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未来の科学者たちへ、森羅万象をひらく:『子供の科学』編集部に訊く

2024年、創刊100周年を迎えた雑誌がある。かつては紙飛行機の連載で一世を風靡し、現在は「毛」特集や「生成AI」特集、「宇宙生命体」特集といった斬新な誌面で未来の子どもたちを刺激し、未来の研究者をサポートするプロジェクトを進行中──『子供の科学』はいつだって、知らないことにこそ心をときめかせる読者の味方でありつづけている。

インタビュー連載「編集できない世界をめぐる対話」第11回は、誠文堂新光社の『子供の科学』編集部を訪ね、編集長・土舘建太郎と、編集部の最若手・森美和子に話を聞いた。最先端の科学の成果を、リサーチや取材などを踏まえ、子どもたちに伝えていく、ということ。それは本来、なかなか難しい営みであるはずだ。しかしその苦労を問うインタビュー中、部屋には絶えず、朗らかな笑いが満ちていた。おそらくはこのオプティミズムにこそ、いまの『子供の科学』の精神が宿っているように見える。

TEXT BY FUMIHISA MIYATA
PHOTO BY KAORI NISHIDA

──最近「毛」や「生成AI」など斬新な特集を組んでいらっしゃるのが気になり、ぜひお話をうかがいたくお邪魔しております。おふたりそれぞれのプロフィールを、すこしお話しいただいてもよろしいでしょうか。

土舘 『子供の科学』編集長の土舘建太郎です。1978年東京生まれ、学習院大学経済学部卒業です。

 えっ、そんなに細かく自己紹介するんですか!?(笑)

土舘 いや、プロフィールを、ということだったので……(笑)。別の出版社でフィットネス雑誌の編集をした後、弊社でかつて刊行していた愛犬雑誌の編集部に移ってきました。その後に『子供の科学』に配属され、2015年から編集長を務めました。一度Webサイト「コカネット」の編集長を経て、2023年から雑誌とWebサイトの編集長を務めています。

 『子供の科学』編集部の森美和子といいます。1995年神奈川県生まれ、明治学院大学文学部芸術学科に通っていました。情報誌の編集プロダクションを経て、2022年8月に誠文堂新光社に入社しまして、いままで1年半ほど、『子供の科学』編集部に所属しております。

──おふたりともに、いわゆる文系なんですね。森さんが編集部の最若手ということですが、どんな人数構成で、普段はどのような制作のサイクルなんでしょうか。

土舘 編集の実作業に携わっているのは、森を含めた3人です。それに加えて、広告担当、ウェブ担当、デザインやイラストを手がけるアルバイトスタッフが1名ずつ、それに編集長の私で、計7名ですね。サイクルにかんしては、たとえば1月発売の2月号であれば、前年の10月末あたりの編集会議で企画が決まり、11月に下準備や取材を進め、12月に多くの実作業をしています。

──2023年12月号の「毛」特集は、森さんのご提案だったとか。

 実は入社直後、『子供の科学』編集部にも所属したてのころの企画会議で、「ムダ毛」特集を組みたいと提案したんですが、そのときは「子どもがそんなに毛のことを気にするだろうか」という感じで、あまり反応はよくなかったんです(笑)。それが今回、どんな特集を組もうか……と企画会議が煮詰まっていったときにもう一度「毛」はどうでしょう、と話題に出してみたところ、「このあたりで変化球の特集をやってみてもいいんじゃないか?」という流れになったんですよね。

土舘 生き物の企画というのは、『子供の科学』においては定番の企画です。だからこそ、どういう切り口で取り上げていくかということを、編集部ではいろいろとアイデアを出していくことになりますし、「毛」というのも新機軸として面白いのではないかという話になりました。内容をつめていくうち、動物の毛だけでなく微生物の繊毛など幅広く生き物を扱えそうだということがわかってきたり、付録マンガでヒトの毛を扱おうという案が出てきたり、いろいろなアプローチの仕方ができそうだということが見えてきて、これで勝負しようと決まったんですね。

──「人工繊毛で覆われたマイクロチップ」というようなディープな話題も出てきますが、こういったトピックは取材をしていくなかで見えてくるものなんですか。

 そうですね。あまり細かに決めるというようなことはしない状態で、どんどん取材をしていっちゃって、面白い話があったら取り入れていくなかで、だんだんと大枠が見えてくる……という感じでしょうか。

