Japanese wines for everyday

毎晩の食卓を豊かにする、高コスパの「実力派」国産ワイン

ここ十数年で花開いた日本産のワイン界。ヨーロッパで修業を重ね、日本の地でその味わいを再構築する者、あるいは代替わりでその造り方を一新するワイナリー。かつてあった“国産ワイン”の古いイメージを凌駕する造り手が今、どんどん増えている。ここでは、そんなクオリティーの高い国産ワインを揃える、ヒルズエリアのワインショップをご紹介しながら、希少な国産ワインの魅力を余すところなくお伝えしていきます。

EDIT BY TM EVOLUTION.INC

❶ ザ・セラー 虎ノ門ヒルズ店
——生産者の熱い想いを感じながら味わう、国産ワインのある生活

「Chabudai wine 2021」赤¥1,870円(750ml)/生産者:小布施ワイナリー/生産地:長野県——地元優先でネット販売をしていないため、東京でも入手困難な、「小布施ワイナリー」のワイン。生産者の「毎晩の食卓に置いて欲しい」「みんなに飲んでもらいたい」という思いから、その名は「ちゃぶ台ワイン」。利益度外視の高品質・低価格で、コスパNo.1。キレイな酸味が特徴で、食欲を促進させる。赤ワインだが、魚介類に合わせるのがお薦め。

「タケダワイナリー サン・スフル」白¥2,640円(750ml)/生産者:タケダワイナリー/生産地:山形県——完熟デラウェア種100%のナチュール発泡ワイン。徹底的に管理された“健全なぶどう”により、酸化防止剤無添加・無濾過が可能に。フルーティーな果実味がダイレクトに身体に染み渡る。発泡ワインだが、気泡が小さいため、とげとげとした感じがなく飲みやすい。ぶどうを食べているようなテイストだが、ドライなので、甘みが少なく煮物など和食によく合う。

「甲州 キザンワイン 2021」白¥1,925(750ml)/生産者:幾山洋酒工業/生産地:山梨県——造り手と農家が一体となってワインを造っているのが山梨の「幾山洋酒工業」。1000年以上の歴史があり世界的に認められている甲州ぶどうを使用。フラットな味わいの中に、白桃の優しい味わいと香りが感じられる白ワインだ。色々な食材を受け入れる器の大きさがあるので、鍋料理などと合わせると、より一層深い味わいを楽しめる。

虎ノ門ヒルズ店には、選りすぐりのワインが常時約350種類並ぶ。デイリーユースからプロフェッショナルな方々の要望まで様々なシーンに応える「セラー」となっている。初心者は、「何人で飲むのか」「どんな食事なのか」「どんなシチュエーションなのか」などを伝えるのがお薦め。シーンに合った最適なワインを紹介してくれる。

虎ノ門ヒルズ駅直結という好立地にあるのが『ザ・セラー虎ノ門ヒルズ』。ワイン専門店『カーブ・ド・リラックス』の姉妹店で、こだわりのスーパーマーケット『福島屋』の店内に2020年にオープンした。しっかりしたワインの目利きはお墨付きで、たちまちワイン愛好家を中心に人気となっている。限られたスペースに置かれるワインは常にスタッフがテイスティング。味覚・嗅覚・感性を最大限に発揮し、トーナメント方式で美味しさを追及している。生産者の信頼も厚いワインセラーだ。

日本ワインの取り扱いは2002年からで20年以上になる。取引している国産ワイナリーは100社以上。今回は日本ワインの4大産地である山梨県・長野県・山形県にあるワイナリーからご紹介。いずれもワイン造りに情熱を燃やす日本トップ10に入る生産者だ。

今回紹介した3本に共通するのはなんといっても「生産者の努力」。長野県北部に位置する「小布施ワイナリー」と山形県上山市の「タケダワイナリー」は共にフランスで技術を学び日本でそれを実践。また、山梨県甲府盆地北東に位置する「幾山洋酒工業」は、日本の研究所でテクニカルな基礎をしっかり身につけ応用。伝統を重んじつつも新しい技法を取り入れ、品質は劇的に向上した。

ザ・セラー虎ノ門ヒルズ|THE CELLAR Toranomon Hills
住所=東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー B1 福島屋内 電話=03-6550-9993 営業時間=11:30~20:00 定休日=無休(年末年始を除く) ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可
 
TEXT BY HANAKO ASAKURA
PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA(NDPP.)

