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「ここは日本一の横丁だ」 オーナーシェフ、店主、プロデューサーが語る、虎ノ門横丁の6年

虎ノ門ヒルズの「虎ノ門横丁」が開業6周年を迎え、6月12〜13日の2日間「虎横祭 2026」を開催。滋賀の精肉店「サカエヤ」の肉、豊洲「フジタ水産」のマグロを使った限定メニューが並び、オーナーシェフたちも自ら厨房へ。横丁の開業から6年。店主、料理人、生産者、プロデューサーの言葉から、日本を代表する食の横丁へと育った虎ノ門横丁の現在地を見つめる。

TEXT BY Miho Matsuda
PHOTO BY Tomo Ishiwatari

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1/7 「酒食堂・虎ノ門蒸留所」の虎横祭限定メニューは、「フジタ水産」のマグロのブロックを、その場で捌いた「鮪刺盛」。多くの人が、一流寿司店でも取り扱う最高級のマグロに舌鼓を打った。
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2/7 虎横祭の期間中は、各店のオーナーや店主などの名前を記した提灯が、横丁を華やかに演出した。
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3/7 「ファイヤーホール 4000」の虎横6周年オリジナルメニューは、滋賀県草津市の精肉・卸専門店「サカエヤ」の牛レバーを使ったレバニラ。シャキシャキ感を残した野菜と、中はふんわりクリーミーなレバーが絶品。
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4/7 「振り塩とイタリアン イル・フリージオ」では、「サカエヤ」の牛肉の味わいを生かした肉寿司を提供。
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5/7 豊洲の仲卸業「フジタ水産」のマグロを「振り塩とイタリアン イル・フリージオ」の奥田シェフが、シャリを小手返しでふんわりと握った、大トロ、中トロ、赤身。
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6/7 虎ノ門横丁の25店舗が、お客様への感謝の気持ちを一皿に込めた。
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7/7 法被姿のスタッフが、祭り気分を盛り上げる。虎横祭期間中は「2F(ツーフー)」とのコラボTシャツ販売や、七味唐辛子の老舗「八幡屋礒五郎」による出張カスタム七味ブレンド、「ぺぺぺ似顔絵店」渡邉知樹氏による道端似顔絵店などのイベントも開催。

6周年の虎横祭は、「料理人の前に生産者がいること、食材のいのちに向き合うこと、すべての感謝を“還元する”」をテーマに、虎ノ門横丁の全25店舗が「ありがとうをおいしいで還そう!」の合言葉のもと、さまざまな形で感謝の気持ちを “還す”コンテンツを展開した。

伝説の精肉店とも称される、滋賀県草津市の精肉・卸専門店「サカエヤ」から、代表の新保吉伸氏が「手当て」という独自の手法を施した牛肉を提供され、また、銀座の名店も信頼を寄せる豊洲の仲卸業者「フジタ水産」より、代表の藤田浩毅氏が選別した、最高級のマグロ丸一本が登場。さらに、日本の食を牽引するオーナーシェフたちも自ら厨房に立ち、虎横祭限定メニューを振る舞うなどして、6周年を盛り上げた。

スターシェフたちが証言「ここは日本一の横丁」

虎ノ門横丁の6年を見つめた、4人のオーナーシェフや女将に、虎横祭での取り組み、6年間の歩み、そしてこれからの虎ノ門横丁について突撃インタビューを敢行。そこから見えてきたのは、それぞれが作り上げてきた「虎ノ門横丁」の本当の価値だ。

銀座バードランド 和田利弘さん
「味のわかるお客様がいるから、小細工はいらない」

虎ノ門のお店の営業は皆に任せていますが、週に3〜4回は顔を出しています。もしかしたらオーナーの中では一番来ているかもしれませんね。

ここに出店したのは銀座に近いから。日比谷線で3駅ですからね。虎ノ門というとビジネス街というイメージがありますが、意外とマンションが多く住んでいる人達がいます。銀座のお客さんが横丁にサンダルばきで来たのでビックリしました。

虎ノ門界隈は、そういう味のわかる人がいる。だから、小細工は必要ない。目の前のお客さんに合わせて、まっすぐやっていけばいい、と。それは基本的に銀座と変わりません。みんな、よくやっていると思います。横丁の他の店とも仲良くやっていますしね。これからも「向こうが頑張っているからこっちもやるぞ」と、お互いに影響し合っていければ、ますます面白い横丁になっていくだろうと思います。

振り塩とイタリアン イル・フリージオ 奥田政行さん
「ここは日本一の横丁だと誇りをもって」

8年前に虎ノ門横丁に出店しようと決めたのは、マッキー牧元さんの説得があったから。山形の鶴岡まで口説きに来てくれたんですよ。「いい場所を用意するから」と言ってくださってね。それで鶴岡の「イル・フリージオ」を閉めて、みんなでこっちに来たわけです。

