PORTRAYING DESIGN

イタリアの巨匠写真家たちが捉えた〈FLEXFORM〉

10月20日(金)から〈FLEXFORM(フレックスフォルム)〉TOKYOショールームにて、4人のイタリア人フォトグラファーによる同ブランドの芸術的な広告写真を集めた展覧会が開かれる。

TEXT BY MARI MATSUBARA
ALL PHOTO ©️FLEXFORM

1980年代から2000年代にかけて〈FLEXFORM〉の斬新で叙情的な広告写真は、世界的に活躍するイタリア人巨匠写真家が手がけてきた。その珠玉の作品を集めたアート展が2023年4月にミラノショールームで開催され、今回はその展示をもとにした構成となっている。

建築の中には空間があり、空間の中には物があり、物は人々に使われ、人々には感情が宿る——こうした思索のもとに、FLEXFORMはその歴史の中で、建築と空間、そしてそこに置かれるソファの間に交わされる絶え間のない対話を重視してきた。その関係性は常にアーティスティックな写真作品を通じて形成されてきたのだ。今回のアート展では4人のフォトグラファーが選ばれている。活躍した時代も年代も少しずつ異なるものの、彼らの作品はすべて、FLEXFORMの本質やクオリティが決して変わらないことを物語っている。そして、まるでソファが主役となった美しい絵画や舞台芸術、おとぎばなしのような様相を見せている。

【ガブリエレ・バジリコ】(1944〜2013)

Gabriele Basilico|建築学の学位を取得後に写真家となり、自らの作品制作とコマーシャルフォトの両輪で活躍。国内外の都市の形態や郊外の工業地帯を撮影したシリーズでも知られる。

‘Max’, 1983 Gabriele Basilico(photographed at Triennale di Milano Museum)(Image credit: Gabriele Basilico for Flexform)——アントニオ・チッテリオが1983年にデザインしたソファ《Max》。インゲン豆を模したシートクッションと背もたれの独特な形状に、背景の螺旋階段が響き合う絶妙な写真。トリエンナーレ・デザイン・ミュージアムにてガブリエレ・バジリコが撮影。

‘Max’, 2001 Gabriele Basilico(Image credit: Gabriele Basilico for Flexform)——同じソファを2001年にガブリエレ・バジリコが撮影。螺旋階段を見下ろす斬新なアングル。

‘Magister’, 1983 Gabriele Basilico(Image credit: Gabriele Basilico for Flexform)——アントニオ・チッテリオ&パオロ・ナヴァが1982年にデザインしたソファ《Magister》をトリエンナーレ・デザイン・ミュージアムにてガブリエレ・バジリコが1983年に撮影。

‘Groundpiece’, 2001 Gabriele Basilico(Image credit: Gabriele Basilico for Flexform)——鉄骨と窓で構成されたピレリ宮殿の、特徴的な建物と対話をするようなソファ《GROUNDPIECE(グランドピース)》。ガブリエレ・バジリコ撮影。パーツを自由に繋げることで、単に腰掛けて会話するだけでなく、寝たり食べたり、仕事をしたり遊んだりと、様々なニーズを満たすソファへの転換の先駆けとなった。

【マリア・ヴィットリア・バックハウス】(1942〜)

Maria Vittoria Backhaus|ミラノのブレラ美術アカデミーで舞台美術を学んだ後、フォトジャーナリズムの分野でキャリアをスタート。その後大判カメラを用いて、静物やインテリアにおける写真家の地位を確立させた。ファッションとインテリアデザインの撮影では舞台美術の経験を生かし、自ら大がかりな設営・描画なども手がける。

‘Groundpiece’, 2006 Maria Vittoria Backhaus(Image credit: Maria Vittoria Backhaus for Flexform)——同じ《GROUNDPIECE》でも、写真家によって全く違う世界観を見せられる。計算され尽くされた人物配置、ポーズ、小道具づかいが特徴のマリア・ヴィットリア・バックハウスの作品。2006年。

‘A.B.C’. armchairs, 1999 Maria Vittoria Backhaus(Image credit: Maria Vittoria Backhaus for Flexform)——《A.B.C.》アームチェアの四角い構造を強調するように真横からのアングルで撮影。彫刻的なヘアスタイルと印象的なメイクをほどこした双子のモデルを向かい合わせた力強い構図の写真。マリア・ヴィットリア・バックハウス撮影。1999年。

【ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン】(1930〜)

Gianni Berengo Gardin|ミラノ生まれ。イタリアを代表する写真家の一人。ほぼ全作品がモノクロで、ルポルタージュ、産業写真(オリヴェッティ、アルファ・ロメオ、IBMなど)、風景、建築など幅広いテーマで活躍。主なコレクション収蔵先にニューヨークのMoMa、パリのヨーロッパ写真美術館、ローマのMAXXIなど。

‘Soft Dream’ 2011 Gianni Berengo Gardin(Image credit:Giannni Berengo Gardin for Flexform)——ジャンニ・ベレンゴ・ガルディン撮影、ソファ《Soft Dream》。2011年。まるで高級住宅に住むある家族の生活を覗き見るような視点がユニークな作品。ソファが人間の営みと共にあることを物語っている。

‘Groundpiece’, 2011 Gianni Berengo Gardin(Image credit: Gianni Berengo Gardin for Flexform)——《GROUNDPIECE》のバックサイドの美しさを捉えた写真。

【ピエールパオロ・フェラーリ】(1971〜)

Pierpaolo Ferrari|ファッション、広告の世界で活躍する写真家。2007年、フランカ・ソッツァーニ率いる『UOMO VOGUE』とのコラボレーションで一躍有名に。アーティスト、マウリッツィオ・カッテランと共に雑誌『Toiletpaper』の編集にも携わる。

‘Groundpiece’, 2022 Pierpaolo Ferrari(Image credit: Pierpaolo Ferrari for Flexform)——夢のような色彩豊かなスタイルが特徴のピエールパオロ・フェラーリ。家具の広告としては珍しく、これまでにない浮遊感を感じさせる。

‘Gregory XL’, 2021 Pierpaolo Ferrari(Image credit: Pierpaolo Ferrari for Flexform)——現代のおとぎ話的世界観で魅せるソファのあるインテリア。

‘Perry’, 2023 Pierpaolo Ferrari(Image credit: Pierpaolo Ferrari for Flexform)——ピエールパオロ・フェラーリの最新作。シュールな設定と鮮やかなピンクのコスチュームが印象的。

イタリアン・モダンデザインを牽引してきた〈FLEXFORM〉の名作ソファやマスターピースの数々。その世界を表現した広告写真を堪能するためにショールームを訪れてみてはいかが?(10月20日(金)初日の夜には、このアート展を祝したカクテルパーティーも。詳細はこちらより)

 FLEXFORM
Portraying Design
受け継がれた伝統 広告アート展

 




会期=2023年10月20日(金)〜11月5日(日)
会場=FLEXFORM TOKYO ショールーム(東京都港区南青山6-4-10 3フロア)
営業時間=11:00〜19:00
定休日=水曜定休 ※11月9日(木)から2023年新作商品の展示。
tel=03-6418-5590(FLEXFORM TOKYO)