BørneLund Story #1

「あそび」を通して子育てを支援する|知育玩具のパイオニア「ボーネルンド」の取り組み ❶

知育玩具のパイオニアである「ボーネルンド」の取り組みをご紹介する企画の第一弾。その根幹を成す“あそび”や“玩具”に対する独自の考え方を、かつて2人の子どもの母として、現在は祖母として子育てに携わる中西弘子社長に聞きました。

PHOTO BY Kenya Abe
Edit & Text by Ai Sakamoto

中西弘子|Hiroko Nakanishi  ボーネルンド代表取締役社長。1954年大阪府生まれ。帝塚山短期大学卒業後、結婚、出産を経て、79年コンパンプレイスケープ、81年ボーネルンドの設立に携わる。94年より現職。社業の傍ら3歳になる孫娘の“孫育”に奮闘している。

「子どもにとって、あそびは食べることや眠ることと同様に大切なこと。おもちゃはそのための道具。だから、私たちは“あそび道具”と呼んでいます」

優しい笑みを浮かべながら、こう話すのはボーネルンド社長の中西弘子さん。世界20カ国、100社に及ぶ遊具・玩具メーカーとパートナーシップを結び、「子どもが安心安全に遊べる環境づくり」や「あそび道具の販売」「室内あそび場の運営」などに取り組む同グループが創業したのは、1977年のこと。創業者である夫・将之さんから社業を引き継ぎ、94年から中西さんが社長を務めています。

ご主人の起業により、専業主婦から一転、会社を支えるサポート役に回った中西さん。小学生の子ども2人の子育てと社業の両立は簡単ではありません。しかし、「あそびを通して、子どもたちの健やかな成長に貢献したい」と一念発起。むしろ子育ての経験が役に立ったという、あそび道具の海外へのバイイングには、今も年1回ほど出向くといいます。

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1/2中西さんの2人のお子さんがお気に入りだったシュタイフのぬいぐるみ。
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2/2ボーネルンド創業期の木製パズルとぬいぐるみ。中西さんにとって思い出のあそび道具です。

「あそび道具においては、デザインや安全性はもちろんのこと、オリジナリティを大切にしています。“子どもたちにこう使ってほしい”“これを学んでほしい”という作り手の意図がきちんと形になっているものを選んでいます。そこには、人気商品をただ模倣するだけでは生まれないオリジナリティがある。そのため世界各国に足を運び、作り手の思いや、もの作りの背景などを知ることが大切なんです」

また、子どもがのめり込んで(集中して)遊べることも重要な要素だと話します。

「私たちは“あそび”と“娯楽”は本質的に異なるものだと考えています。例えば、自宅でコンピュータゲームをするのは娯楽、子どもが自発的に身体と頭を使って、想像力やコミュニケーション能力といった“生きる力”を身につけるのがあそび。そのための道具はたくさんは必要ありません。発達段階に応じた1つの道具を使いこなすことが大事。そこで得られた達成感や楽しい思い出が“あそびの原体験”となり、子どもたちの成長につながるんです」

あそびの原体験ができる場を提供したいと、2004年には6カ月~12歳の子どもを対象にした室内あそび場「KID-O-KID(キドキド)」の運営を開始。天候に左右されることなく親子で思い切り遊べる空間は好評で、全国21カ所にまで増えています。

「あそびの原体験がとくに重要なのは、2~5歳頃だと考えています。私自身、子育て中は、少しでも早く自立してほしいと、川の字で寝るのも拒否していたほど(笑)。しかし、孫ができて改めて感じたのは、幼児期はあっという間に終わってしまうということでした。だからこそ、この時期に一所懸命、遊んであげてほしいと思います」

今後も、日本中に多彩なあそび場を増やしていきたいと話す中西さん。

「例えば、小学生の心身の成長に必要なあそびを授業などに取り入れる提案をしたいですね。子どもの成長にあそびが欠かせないことが日本の常識になるまで、“子どもにとって遊ぶことは生きることと同義である”と言い続けていく。そうして、あそびを保障していかねばならないと思っています」

ボーネルンドショップ 六本木ヒルズ店
店内には子どもの生活をイメージした10のコーナーがあるほか、親子で遊べるイベントも定期的に開催しています。「ぜひヒルズの中にもあそび場を作りたいですね」と中西さん。