土舘 そういう意味ではいつも、見切り発車ではありますね(笑)。とはいえ、特集など新たなページをつくるときには、日頃お付き合いのあるさまざまなジャンルの専門ライターさんや、新たに見つけた相談できる方に、意見を仰ぐようにしています。「それは厳しいんじゃないか」「あの先生だったら面白い話を聞けるよ」といったお話をうかがって情報を集めつつ、こちらでもリサーチしていき、そのまま先に進めたり、あるいは方向転換をしたり、というジャッジをくだしていますね。

 今回、改めて「毛」を提案するにあたっては、保谷彰彦さんのご著作である『生きもの毛事典』(文一総合出版)が参考になっていまして、特集の文章も担当いただいています。そのうえで、よりディープかつ最新のトピックスを取り入れたいということで、細胞生物学の先生のもとへ取材にうかがったんです。

──『子供の科学』を読んでいるお子さんは、かなり意識的に情報をキャッチされていると思うのですが、紙面の構成において意識していることはありますか。

土舘 やはり、最先端の研究者である先生方に聞きにいったからこそわかること──「いま取り組んでいるのはこんなことなんです」とか、「いま一番ホットなトピックはこれ」というような話を載せたいですよね。もちろん子ども向けの読み物として複雑すぎないように、ある程度は限定した範囲や内容を想定して取材にいくのですが、その想定を超えてしまうようなこと、たとえば先生が熱っぽく、自分から「これがいま面白いんだよ」と話し出してしまうようなことこそが大事だと思います。科学好きのお子さんであれば、通り一遍の情報はある程度キャッチしているもの。だからこそ、なかなかアクセスできない、インターネットや本で調べきることができないような情報こそ掲載したいですし、そのあたりのバランスはライターさんとも相談します。

 そうですよね。もちろん、読み進めてもらえるように基本的な情報を掲載していくことも大事なので、さわりの記述を入れていくだけでもボリュームは出てきます。いろいろと伝えたい、かといってあまりに情報が詰め込みすぎということにもならないように、バランスを探る感じといえばいいんでしょうか。

土舘 あまりマニアックになりすぎてもよくないので、その取捨選択を、取材を重ねるなかでしていっていますね。

──そのなかで「毛」にかんして実際にページに掲載されたのが、先ほどのマイクロチップのお話や、病気やがんに関係している可能性があるといわれる「動かない繊毛」なんですね。

 はい、あとは虹色に光るクシクラゲですね。当初は載せる予定がなかったのですが、写真で見たらすごくきれいだったんです。なんといいますか、「毛」特集といいますと、工夫をしないとビジュアルがきれいなものばかりではなくなってしまうというか、ページを構成するうえで難しいことがいろいろありまして……。

──たしかに「毛」特集だとはいっても、どのページもモジャモジャしてしまうのも考えものですね(笑)

 そうなんです。ですから、「ここにクシクラゲを載せられたら最高なのでは!」と編集的な立場でも興奮をしました(笑)

──一方で、「生成AI」特集にかんしてはいかがですか。子どもたちに伝えるうえで、さまざまな判断があったのではと想像しますが。

土舘 生成AIにかんしては2023年の夏が訪れる前ぐらいから、編集部では「いつ特集をやろうか」と、懸案事項にはなっていました。

──「ChatGPT」が公開された2022年末から、2023年初頭といった時期を大きな境にして、一気に話題になっていったトピックですよね。

土舘 2023年の前半までは、過渡期のテクノロジーにおいても過渡期そのものといいますか、いろんな情報や議論が出てきて、錯綜しているような状況でした。子どもが実際に使うというケースを想定した議論もはじまったばかりだったので、『子供の科学』ではどのタイミングで取り上げればいいのだろうかということを、後に生成AI特集でご執筆いただいたライターさんと相談しながら決めていきました。

──なるほど。とはいえ御誌では、2022年12月号の小特集で「AIアート」を取り上げています。画像生成AI元年とも呼ばれた年であり、一方では現在のように生成AI全体が話題になる前の段階での企画だったはずですので、かなり早い判断だったかとも思うのですが。

 私が提案したのが、入社したての、本当に最初の会議だった記憶があります。ネタ出しをしなければいけないけれど、何を出せばいいのか……と考えていたんです。普段私はX(旧Twitter)を廃人のように眺めていまして(笑)、そのときに盛り上がっていたのがAIアートだったんですね。「これ、“科学”じゃん!」と思って、会議で提案してみたら、すんなり通ったんです。

