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Origami は資金移動のあり方を変え、新しい金融ビジネスを創造する 連載|未来への挑戦者たち17

急速な発展のまっただ中にあるスマホ決済分野において、急成長を遂げる「Origami」の成功を支えるビジョンとは? ヒルズから未来を切り開く企業のいまに触れる連載の17回目は、六本木ヒルズ 森タワーに入居する株式会社Origamiの代表取締役社長、康井義貴氏に聞く。

TEXT BY Kazuko Takahashi
Photo @Origami

康井義貴さんはカナダのトロントで生まれ、ニューヨークで幼少期を過ごし、10歳から東京に在住。大学卒業後、リーマン・ブラザーズに入社。同社の経営破綻後、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルで米国、日本、中国のスタートアップへの投資を手がけた。26歳で起業、スマホで買い物ができるモバイルECプラットフォームを立ち上げ、2016年5月には、店頭でのスマホ決済サービス「Origami Pay」を始動させた。

「インターネットの登場は、情報通信の世界に大変革をもたらしました。インターネットの世界では、切手代や電話代で稼がずともデータを使ったマーケティングや広告が利益を生み、スマホの普及もあいまってフェイスブックやグーグルのようなビジネスモデルが急拡大した。今、これと似た現象が金融の世界で起きています。ただし、日本は大きく遅れをとっている。今なお手数料や資金移動に高いコストがかかっているのです」

金融ビジネスのあり方が根本から変わる

「支払いも未だにアナログ的で、貝殻(現金)を交換したり、クレジットカードを端末でこすったり。日本とドイツ以外の先進国ではキャッシュレス化が進み、中国ではQRコードによる決済が街の小さな屋台にまで浸透している。シリコンバレーでの仕事を通じて多くの技術革新を目にした私は、金融ビジネスのあり方が根本から変わると確信し、日本で資金移動コストの低い銀行を一から作り、創出したバリューを社会に還元したいと考えました。ただ、そのためには数百億円単位のお金がバランスシート上に乗っている必要があり、26歳の起業家にその規模の資金調達は難しい。まずは市場規模十数兆円のECから実績を重ね、次のステップとして市場規模約140兆円の小売りを対象とするOrigami Payをスタートさせました」

加盟店は大手百貨店、ファーストフード、タクシーなど約20,000店。決済に必要なのはQRコードの表示のみなので、決済端末の導入コストはゼロ。その手軽さから加盟店数が急伸している。決済を通して顧客とつながることでエンゲージメントマーケティングや販促に活かせる。「Alipay」などのインバウンド決済も、追加の手続きで可能だ。利用客はスマホでQRコードを読み込むだけで決済ができ、店ごとの割引や特典も享受できる。

「Origami Payで、銀行の預金口座から即時に代金を引き落とす支払い方法も始めました。資金移動のあり方を変え、新たな金融インフラを創るため、挑戦を続けていきます」


株式会社Origami

profile

康井義貴|Yoshiki Yasui
株式会社Origami 代表取締役社長。1985年トロント生まれ。トロント、ニューヨークで幼少期を過ごし、10歳から東京に在住。シドニー大学留学、早稲田大学卒業後、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズでM&Aアドバイザリー業務に従事。その後、シリコンバレーの大手ベンチャーキャピタルDCM Venturesで米国、日本、中国のスタートアップへの投資を手掛ける。2012年、Origami設立。一般社団法人キャッシュレス推進協議会理事、経済産業省 産業構造審議会商務流通情報分科会委員。