Bistro for everyday use

星付きシェフの料理を普段使いで!ヒルズエリアのフレンチビストロ3選

ヒルズエリアに数多あるビストロの中でも、やはり人気の高いミシュランの評価を獲得しているお店。“ビストロ”とは言え、その料理はレストランを凌ぐクオリティーと創造性を持つ。ここでは、そんな、美味しく、美しく、懐にも優しいフレンチビストロ3軒をご紹介します。

EDIT BY TM EVOLUTION.INC

❶ 素材の味わいを大切に! 肉のプロ集団が手掛ける本格ジビエ料理——ELEZO GATE

「シャルキュトリの盛合せ」¥2,400 この店No.1人気の逸品。自社で製造するテリーヌやハム、サラミなど、その日のお薦め4~5種類の盛り合わせ。どれも正しい見極めと思いやりの心で、旨み・香り・質感を最高のラインまで引き上げている。ボリューム満点で、大満足のこの一品、是非ワインと共に楽しみたい。

「サルシッチャ」¥1,800 豚のウデ肉とモモ肉による大きなソーセージ。白っぽい豚肉が多い中、『エレゾゲート』のソーセージは赤っぽく見えるのが特徴。ふっくらジューシーな味わいで、少し甘味も感じる。香り高いポルチーニ茸やマッシュルームなどのクリームソースが一層味わいを深めている。

「蝦夷鹿100% ELEZOバーグ」¥3,300 常用されにくい部位である、肩、肩甲骨、腕のお肉を使ったつなぎなしの蝦夷鹿100%のハンバーグ。ステーキだと硬くなりがちな部位だが、ミンチにすることでギュッと肉同士の結束が強くなり肉本来の風味を味わえる。口にした瞬間「にく~っ」と叫ぶこと間違いなし! 肉の味を邪魔しないよう、付け合わせの野菜もシンプルな味付けとなっている。

虎ノ門横丁にひと際目立つ狼の眼光鋭い暖簾を掲げるお店がある。その名も『ELEZO GATE(エレゾゲート)』。北海道・十勝の食肉料理人集団「ELEZO(エレゾ)」が手掛ける本格的ジビエが味わえるビストロだ。ジビエというと苦手意識を持つ方も多くいるかもしれない。しかし、ここで味わえるジビエは味わいが違う。秋冬のイメージがあるジビエだが、狩猟から熟成、流通と一貫体制で行うことで、一年中確保。肉本来の旨さを損なわずに、素材そのものの味を引き出している。それでいて、お財布に優しい価格なのが嬉しい。

『エレゾゲート』では「素材の味わいを超えない」が基本。添加物やつなぎなどは一切加えない。丁寧な仕事だからこそ可能となり、ひと口噛めば口いっぱいに広がる“ガツン”とくる肉そのものの味を堪能できる。お肉は全て北海道十勝産。豚は自社で飼育する徹底ぶり。肉の旨みを知り尽くしたプロが作る本格肉料理。メニューはアラカルトとコース、幅引く用意している。好みに合わせて相談にも乗ってくれる。

時期によって味わいが異なる肉に合わせて、ワインの品揃えも豊富。料理を一層引き立ててくれる。ワイン一杯と共に肉を味わうのもよし、特別な日にはコースでがっつり堪能するものよし、とても使い勝手がいいビストロだ。是非とも、萎縮せずに暖簾をくぐってほしい。新しい肉の世界に連れて行ってくれること、間違いなしだ!

ELEZO GATE
住所=東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー3F 虎ノ門横丁内 電話=080-7505-2929 営業時間=11:30~14:00(L.O.13:30)/17:30~23:00(L.O. FOOD22:00、DRINK22:30) 定休日=日 ※QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可
 
TEXT BY HANAKO ASAKURA
PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA(NDPP.)

❷ 古典フレンチをアートのように! しかもリーズナブルなビストロ価格で——T’astous

「Carpaccio de barbue, Sauce verte au ciboule」ヒラメのカルパッチョ、わけぎのグリーンソース¥1,430 旬の白身魚を絵画のように盛り付け。九州産博多ネギをピューレにして、スパイシーなソースにしている。ひとつひとつの野菜には手を加えすぎず、絶妙に食感を残して、素材の持ち味を伝える趣向だ。

シェフが長崎出身であることから、「長崎の魚介の美味しさを伝えられたら」と、春の時期はヒラメのカルパッチョをリストに加えているそう。

「Paris-soir de petit pois français, bulots, oursin」無添加ウニと磯つぶ貝、フランス産グリーンピースのパリ・ソワール¥2,200 グリーンピースのスープは、フレンチでは定番の一品。フランス産グリーンピースは、日本のものよりも皮が柔らかく、甘みがあり、しっとりしている。自家製コンソメジュレと共に、見えない部分にも、濃厚な無添加ウニがたっぷり! 北海道産の磯つぶ貝は、香草と白ワインを加えて2時間煮込み、柔らかく仕立てている。

「Piêce de boeuf Poêlée, Sauce au porto」茨城県産常陸牛シンシンのステーキ、ポルト酒のソース¥3,850 部位としては、しんたまの一部。程よくサシが入っていて、赤身と脂のバランスが素晴らしく、しつこくない。ポルトガルの酒精強化ワインを煮込んでアルコール分を飛ばしたソースにより、コク、酸味、旨味がプラスされている。間違いのない鉄板のメイン料理だ。