オープンから6年経ってみて、来て良かったと思っています。ここなら東京の人に山形のことを発信できるしお寿司の新しい形も紹介できる。そこは大きいですね。施設側も、スタッフのことをよく考えてくれています。お店が大事にされているから、店舗同士も仲がいいし、それぞれの店舗も一生懸命やっている。そうだから今回のように、精肉に対して独自の哲学をもつサカエヤさんがお肉を横丁に卸してくれたり、フジタ水産さんが銀座の店用の最上級のマグロを横丁にまわしてくれました。

そして、この2つの業者さんにお願いしてくれたのが、マッキー牧元さんです。これは、マッキーさんからお店側へのお題なんですよね。生産者や卸の方々、マッキーさん、そして我々、それぞれがもつ哲学や信念を、一直線につなげて私たちは料理という答えにしてお客様に提供する。挑戦しがいがありました。

僕は日本全国、いろんな街を訪れては、そこにある横丁を覗いてみるんですが、地方なら八戸のみろく横丁、東京なら虎ノ門横丁だと思います。お客さんがいいんですよ。ここには秩序があって、野暮ったくない。いいものを出せば、ちゃんとわかってくれるお客様もいる。

お店側も「日本一の横丁だ」という誇りを持って、みんなが頑張れば、お客さんも「あそこに行けば何かがある」と期待してくれる。だからそれに答えようとする店のある虎ノ門横丁はもっともっと盛り上がっていくと思います。

ファイヤーホール 4000 菰田欣也さん
「マッキー牧元さんや森ビルさんが目指した、大人の横丁が実現した」

6年前の立ち上がりはコロナ禍の真っ最中だったので、当初は大変でした。私も、火鍋の業態を始めてすぐにお声がけいただいて、自分でも試行錯誤している最中の出店でした。横丁での営業というのも、やりながら「こういう感じなのか」と掴んでいったところがあります。

コロナが明けて、働く人も街に戻ってきて、6周年の今、マッキー牧元さんがずっとおっしゃっていた「大人の横丁」が実現しつつあると思います。虎ノ門ではステーションタワーも開業して、「ビジネスタワーといえば横丁」というイメージも定着したんじゃないでしょうか。

今回の6周年では、サカエヤさんに牛のレバーを出していただいて、レバニラを作りました。レバーは鮮度が命なんですが、赤身肉と同じくらいぶりっとした弾力があるんです。こういった、なかなか他では食べられないこだわりのものを気軽に食べられるのは、横丁ならではだと思います。かしこまってレストランに行くのとはまた違う形で、様々なシチュエーションで利用していただける場所なので、もっと気軽に活用してもらえたら。

虎横祭だけでなく、普段から食材にこだわっておいしい料理を提供しています。周りのお店も頑張っています。ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいですね。

ポロフリg 山岸沙織さん
「会いたい人がいる横丁になってきました」

虎横祭では、サカエヤさんの経産牛の頬肉とネックとスネなどの希少部位を使った、トマト煮込みを作りました。何度も出産した経産牛なので、扱いにはコツが必要なんですが、それだけ頑張ってきたんだなという食材へのありがたみも感じますし、新保さんの「手当て」も施されていますから、みなさんに好評をいただいております。

6周年を迎えて、虎ノ門ヒルズで働くワーカーさんもよく来てくださいますし、この横丁があるからとわざわざ虎ノ門に足を運んでくださる方も増えました。虎ノ門横丁のコンセプトに「会いたい人がいる店」というのがありますが、そういう場所になってきたんじゃないかと思います。店舗同士の繋がりもあって、横丁の雰囲気がいいから、「行きたい」と思ってくれていたら嬉しいです。

“街の磁場”はいかにして育ったのか

虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーの開業とともに誕生した「虎ノ門横丁」。コロナ禍という異例の環境下で静かに幕を開けたこの場所は、6年の時間をかけて、単なる飲食店街ではない“街の力”を育んできた。企画プロデュースを手がけた、株式会社ウェルカムの横川正紀さんに、企画立ち上げ当初目指したもの、虎ノ門横丁が目指すこれからについて聞いた。

「おいしくたのしく、人を育て、文化を生む」
虎ノ門横丁プロデューサー・横川正紀さんが描く未来

横川 僕自身、最初に勤めた場所が虎ノ門で、思い入れのある街でした。ただ当時は、働く場所ではあるけれど、特別に「行きたくなる街」という印象はあまりなかったんです。そんな虎ノ門を、まだ色のない街だと捉えて、新しい色をつけていきたい。そういう思いから、このプロジェクトは始まりました。

コロナ禍の静かな開業から始まった、虎ノ門横丁の“最初の奇跡”

横川 ところが、いよいよオープンという時にコロナ禍に入り、レセプションも開業イベントもなくなってしまった。とても静かなスタートでしたが、24店舗の店主たちの、それぞれのSNS発信が繋がりあって大きな話題を呼んだんです。商業施設ではなく個人店が連なる「美味しい路」がコンセプトだったので、店主たちが自分のお店と横丁について自然な形で発信してくれたんです。するとインスタグラムのタグ付けでどんどん拡散されて、「何かすごい場所ができるらしい」と、多くのお客様が来てくださったんです。個店個店の常連さんもまたつながり合い、大きな施設のオープンとは違うムードをつくってくれました。

