになります。トーキョージュースでは、オーガニック野菜と果物を使い、栄養いっぱいの美味しいジュースやスムージー、アサイーボウル、軽食を提供します。ジュースクレンズで疲れた胃腸をお休みさせたり、毎日その日に必要な栄養を季節の果物と野菜から摂っていただき、よりハッピーで充実したライフスタイルをお過ごしいただきたいと思います。

場所=麻布台ヒルズ タワープラザ 1F
時間=8:00~18:00

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ジェフリー・室松|Jeffry Muromatsu
「TOKYO JUICE」オーナー。アメリカ人の父と日本人の母を持ち、東京・世田谷区で育つ。大学進学時に渡米し、2015年帰国。2年の会社員生活の間に体調を崩し、自身の克服体験をもとに「TOKYO JUICE」を創業、表参道に一号店をオープン。現在、麻布台ヒルズ、広尾、代々木、自由が丘の東京5店舗、兵庫県神戸に1店舗の計6店舗を展開するほか、コンサルティングや商品開発・監修など幅広く活動する。

Q. 新たな気づきや共感を得ることができましたか?