土舘 現在のように、学習データをめぐる倫理的な問題が広く、かつ大きく取りざたされる前の段階ではありましたね。ひとつ条件として出したのは、「子どもが体験できる」ならば、ということでした。実際にお子さんがどうやったらAIアートをつくれるのか、教えていただける先生を見つけて、技術を紹介いただいたということなんです。

──生成AIに限らず、子どもにとってのタッチポイントが存在する、ということがひとつの条件なんでしょうか。

土舘 そうですね。お子さんたちにとって身近であるということが重要です。実験でも観察でも工作でも、何かしら実際に、手軽に、そしてできればあまり元手がかからずに取り組んでみることができるという点は、非常に重視しています。たとえばAIアートであれば、アプリケーションに言葉を入力すれば絵が出てくるんだと実感できれば、じゃあその仕組みはどうなっているんだろう、というところに興味を抱いてもらえると思うんですね。

──その後、生成AIはさまざまな課題が議論されつつあるなか、今回のタイミングで特集を組むに至りました。誌面では注意事項も併記されていますね。

土舘 2023年7月には、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しました。他にもさまざまな教育機関の指針や、専門家の方々のサジェスチョンなども含めて、子どもが生成AIを使用し、体験するにあたって参照すべき安全面や倫理面でのある程度の基準が見えてきた、ということが大きかったですね。学校の宿題を生成AIにやらせてしまうというような問題が議論される一方で、授業で部分的かつ有効的に活用する実践例も出てきました。『子供の科学』なりに、まずは触って体験してもらいながら学んでいく面白い特集が組めそうかな、というラインが見えてきたんですね。誌面では、AIと俳句を詠むですとか、議論を深めるうえでAIに参加してもらう、といった内容を紹介しました。

 生成AIを活用している小説家や脳科学研究者といった方々にもご登場いただきました。生成AIは大人の社会で既に使われているテクノロジーですから、それを子どもだけに「使わないで」と禁止するのもどうなんだろう、という思いはあります。安全面での注意点にはきちんと留意しつつ、『子供の科学』の読者だったら、この技術を使って将来的にもっとすごいものをつくってくれるだろう、という期待も大きいです。制限しすぎずに、どのように伝えていけるか、使ってもらえるかということを考えながら誌面をつくっていきましたね。

──科学やテクノロジーに並々ならぬ興味を抱いている読者に対して、最先端の事象が世に広まっているにもかかわらず、大人が目隠しするのも問題かもしれない、ということですね。他にも、毎号巻頭に最新科学トピックがたくさん紹介される「コカトピ!」も、さまざまな分野の最先端を伝えていますね。

 各分野のライターさんが、大学や研究所のプレスリリース、論文、ニュースを踏まえて提案くださるトピックのなかから、いまは担当編集である私が取り上げるものを決めています。

土舘 キャッチーな見出しが書けそうであるとか、ビジュアル映えしそうなものといった、編集的な視点での判断も大きいですね。やはり子どもたちに伝えるうえで、驚かせる、あるいはワクワクさせるようなビジュアルというのは、とても重要ですから。

 そういえば以前に「コカトピ!」にかんして、かなり校了が近づいている段階で土舘編集長に相談をしたことがあるんです。ちょっと難しい専門用語をかみ砕きたいという話だったのですが、編集長から「『子供の科学』では、あえてそうした専門用語を出しちゃうことで、読者に“わからない”という体験をしてほしい」といわれたのが、とても印象的でした。もちろんすべて専門用語というわけにはいかないですけれど、それ以来「コカトピ!」に限らず、原稿に赤字を入れるときにはある程度の難しさは残していこう、と考えています。逆に、誌面に登場いただく大学の先生から「ちょっとこれは難しすぎませんか?」と心配されることもあるのですが、結果的に編集としてGOの判断をくだしているときが多いかもしれません。

土舘 実は2024年1月号から「コカトピ!」のデザインを新しくして、各トピックの冒頭に、SNSのハッシュタグのように、「気になるタグ」を並べるようにしているんです。たとえば2024年2月号では、「2番目に強い宇宙線『アマテラス粒子』を観測」というトピックを紹介していますが、その下には「#GZK限界」といった専門用語を並べています。