施設の衛生管理もしっかりしているということで、最初の半年ほどは僕らも驚くほどお客様に来ていただきました。ただ、その後コロナの状況が深刻になり、特にお酒が提供できなくなった時期は本当に苦しかった。お酒に頼るわけじゃないけれど、人と人とのつながりをつくるうえで、お酒はとても大事な存在ですから。

そこから少しずつコロナが落ち着き、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーなど周辺の開発も進み、少しずつ軌道に乗り始めました。5周年を迎える頃に、もう一度原点に立ち返って、「お店の力でお客様を呼ぶことが街の力になるはずだ」と、店主たちの中から有志のメンバーによる会が発足しました。店舗主導で横丁を育てていこうという空気が生まれ、ようやく最初に描いた“横丁らしさ”が見えてきた気がします。

虎ノ門ヒルズに来たことがなかった方が、虎ノ門横丁をきっかけにこの街を知ってくださった例はたくさんあります。

「美味しい力で街の力になろう」と言い続けてきましたが、それは一朝一夕にできるものではありません。人の力でマグネットをつくろうとしているので、時間はかかります。でも、ようやく本当の力が見えてきました。

——各店舗の店主が主体性をもつことで「街の磁場となる空間」になるんですね。

6周年を迎えた虎ノ門横丁を盛り上げる、25店舗の店主・スタッフ・運営チーム(画像提供:森ビル)

横川 企画を始めた頃から、「三方よし」の話をしていました。お客様のためだけではなく、運営する側にとっても価値があり、ここで店を営む店主やプレイヤーたちにとっても、出店してよかったと思える場所にしたい。

特に大事にしたかったのは、店主や横丁で働く人たちにとっての“よし”です。それは利益だけではなく、その人自身の成長や、人生の中でここに時間を使う意味のようなものも含まれます。

個人店のオーナーが商業ビルに店を出すには、経済面、定休日、文化の相性など、いくつものハードルがあります。そこで、出店コストを抑え、週に1日は休めるようにし、ある店が休んでいても他の店が盛り上げるという、路面店的な感覚を大事にしました。店舗同士のつながりを大切にすることで、お互いに高め合える関係が生まれます。

ここは“1.5独立”のような場所でもあります。オーナーのお弟子さんや二番手が、限りなく自分の店として運営し、横に並ぶ店舗と学び合い、高め合える。そういったことが少しずつ実現して、中には、看板や事業を受け継いだ店主もいます。

お客様が増えた、認知が広がったということだけではなく、働くメンバー同士のつながりや、そこに弟子を任せたオーナーたちの思いが、いい循環を生み始めている。それが虎ノ門横丁の底力になっていると思います。

「会いたい人がいる街になる」——最初の合言葉が形になってきた

——店主やスタッフだけでなく、お客様も巻き込みながら、横丁への愛着が育っているんですね。

横川 最初の頃に、マッキー牧元さんが「虎ノ門は、会いたい人がいる街になるのがいいよね」と言ってくれたんです。それが、みんなの合言葉になりました。「あそこはおいしい」「便利」「素敵」でももちろんいい。でも、それ以上に「アイツがいるから行きたい」と言ってもらえる自分になろう、と。

おいしいこと、素敵であること、居心地がいいこと。そういうものが重なった先に、「会いたい人がいる街」が生まれる。その言葉が、ようやく形になってきたのかなと思います。

最近は、ひとつのお店のご縁を横につないで、横丁全体で何かをしようという動きも増えています。酒蔵や生産者の方との出会いを、みんなでいいものにしていく。売上や商業的価値ももちろん大切ですが、それだけではないところを評価してくださる方も増えていると感じます。

10周年に向けて、横丁を“文化交流拠点”へ

——今後、実現していきたいことは?

横川 最近、店主たちが一緒に学び合う動きが加速しています。今回の虎横祭でも、豊洲に朝早く集まって食材について学んだり、滋賀まで足を運んで生産者の方に会いに行ったり。僕はそれを、「横丁大学」のようなものだと思っています。仕事をしながら学び合える場所。これがもっと加速したらいいですね。

これから、生産者の方との出会いや、地方とのつながりをきっかけに、「今月はこの地域を応援しよう」といった動きも生まれてきています。それは単なる社会貢献や企業活動というより、人と人がつながり、気持ちよく広がっていくものだと思います。

そうなれば、虎ノ門横丁はただの飲食店街ではなく、文化交流拠点になっていくはずです。六本木とも銀座とも違う、虎ノ門らしい文化発信の場所になっていく。

10周年の頃には、そこまでいけたらいいですね。そしていつか独立する店主がいても、「俺、あそこにいたんだ」「あそこでつながったんだよ」「あそこを卒業したんだよ」と、卒業生の輪も広がるような語れる横丁になったらいいなと思います。

虎ノ門横丁

住所=虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー 3F
営業時間=11:00〜23:00(店舗により異なる)
一部店舗では事前オンライン予約可