❷ 遅桜
——和モダンの店内で、日本列島ワイン探しのイメージトリップ

「プライベートリザーブ甲州」白¥3,380/生産者:都農ワイナリー/生産地:宮崎——日照量の多い南国、宮崎で育った甲州種は、洋梨やアプリコットを感じるしっかりとした果実味や、華やかな香り、爽やかな味わいが特徴。地元産のブドウを100%使用し、南国のワインらしく、強い酸味や鋭い柑橘の香りが抑えられている。「ひと口含むと、心が落ち着き、毛布にくるまれたような心地良さを感じる。余韻もとても優しい」とソムリエ兼マネージャーの大山圭太郎さん。すだちなど柑橘をふった川魚や焼き魚などの魚料理をはじめ、和食全般と好相性。

「Mont Kern AK 2022」白¥3,280/生産者:ドメーヌ モン/生産地:北海道——銘醸ワインやウイスキーで有名な余市で生産される一本。ゆかしいながらも上品で華やぎのあるアロマと、大らかでリッチな丸みのある口当たりが印象的だ。無濾過で自然発酵の若々しい微発泡は大変人気が高く、全国からの問い合わせが絶えないのだとか。しっかり冷やしてから抜栓し、澄みやかな喉越しや発泡ワインに感じる酵母のニュアンスを是非、楽しんで。

「夕陽」赤¥4,980/生産者:フェルミエ/生産地:新潟県——日本のカベルネソーヴィニヨンは海外のものと一線を画し、もぎたてのカシスをすり潰したような味や香りが特徴。越後平野を流れる大河、信濃川流域で育まれたカベルネ種の葡萄からは、雑味がなくフレッシュな、果実味溢れるワインが造られる。清らかで艶やかなタンニンや優しいアロマも魅力的。アタックが強烈な赤ワインではないので、牛肉の赤ワイン煮や焼き鳥にはもちろん、「柔和なボディーは、ベーコンのニュアンスに卵とチーズの風味のカルボナーラに意外にも合います」とソムリエ兼マネージャーの大山圭太郎さん。

購入したワインは、多数揃えられている「美風呂敷」(各種別料金)から色柄を選び包んでいただけるサービスも。プレゼントや手土産にも気の利いた心遣いだ。

ここ『遅桜』には、常時250種以上の国産ワインが、店内のセラーで適温管理されている。またオーナーが集めた30種以上のグラスで、試飲ができるサービスも喜ばれているのだそう。希少な国産ワインは生産本数が少なく、販売後すぐにソールドアウトになってしまうものも多いので、気になるものは思い立ったらすぐに購入するのがお勧めだ。

楽しかった旅の思い出を偲び、旅先で造られたワインでイメージトリップしたり、また逆に美味しいワインに巡り合ったらそれをきっかけに生産地に赴く……といった、旅とワインのマリアージュに思いを馳せるのも楽しい。

ここ十数年注目されている、日本ワイン。酒造免許の関係で脱サラして始める進取の気性に富んだワイナリーから、昔からの伝統を慈しむワイナリーもあり、日本の生産者の層が厚くなっている今、さらに日本ワインの奥深さや底力を堪能してみたい。「昨今では、生産者側の努力や知識でぶどうそのものやワインの味わいが向上し、魅力あるワイナリーやワインが創出される一方、楽しむ側も口が肥え、成熟度も高まっていくでしょう」と大山氏。海外ワインばかりに目を向けていた方も、進化した日本ワインの個性や美味しさに出合うきっかけを、こちらの店で見つけみてはいかがでしょうか?

遅桜|オソザクラ
住所=東京都西麻布4-4-12 電話=03-6247-5090 営業時間=12:00〜18:00(土曜・日曜・祝日12:00〜20:00) 定休日=月曜・水曜 ※各種クレジットカード利用化
 
TEXT BY AKIRA TANAKA
PHOTO BY KIPPEI MITSUYA

❸ no.501
——五感で楽しめる、ギャラリーのようなワインショップ

「Apple Cider 2021」¥1,980 シードル/生産者:TSUIJI LAB/生産地:長野県——日本とオーストラリア、季節が反対の2カ国でワインを創る醸造責任者・須賀貴大さんは“フライングワインメーカー”とも呼ばれており、美味しいワインを造り、ワインを身近に楽しめるものにしたい! という思いから「美味しいワイン」を追求している情熱の持ち主。「シードル」はワイナリーのご近所である「ヤマヒ清水農園」のふじりんごをヴァイツェン酵母で樽発酵後熟成。少量生産の為、入荷するとすぐ売りきれるので見かけたら即買いがお薦め。ガレットはもちろん、たこ焼きなどにも合う。日々の食卓メニューにもピッタリの1本。

