HONG KONG-STYLE DIM SUM AND CUISINE

小石原はるか、珠玉の点心&広東料理を心ゆくまで味わう

フードライター小石原はるかさんが、六本木ヒルズの今気になるレストランを巡る連載。第7回は、昨年けやき坂にオープンした〈ラカンカ〉へ。熟練の技が光る点心と滋味深い料理の数々。モダンな広東料理を堪能しました。

PHOTO BY SATOSHI FUKUDA
TEXT BY HARUKA KOISHIHARA
EDIT BY RCKT/ROCKET COMPANY*

ふたりのシェフが織りなす、至福のモダン広東料理

鮨、天ぷら、懐石料理など、六本木ヒルズの中でもとりわけ特別なオケージョンに訪れたい飲食店が並ぶ、レジデンス棟。昨年7月、その一角に新たに仲間入りを果たしたのが〈ラカンカ〉です。中国料理店でよく見られる、円形の意匠があしらわれたエントランスからは非日常感が漂い、特別な時間が過ごせそうな佇まい。二人のベテランシェフが、タッグを組んで腕を振るうというモダンな広東料理、いただきます。

けやき坂・レジデンス棟の一角。都会の喧騒から一線を画した、落ち着いたモダンな店構えが迎えます。

この日は、フカヒレを贅沢に使った人気のディナーコースを。メインはこちらのたっぷりの上湯スープで仕立てた姿煮込み。

〈ラカンカ〉へ来たらぜひいただきたいのが、点心師・陳さんの手掛ける点心。透き通るほど薄い米粉のクレープで、具材を繊細に包みます。

胸高鳴る、限定3組のプレミアムなレストラン体験

お店に入ると、まず驚くのは天井の高さ。微細な柄が美しい絨毯や華やかなテーブルセッティングが、エレガントな空気感を醸し出します。また、テーブルの配置がゆったりとしているのも印象的。聞けば、ランチもディナーも迎えるゲストの数は3組までと決めているのだそう。ゆっくり過ごしたいシチュエーションにぴったりの雰囲気です。

お店のコンセプトは「活気ある80年代の香港のフィルターを通した広東料理」。四川・北京・上海料理と並び「中国四大料理」のひとつである広東料理は、素材を活かす調理法であることから日本人にも馴染み深いものです。それを、本場香港や都内の広東料理店でキャリアを重ねてチャイニーズ一筋の山口貫シェフと、来日して約30年の点心師・陳國雄さんが手掛けるというのだから、期待が高まるというもの!

国内外で経験を積まれた山口貫シェフ。点心師・陳さんとは20年来の付き合い。

活けの才巻海老が極薄の皮に包まれている、世にも贅沢な蒸し餃子。海老味噌も使われており、濃厚な風味が口いっぱいに広がります。傍には、素揚げにした香ばしい脚を添えて。豊かな香りとコクを楽しめる 陳年紹興酒¥1,650(グラス)とともに。

扱うフカヒレはすべて気仙沼産。大変希少価値の高いフカヒレを、手間ひまかけて丁寧に戻しています。上湯を使ったソースは美しい黄金色。「旨味のもととなる金華ハムを惜しみなく使っているからこそ出せる色、いわば味の証です」と山口シェフ。

豊洲市場や、産地から直接取り寄せる新鮮な魚介類使った料理に力を入れている。一尾まるごと蒸し上げる赤ハタは、蒸し上がった状態をゲストに見せてから、厨房で切り分けて米粉のクレープ「腸粉」で包むという、手の込んだプレゼンテーションで供される。

コースの締めくくりに登場するのは、パラパラに仕上げたシンプルなチャーハンに、毛ガニの身とカニ味噌、フカヒレがのり、さらに毛ガニがどっさりと入った餡をかけた、目にも舌にも贅沢な一品。毛ガニは、朝届いたらすぐに蒸して身をほぐしているそう。

匠の技が光る点心と、フカヒレを使った贅沢な料理の数々

さて、今回いただくのは「厳選フカヒレディナーコース」¥24,200。中国の三大高級食材にも謳われるフカヒレを中心に、上質な海鮮をふんだんに使ったメインや贅沢な点心も盛り込まれています。

海老の赤い色合いが透けてみえる蒸し餃子に、圧倒的なボリューム感があるうえ艷やかなソースが食欲を刺激するフカヒレ煮込み、しっとりと蒸し上げられた赤ハタは腸粉で包んだものと2種類の仕上げで……と、めくるめくお料理の数々。締めくくりのあんかけチャーハンとデザートまでいただけば、心もお腹も大満足すること確実です。

また、写真ではご紹介していませんが“裏シグネチャーメニュー”と呼びたいのが「活けホタテ貝柱入り揚げ春巻き」。大きなホタテをまるごと1つ包んだ、球形に近い揚げ春巻きは(やけどに注意しつつ)パクッとかじれば、レアに仕上がった貝柱の甘みが存分に味わえます。あまりの人気に、ランチ・ディナーとも必ずコースに組み込んでいるそう。ぜひご賞味あれ!

食事を終えて

中国で「食は広州(広東省)にあり」と尊ばれる広東料理を、さらに洗練されたスタイルで。しかも、隠れ家感のある優美な空間でいただけて、心躍る時間を過ごせる〈ラカンカ〉。山口シェフと陳さんは、以前にも一緒のお店で働いた時期があるそうで、満を持してのコンビ!?結成。互いの仕事ぶりを理解しているからこそ、おふたりの技術が高いレベルで融合しているお料理が完成するのですね。——小石原

最後に山口シェフと点心師・陳さんと。息のあったおふたりの料理に大満足でした。

ラカンカ(la Canca)
住所=東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 3F 電話=03-6721-1826 営業時間=ランチ11:30~15:00(L.O.14:00)/ ディナー17:30~(最終入店20:00)※定休日=月曜・祝日 ※ディナーは、季節の香港ディナーコース¥19,300、厳選フカヒレディナーコース¥24,200(ともに税込・サービス料別途)がございます。メニュー内容は季節により異なります。

profile

小石原はるか|Haruka_Koishihara
フードライター。1972年東京都生まれ。エンゲル係数が妙に高い家に育ち、レストラン通いをこよなく愛するように。マニアックな気質と比較的丈夫な胃袋で、これまで様々な食の世界にハマる。『BRUTUS』『東京カレンダー』など多くの雑誌やメディアで、食にまつわる記事の執筆やディレクションを担当。著書に『レストランをめぐる冒険』(小学館)『自分史上最多ごはん』(マガジンハウス)『東京最高のレストラン』(共著・ぴあ刊)など。

※2023年2月現在の情報となります。
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