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「Appier」は一歩先を行く技術開発で企業のAI導入を促進する 連載|未来への挑戦者たち20

コンピューター科学者とエンジニアを率いて、AI技術を応用したマーケティング・ソリューションを企業に提供する「エイピア(Appier)」。そのめざましい成長を支える戦略とは? 愛宕グリーンヒルズのオフィスにてショーン・チュウCSO(最高戦略責任者)に聞いた。

TEXT BY KAZUKO TAKAHASHI
PHOTO BY KOUTAROU WASHIZAKI

2012年に台湾で設立。エイピアの創立メンバーは、米ハーバード大学のAI博士号を持つチハン・ユー氏を中心とする研究者集団で、台湾ではエンジニアが最もあこがれるスタートアップとして知られる。アジア各地に拠点を構え、AI技術を応用したマーケティング・ソリューションを企業や広告会社に提供している。

「マーケティング畑の人材が多い業界にあって、AI研究者が率いる弊社は特異な存在。マーケットについて行くのではなく、1歩も2歩も先を行く技術開発を進めています」と、ショーン・チュウさん。

事業の成長と社員の増加にともない昨年愛宕グリーンヒルズ26階から40階に拡張・移転した。インテリアのデザインコンセプトは本社と統一。「窓から見晴るかす景色は最高。東京タワーが間近に一望できます」

基盤となるプロダクトは「CrossX(クロスエックス)」。ログイン情報がなくても膨大なデータからユーザーが所有するデバイスを識別できるAIテクノロジーだ。これにより、ユーザーの行動パターンなどから、そのユーザーが使用するパソコンなど他のデバイスにも適した広告や情報を届けられるようになった。もう一つのプロダクト「AIXON(アイソン)」は、「CrossX」と高精度のアルゴリズムを組み合わせ、ユーザーニーズの予測分析を実現している。

「個人情報ではなく行動パターンの分析なので、プライバシーの問題がなく、顧客に煙たがられないように広告の掲載回数も個々に管理できる。いずれもAIでなければ難しいソリューションです。私たちのミッションは、企業のAI活用を容易にすること。使いやすさと丁寧なサービスを強みに、弊社ツールの導入企業を増やしていきたいと考えています」

ショーンさんは大学卒業後、モトローラでエンジニアを務めた後、ウォール・ストリート・ジャーナルへ。さらにソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントに移り、テレビのコンテンツビジネスなどに貢献。次の日本マイクロソフトではオンラインサービスの成長戦略に携わった。

「エンジニアの仕事も好きでしたが、もう少しビジネス寄りの仕事がしたかったのと、昔から“メディアジャンキー”だったことからキャリアシフトしました。様々な現場を経て昨年9月にエイピアのCSOに着任しました。テクノロジー、経済、企業経営、新聞、テレビ、オンラインメディアと、経験してきたことすべてを活かせる職場だと思っています」

時代の潮流がマスマーケティングからパーソナライゼーションへと移る中、同社は今年8月、次世代のマーケティングオートメーションツール「AIQUA(アイコア)」を発表した。これにより潜在顧客のウェブ上の行動履歴をAIが分析することで、初訪問の旅行サイトにもかかわらず、今関心のある旅行先情報をトップページに出すといったことが可能になる。

「弊社が目指しているのは、AIを使った究極のパーソナライゼーション。『AIQUA』はそこに近づくプロダクトで、多くの企業から関心を寄せていただいています。人の行動パターンの分析に特化したAIテクノロジーをマーケティング以外の領域で活用する実験も進めています。詳細はまだ明かせませんが、未来を変える様々な挑戦に乞うご期待です!」

Appier Japan 株式会社

profile

ショーン・チュウ|Sean Chu
Appier Japan 株式会社CSO(最高戦略責任者)。エイピアの成長戦略の策定と実施を担当。企業向けのAIの導入拡大に注力する。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント、日本マイクロソフトなどを経て2017年9月より現職。