「アルバリーニョ2021」白¥3,850/生産者:蔵王WOODY FARM&WINARY/生産地:山形県——アルバリーニョ93%、プティマンサン7%使用。「WOODY FARM」は、広大な畑の果樹園とワイナリーで羊も飼っており、エチケットにもファームの様子が描かれている。国内では珍しいアルバニーリョはスペイン、ガリシア地方やポルトガル、ミーニョ地方の土着品種で、海のミネラルを感じる品種と言われているが、国産のものは辛口で柑橘系の酸味があり、あえて遅摘みにして貴腐の様な蜜のニュアンスと完熟感を造り上げている。和食全般に合わせやすいが、ロースト野菜、白身魚との相性も抜群である。

「朱 2022」ロゼ¥3,460/生産者:GRAPE SHIP/生産地:岡山県——マスカットオブアレキサンドリア75%、シラー20%、グルナッシュ5%。クレオパトラも食したと言われ「果物の女王」とも呼ばれているマスカットオブアレキサンドリアの魅力を伝え、残すべく情熱を傾けている生産者。「朱」はルビーのような色調で苺、ブラックベリー、マスカットなどの果実味とスミレなどの香りが広がる。甘い香りでありながらドライな飲み口で果実味のある朱色が特別な祝杯にもピッタリ。優しい果実味が幅広い料理に合わせられる。特に肉じゃがなど、出汁を使った料理にもお勧め。微発泡感が心地良く、暖かい部屋での鍋、おでんのお供にも。

「みどりちゃん2021」赤¥3,850/生産者:no.501(ドメーヌ テッタ)/生産地:岡山県——自然酵母のため、高温だと泡が吹く事もあるので店内のセラーは14度となっている。冷蔵庫保管なら、飲む30分ほど前に出しておくのがお薦め。少し桃のニュアンスや果実感があり、フローラルで華やかな香りの優しいワインだ。「みどりちゃん」は同店のオーナーが出身地・広島の道の駅で葡萄を搬入している障害者施設の生産者さんと偶然出会い、当時ジュース用に作っていた葡萄をワインに、と提案して生まれたワイン。黒葡萄主体で保存料なし。オレンジ色の微発泡。萄栽培をしている施設の名前より、「みどりちゃん」という可愛いネーミングに。

セレクトショップのようにワインがディスプレイされた店内は、気になるワインを選ぶ楽しみがあり、新たな出合いもありそう。ナチュールワインも多数ご用意。

醸造家・ルドルフ・シュタイナーが提唱したバイオダイナミック農法で使用する調剤番号を店名にした『no.501』はまさにワインのために作られた空間で、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、五感全てを研ぎ澄ませ、造り手こだわりのワインの世界・希少ワインの世界を満喫しながらワインとの出合いを楽しめる場所となっている。

近年の日本ワインは、消費者の地産地消の意識や購入者も収穫の手伝いができることなどから、身近に感じられることも人気の一因となっている。また若い作り手のチャレンジや、海外経験も豊富な造り手が増え試行錯誤を重ねていることもあり、品質や味も格段に向上している。

「国産ワインは直接ワイナリーとの取引ができるのも強みで生産者の想いがダイレクトに伝わります。家飲みが増えたとは言え、ワインはまだちょっと敷居が高いのでは? 国産ワイン、特に自然派は日々の食事に合うものが多いので気構えず飲んでいただきたいです」とショップの田中美帆さん。最近では海外からのお客様も増えているとのことで、日本が世界に誇れるもののひとつにもなっている。日々の食卓を優しく彩りそっと寄り添ってくれる日本ワインを選ぶ楽しみはこれからも増えそうである。

no.501
住所=東京都神宮前2-5-4-1F 電話=03-6721-0510 営業時間=12:00〜23:00(L.O.22:00)、日曜・祝日12:00〜22:00(L.O.21:00) 定休日=不定休 ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用化
 
TEXT BY MIYAKO SHIBUSAWA
PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA(NDPP.)

※2023年2月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「虎ノ門ヒルズの営業状況について」をご確認ください。