School-Community Collaboration

麻布台ヒルズに移転して3年、子供たちにどんな変化がありましたか?——ブリティッシュ・スクール・イン 東京に聞きました

麻布台ヒルズの開業とともに同敷地内に誕生したインターナショナルスクール、ブリティッシュ・スクール・イン 東京(以下、BST)。開校から約3年を経て、麻布台ヒルズのコミュニティの一員として、どのような活動をし、どんな成果が生まれたか、BSTのオペレーション・ディレクターのベンジャミン・ローランさん(以下、ベンさん)に伺った。

TEXT BY Kazumi Yamamoto
PHOTO BY Keisuke Fukamizu

BSTは1989年に学校法人渋谷教育学園の一校として開校。もともと渋谷と昭和女子大学内にキャンパスがあったものを、渋谷校の全機能(3〜8歳)と昭和女子大の一部(8〜11歳)を麻布台ヒルズの新キャンパスに統合。幼児から初等教育まで一貫した教育の提供を実現させた、都心最大規模のインターナショナルスクールの誕生は大きな話題となった。そして3年を経て、中央にある広場に佇めば、コーヒー片手に談笑するワーカーや、ショッピングを楽しむ人たちの背後に、子供たちの歓声がこだまする。いまや確実にこの“街”に欠かせない一員となった。

イギリス人デザイナー、トーマス・ヘザウィック率いるヘザウィック・スタジオがBSTの建物のデザインを手掛けている。「ヘザウィックの建築哲学とわれわれの教育哲学に親和性を感じました」とベンさん。

——麻布台ヒルズに移転して変わったことはなんですか?

BL 一つは「学びの空間」が変わった、ということです。幼児から初等科までをまとめたことで、学びの可能性も質も広がりました。設備でいうと、語学教育のための専用の空間を設けたり、スポーツに関しても、年間通して使える25メートルの屋内プールや、体育館、校庭も備わったので、できることが飛躍的に増えたのです。テクノロジーの専門の教室もあります。専門の施設を使いながら、質の高い教育ができるようになった。そんな革新的な教育の場であることが認められ、開校時には彬子女王殿下に列席していただき、その後も小池都知事、ロンドン市長、エドワード王子も来校されました。つまりは東京、日本、ひいてはアジア全域に本校の存在感が増してきているのを実感しています。

水泳の授業は年間を通して行われている。写真は水球の授業。Photo Courtesy ©The British School in Tokyo

——子供達に変化はありましたか?

BL 以前は学年すべてが集まって合同で何かを開催する、というのがなかなか難しかったのですが、それがスムースに行えるようになった。学年を超えての交流も盛んになり、高学年の子供たちがリーダーシップということを学べるようになりました。

——麻布台ヒルズのコミュニティの一員として、どのような活動をされてきましたか?

BL BSTには「環境は第三の教師である」という教育理念があります。第一は教師、第二は生徒たち自身、第三が空間や環境です。年齢も国籍も職業も異なる人たちが行き来するこの環境は、素晴らしい学びの場を提供してくれています。さらにコミュニティの一員として街と連携を深めるために、さまざまな取り組みを実現してきました。たとえば、麻布台ヒルズとの合同震災訓練。普段一般公開されていない麻布台ヒルズの備蓄倉庫やダンパー(制振装置)、エネルギーセンターにおじゃまし、地震のときにどのように安全が確保されているか、などの見学をしました。非常に有意義な時間で、ある子供は「建物の構造を見ることができてとても参考になりました。授業で地震とその影響について学んだばかりだったので、麻布台ヒルズが緊急事態に備えて街としてどのように設計されたかを知る機会に恵まれて、とても感動しました」とコメントしていました。

震災に対する取り組みをツアー形式で実施。生徒たちは耐震構造に興味津々。Photo Courtesy ©The British School in Tokyo

災害時の非常食や防寒などのキットも体験。Photo Courtesy ©The British School in Tokyo

BL また、アート教育にも力を入れていることもあり、麻布台ヒルズ ギャラリーで開催した「アレキサンダー・カルダー展」のツアーをギャラリーの担当者に実施していただきました。また、BSTは毎年「ヒルズワークショップ フォーキッズ」に参画しており、2024年に行わなれたBSTが普段行っている英国式教育を体験できるワークショップはとても好評でした。そのほかにも、通常は学校関係者のみで行われる学園祭・スプリングフェアでは、今年初めて一部のコンテンツを一般の方の目に触れる形で開催し、生徒たちが中央広場のアリーナで音楽パフォーマンスを披露したんです。「あの素晴らしい場所でパフォーマンスできたことは、とても特別な経験となりました」との感想が寄せられました。

——そういった取り組みに参加することで子供たちの成長や変化はありましたか?

