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プロのモノ選びに学ぶ ❶[食編]——「ナスキロ」シェフ高山いさ己

春が訪れ、新しいモノとの出会いが嬉しい季節。その道のプロフェッショナルな人はどんなモノ選びをするのだろう? 今回は熟成肉のスペシャリストで炭火焼きステーキ店「ナスキロ」のオーナーシェフを務めるほか、虎ノ門ヒルズの人気煮干しパスタ店専門店「si si 煮干啖」を手がける高山いさ己さんと、インテリアデザイナーの官野亜海さんに、お互いにお題を出し合ってセレクトをしてもらいました。今回は官野さんの食にまつわる2つのリクエストに、高山さんが六本木ヒルズで応えます。

Text & Edit by Mio Koumura
Photo by Machiko Horiuchi

“ワンランク上の料理が叶う調味料”を見つけに
グロッサリー「グランドフードホール」へ

官野さんからのリクエスト ❶
おすすめ調味料とその使い方を教えてください

「食べることがとにかく大好きで、自炊も多いのですが、手が凝った料理をしているわけでもなく……。ひと手間加えるぐらいの気軽さで、休日などにワンランクアップした料理を作ることができる調味料とその使い方のコツを教えてください」

バイヤーが厳選した、味と安全性にこだわり抜いた上質なフードが揃う「グランドフードホール」。お店に入るやいなや、高山さんも「これ僕も使っています」や「これ大好きです」というものが次々と。シェフが常駐し手作りするお惣菜エリアでは、「このお肉を、この価格で提供できるのは素晴らしい。手土産にもいいですね」とこだわりのローストビーフの仕上がりと価格に驚いている様子も。

高山いさ己|Isami Takayama 1975年東京生まれ。実家は、浅草の老舗焼肉店「冨味屋」。18歳から料理の道を志し、2002年に渡伊。都内数店でシェフを勤めた後、2007年に牛込神楽坂にイタリアン「アンティカ オステリア カルネヤ」を開業。2021年には新宿に紹介制の炭火焼きステーキ店「ナスキロ」をオープンした。2020年に虎ノ門ヒルズの虎ノ門横丁内に構える「si si煮干啖」を出店。

お取り寄せからオリジナルまで幅広く揃う冷凍食品エリアでは、冷凍野菜を見て「野菜は冷凍すると香りはなくなるけれど、繊維が壊れて味が濃くなるんです。冷凍野菜のまま水と一緒にピューレにするのは、おすすめですよ。スープにするのもいいけれど、色や味を楽しめるのでシンプルな塩とオリーブオイルの味付けでピューレとして、肉や野菜のソースにするのもおすすめです」

◆高山さんが選んだモノ
「かにみそバーニャカウダ」と「バジルソース」

写真左は「本当に美味しい」と高山さんが太鼓判を押す、鳥取県境港産の紅ズワイガニのかにみそをベースにした「かにみそバーニャカウダ」(1,150円)。写真右は大分県さんの朝採れバジルを半日休ませて作られる「バジルソース」(1,080円)

「かにみそバーニャカウダは、バーニャカウダとしてはもちろん、パスタソースとしても最高。でも一番のおすすめは、ご飯にかけること。こしょうとパルメザンチーズを先にご飯に載せて、最後に油ごと載せて食べると、リゾットみたいな味わいで癖になります。バジルソースは色がすごくいい。無添加でこの色に仕上げているということは、製法にこだわっている証拠。カプレーゼにかけると生のバジルよりも、味が絡み合っていいと思います。またバジルソースは万能で、魚のカルパッチョ、豚肉のローストにもぴったりですし、ポテトサラダにスプーン一杯落とすだけで、風味が加わり香りと味が引き立ちます」

“通な手土産選び”のコツは顔?! 人気ベーカリー
「ブリコラージュ」とチーズ専門店「ランマス」へ

官野さんからのリクエスト ❷
手土産のレパートリーを増やしたい

「最近では子どものいる友人も増え、会う場所が相手の自宅ということも多くなってきました。デリや甘いものなど、ワンパターンになりがちなので、手土産のレパートリーを増やしたいです」

まずは、けやき坂テラス1階にあるベーカリー&ダイニング「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」へ。全粒粉を使ったハード系からヴィエノワズリーまで、約30種以上のパンが並ぶショーケースを見て、高山さんが「この色目になるまでバターを使ってこの価格は安くないですか?」と言うのは、クロワッサン。聞けばフランス・ノルマンディー地方のイズニー社が誇るバターが贅沢に使われているそうで、一口食べた高山さんも「抜けるようなミルキーさ。これはすごい」と絶賛。