このお店は”映える”メニューのオンパレード! レストランのコースとしていただくと相当にお値段が張るものを、その芸術性と洗練されたスタイルはそのまま、皆んなでシェアして、より多くのメニューを同時に楽しませてくれる……そんなイマドキのお店なのである。率いるのは、オーナーシェフの堀江 毅さん。長崎ご出身で、温和で人懐っこい笑顔が素敵だが、パリを中心にブルターニュ地方及びフランス南西部カオールの星付きレストランで修業を積んだ経験を持ち、ミシュランからはビブグルマンの評価を連続して獲得する優れた料理人だ。

堀江さんの意図するのは、パリのビストロ。それはクラシックなレシピをモダンに昇華したもので、仕込みを丁寧かつ繊細に行い、手を加えすぎず、素材の味わいを活かすというもの。つまり、口に入れた瞬間に素材が何であるのかが明快なので、食べていて頭の中に浮かぶのは、ただただ「美味しい!」。シェフのエゴがなく、シンプルに料理でお客さんを喜ばせようという気持ちが伝わり、居心地がいいことこの上ない。

バターを極力使用せず、ソースを煮詰めすぎないことも心がけているそうだ。そうすることで、料理は一段と軽やかになる。こうした工夫も、堀江シェフならではだ。見た目の美しさもさることながら、食べる側のニーズを意識した設計で、食事を最後まで楽しませてくれる。フレンチはハレの日のイメージがあるが、堀江シェフが修業時代にフランス各地で体験した“身近なフレンチ”が、ここ南麻布に息づいている。

T’astous
住所=東京都港区南麻布2−5−21 電話=03-6435-4722 営業時間=水~土ランチ11:30〜14:30(L.O.13:00)/月~土ディナー18:00〜22:30(L.O.21:30) 定休日=日 ※楽天ペイ、各種クレジットカード利用可
 
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY HIDEHIRO YAMADA

❸ 本格ビストロ料理とカルフォルニアワインの素敵な出合い——ビストロ チカラ

「本日のキッシュ」はアラカルトで¥1,400 この日は、「レンコンとベーコンのキッシュ」。ふんわりと柔らかめのアパレイユが特徴の、大きめのカットのキッシュ。添えられた鎌倉野菜のサラダと一緒にどうぞ。

ビストロ料理の代表格「牛ハラミのグリル フレンチフライ添え」¥3,600 低温でじっくり調理した柔らかいハラミは塩、コショウ、エシャレット、そしてマスタードでシンプルにいただく。たっぷりのフレンチフライも嬉しい。

シェフのおすすめを、と紹介していただいたワインは「モーガン ワイナリー モントレー ピノ・ノワール 2019」¥11,040 カルフォルニアでは昨今、自然派の、樽香が強くなく、酸がきれいなエレガントなタイプも増えているという。

虎ノ門ヒルズのある華やかな街並みから、一歩入った愛宕山の麓、都会の喧騒を感じさせない神谷町へ抜ける愛宕トンネルの手前に『ビストロ チカラ』はある。オーナーシェフの遠藤 力さんはこじんまりして角に扉がある小意気な外観の物件が気に入り、2011年に店を開こうとした直前、東日本大震災に。世の中が疲弊した印象に包まれる中、開業をためらい悩んだ末、オープンを決断。オーナーの名前は、“力”と書いて「つとむ」と読む。自身もお客様も元気を取り戻して、頑張って行きたいと心に決め、自身の名前を掛け店名を『チカラ』にした。

店のコンセプトは“カルフォルニアワインとフレンチ”。毎日食べても飽きないパリのビストロ料理と、カリフォルニアワインの取り合せで人気の店だ。イタリアでの修業経験もあるシェフが、カルフォルニアワインに心酔したのは、ソムリエ研修でナパに赴いたことがきっかけ。「食材の自由な取り合わせ、斬新な発想の料理。ホスピタリティ」に心奪われてしまったのだとか。一方フレンチの食の奥深さ、中でも気軽に楽しめるビストロ料理にも魅せられフレンチとカルフォルニアワインのしゃれた国際的なカップルが生まれたのだ。こちらで提供される料理の数々に惹かれ、親交のあるナパの銘醸「フロッグスリープ」のオーナーもほぼ一年に一回のペースで店に訪れるという。

写真で紹介したビストロ料理はもちろん、低温でイワシをコンフィした「自家製オイルサーディン」¥800など、ワインにぴったりな一品も多く、こだわりの鎌倉野菜を使ったサラダや付け合わせの野菜もとにかく新鮮で美味しい。コースは前菜に本日のカルパッチョ、本日のキッシュ、魚、肉、そしてデザートかチーズというボリュームたっぷりで¥7,000〜。ワインはボトルで¥6,000台〜、本格的ながら気負いなく、味も良いと平日は場所柄ビジネスパーソンの接待も多いのだとか。シェフはもちろん、店に立つフランス育ちの奥様もソムリエ資格を持ちワインに精通している。料理のこともワインのことも尋ねれば気軽に教えてくれる。都会の中、静かで落ち着いて食事とお酒が楽しめる貴重な一軒と言えよう。

ビストロ チカラ
住所=東京都港区虎ノ門3-11-8 山田ビル 1F 電話=03-5408-6328 営業時間=月~金11:30~14:00(L.O.13:30)/17:30~23:00(L.O. 22:00)、土17:30~23:00(L.O. 22:00) 定休日=日・祝 ※各種クレジットカード利用可(ディナータイムのみ)
 
TEXT BY AKIRA TANAKA
PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA(NDPP.)

※2023年4月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
※店舗により臨時休業や営業時間を変更させていただく場合がございます。詳細は「虎ノ門ヒルズの営業状況について」をご確認ください。