BL ひとりひとりに自信がついてきているのが目に見えてわかります。そして、広い視野で世の中に対しての責任を持てるようになっている。そういった変化を実感しています。わたしたちは、生徒たちに、コミュニティの一員である、ということを口をすっぱくして伝えています。たとえば、登下校のときにどのようなふるまいをすべきか、街に集う人たちとどのように接するか、などですが、そういった経験を経て、成長に繋がっているな、と感じています。

仲間と相談しながら、楽しげにダンボールなどでロボットを作成。

——今後、どのような取り組みを企画していますか?

BL 麻布台ヒルズのカフェにご協力いただき、幼児教育科の子供たちが校内のスペースにコーヒー屋さんコーナーを作る、という企画を考えています。麻布台ヒルズ内には素晴らしい企業が多く名を連ねているので、どちらかの企業に協力していただき、1週間のインターンに参加させることが理想です。これまでもBSTではそういった試みを実施していて、大学を卒業後、インターンに参加した企業に就職する、という嬉しい出来事もありました。

——BSTの教育方針を改めて教えてください。

BL 学問的な知識だけでなく、それぞれの個性、社会的・感情的な成長、創造性、リーダーシップ、国際的な視野など多方面な発達を重視する「ホリスティック・エデュケーション(全人的な教育)」を教育理念としています。高い学力をつけて世界に羽ばたいていくのも重要ですが、まずは健康でいてほしい。そして音楽やスポーツ、芸術など多種多様なことに関心をもってほしい。本校を巣立つときに、健全な価値観を持って、広い視野で、どのように世界に貢献できるか、ということ理解した状態で巣立ってほしいと願っています。「子育ては村でおこなう」というアフリカのことわざがあるのですが、まさにその通りで、親だけでなく、教師やコーチ、街の人々みんなで育てていく。麻布台に移転してきたことで、そういったさまざまな人たちに囲まれて育んでいける環境にある、と感じています。

体育の授業や課外活動などに使われる広い体育館も。

フットサルコートが2面とれる面積の校庭がふたつ屋上に。

BL そして、もう一つ、「レッジョ・エミリア・アプローチ」教育の理念も取り入れています。生徒は空っぽの容器でそこに知識をつめこんでいくのではなく、それぞれがクリエイティブな人間であって、その個性と可能性を尊重しながら学びを促進する教育アプローチです。「こどもたちの100の言葉」は、レッジョの教育理念を象徴する詩。様々な自己表現の仕方を子供たちはもっていて、その子供一人一人にあった教育をする、ということです。

——麻布台ヒルズには「ウェルネス」という大きな理念がありますが、BSTではどのように教育に取り入れていますか?

BL 私たちの教えのあらゆる側面で「ウェルネス」の考え方が反映されています。たとえば、いま社会でおこっていることに1人の人間としてどういった感情で向き合うか、といった健全な精神を育むことも教育の中で触れています。もちろん麻布台ヒルズのグリーンでサステナブルな環境も子供たちの心身にとてもいい影響を与えています。また、校舎には屋上庭園があり、都市農業をやっている団体の方に来てもらい、屋上でフルーツや野菜を栽培しています。BSTの頭文字をとって、「Be Courageous(勇敢であれ)」、「Show Respect(思いやりを持て)」、「Take Responsibility(責任を果たせ)」という哲学を常に言っていまして、これらはウェルネスを体現した表現だと思っています。

屋上庭園では、野菜や果物を栽培している。収穫物を使ってイベントも開催。Photo Courtesy ©The British School in Tokyo

——BSTはベンさんにとってどんな存在ですか?

BL 私はかつてイギリスのサッカークラブで働いていました。そこでは、さまざまな事情を抱える子供たちをクラブに招いて、サッカーだけでなく他のことも教えていて、その体験がひとつのきっかけとなり教師を目指しました。教育は学力を身につけさせる、という面と、人としてのふるまいである人間性を育む、という面があります。BSTはその両面を伝える学校であるのが素晴らしい場所だと思っています。教師が徹底して対個人として向き合い、身につけてきた経験すべてを総動員して子供たちと向き合っているので、とてもやりがいを感じています。

今回お話を伺ったオペレーション・ディレクターのベン・ローランさん。

The British School in Tokyo


麻布台ヒルズキャンパスには、幼児・初等教育科の生徒達が通学。豊かな自然を感じられる環境の中、国際感覚に優れた未来を担う子どもたちを育みます。