高山さんにパン選びのコツを聞くと、「パンって顔なんですよ。ここは、どのパンも顔がいいですよね」。店長の河本さんも「ありがとうございます。でも、本当にそうで。顔が大事で、毎日違うんです。いい顔になるように、人間も心地よい室温の中で生地にストレスを与えないように育てています」。かつてパン作りを学んだ経験があるという高山さんは、「超一流の服屋がシャツを畳むように、練り込むでのはなく優しく置くイメージだと僕も厳しく言われた記憶があります(笑)」と、パン談義に花が咲く。ちなみに、顔がいいと言うのは、裂け目や焼き色などの表情のことだそう。

◆高山さんが選んだモノ
「ブリコラージュブレッド」

店名を掲げた「鰤コラージュブレッド」(1,800円、1/4は450円、1/2は900円)は、国産全粒粉とライ麦、スペルト小麦などを加えて風味豊かに仕上げている。

「気泡のでき方がすごく美しい。レストランで出てきたら嬉しいくらいのクオリティなので、手土産にピッタリじゃないでしょうか」

最後に、「ワインを提案したい」ということで訪れたのが、六本木ヒルズレジデンスA1階のチーズ専門店「ランマス」。イタリア、フランス、イギリスから厳選して仕入れたチーズだけではなく、ワインもナチュラルワインを中心に200種類以上を取り揃える。高山さんが店で扱っているワインも見つかるなど、イタリアやフランスに加えニューワールドも含めた幅広い品揃えが魅力。

手土産の定番だけれど、何を選ぶかが難しいのがワイン。「ジュラ地方のワインをおすすめしたいですね」と高山さん。「ある程度個性があって、酸が独特。逆に言うと、ハマればすごく好きになってくれる。ナチュールが好きな人に持っていくのであれば、おすすめしたいですね」。また、ナチュラルワインはワイナリーの個性が溢れるユニークなエチケットも特徴の一つ。「パンと同じようなことを言いますがワインの顔も大事。味はもちろんのこと、オケージョンや季節に合わせて顔を選ぶのもおすすめです」

◆高山さんが選んだモノ
「ポデーレ ラ チェッレータ スタンカヴィツィ」

桜の枝をモチーフにしたエチケットが春らしいサンジョヴェーゼ 100%の「ポデーレ ラ チェッレータ スタンカヴィツィ」(3,300円)

「自分は肉屋だから赤ワインで(笑)、そしてエチケット的には今の季節はこれですね。ローストビーフとか、お肉にすごく合います。チーズを合わせるならブルーチーズがいいと思います」
 

旬のチーズと「ソーテンダー」セミドライフルーツ

コッツウォールズで作られる牛乳の「ロールライト」(2,100円/100g)は、フランスのモンドールチーズをイメージし、その製法で作られたイギリスでは珍しいウォッシュタイプ。イギリスのヘレフォードシャー州で作られる「ドーストン」(写真右、4,320円/1個、2,210円/ハーフ)はしっとりとした食感が特徴。手前に添えたいちじくは、フランスの伝統製法でセミドライに仕上げた「ソーテンダー」のセミドライフルーツ(1,100円)

「春に乳がとれるシェーブルチーズは、これからが美味しい季節です。ロールライトはとても珍しい。定番品になりがちな手土産ですが、そのお店にしかなかったり、その季節らしいモノはぜひ選択肢に入れたいですね。『ソーテンダー』のセミドライフルーツは瑞々しくて他のセミドライフルーツとは全く違います。お子さんも食べられるので、喜ばれると思います」

グランドフードホール 住所 六本木ヒルズ ヒルサイド B2F 電話 03-6455-5470 営業時間 [食品物販] 11:00~21:00 [レストラン] 11:30~14:30(L.O.14:00)、18:00~21:30(L.O.21:00)/金土祝前日11:30~14:30(L.O.14:00)、18:00~22:00(L.O.21:30) 定休日 月(祝日の場合は営業)  

ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー 住所 六本木ヒルズ ビ六本木けやき坂通り 1F 電話 ダイニング 03-6804-3350、ベーカリー 03-6804-1980 営業時間 火~木7:00~19:00、金7:00~20:00、土日祝・祝前日8:00~20:00 定休日 月(祝日の場合は営業)

ランマス 住所六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 1F 電話 03-6447-0120 営業時間 11:00~20:00 ※金土・祝前日は~21:00 定休日 月(月曜日が祝日の場合は営業、翌日が休業)