──たしかに、一見して「?」と思うような用語が並んでいますね。

土舘 こうした「専門用語を無理にかみ砕かず、そのまま出す」ということは、編集部としてかなり意識的にやってきているんです。仮に小さいころはわからなかったとしても、時間が経って高校生や大学生になったときに「あれっ、これって『子供の科学』で見たことあるかも」と思い出してくれればいいな、という期待感がありますね。しかも現在は、気になったりわからなかったりしたら、すぐに検索できるという情報環境がある。もちろん、頭の片隅に引っかかったままで後に思い出してもらってもいいのですが、見たら思わず検索してみたくなるようにつくったのが、リニューアルした誌面なんです。検索してわからなくても、それでいい。まずは、そうした読者自身のアクションが大事なんです。

──とても興味深いのと同時に、“わからない”ラインをどこに引くのかは、難しい判断だという気もしますが……。

土舘 その意味では、逆に読者のリテラシーといいますか、この誌面を読み解いてくれるお子さんたちの力に甘えている部分もあります。普通の子ども向けのメディアでこんなにたくさん専門用語を載せたら「全然わからない!」と投げられてしまうかもしれませんが、『子供の科学』の読者であればきっと投げないで読んでくれるはずだ、と信じているんです(笑)。もちろん、そのぶん読者層を絞ってしまう危険性と隣り合わせではありますから、絞り方と広げ方、そのせめぎ合いにかんしては、編集部で常に議論していますね。

──ちなみに「編集部」というのは、社会全般を見渡しても、つくづく不思議な集団性をもつものだと思うのですが、どうお感じになりますか。

 どうなんでしょう……編集部のなかでめちゃくちゃ刺激し合っている、ということでもないですよね?

土舘 心理的安全性が確保されているといいますか。突拍子もないアイデアでもすぐに否定せずに、アイデアを出しやすいような編集部の雰囲気にしたいと思っています。編集会議では、誰かが提案した企画に対して、それぞれが知っていることを挙げながら「こういう切り口だったらいけるかな」などまずは企画として成立できるか検討します。うまく誌面にならなそうなら、「じゃあ、他にいいテーマはある?」と思いつくテーマを出して、また話し合う、という中で企画を決めていきます。

 方向性が決まったら、そこから先はしばらく個人プレーがつづきますよね。

土舘 企画や担当が決まれば、編集者がそれぞれ外部の人たちや取材先の方々とのやりとりで道をつくっていく段階に入ります。その収穫をゲラにしていくなかで、また編集部のなかで検討していくという感じですね。

 それぞれのゲラが出てきたときに、お互い初めて目にするわけですよね。「あ、こんなことやってらしたんですね。大変そうな企画ですけど、面白いですね!」というような……(笑)

──並行しつつ集合離散する動きが、「編集部」の面白さかもしれませんね。さて、そもそもの話ではありますが、『子供の科学』の「科学」の範囲は、どこまで広いのでしょうか。子どもたちの質問に各界の専門家が答える「なぜ? なぜ? どうして?」のコーナーで、為替レートにかんしてファイナンシャルプランナーの方が回答していて驚きました。

土舘 どこまでが「科学」か、という意味では、「全部」ですね。特にここからここまで、という範囲はないです。

 本当にいろいろ取り上げますし、私も毎回知らないことばかりです。個人的には、アストロバイオロジーにスポットを当てた「宇宙生命体はいる?」特集(2023年8月号)が印象深かったです。宇宙生命体がいるとしても見つかるのはさすがにかなり先だろうと思っていたら、専門家の先生方は、遅くても2040年代には見つかるんじゃないか、見つけやすいのは植物なのではないかというように、とても具体的に、かつ熱いテンションで語っていらしてビックリしました(笑)。すべてが刺激的でしたね。

土舘 ただやはり、子どもが興味をもつかどうか、という点はどこまでも重要です。ニュースで流れていた、学校で話題になっている、教科書に載っている、店で見かけたことがあるといったような、何かしらの“引っかかり”がないと、その先の興味につながっていかないですから。

──その“引っかかり”を探すという点では、森さんがSNS廃人であることにも意味がありそうですね(笑)
 
 だといいんですけれど……(笑)

土舘 他にも、大人が話題にしている、ということでもいいと思うんです。身近な大人が気になっているトピックにかんしては、子どもたちも「気にしていることを気にしている」ので、それが『子供の科学』に載っていると、大人に教えたくなる。いずれにしても、子どもたちが誰かに教えたくなる、ということがすごく重要だと感じます。『子供の科学』の読者は博士ちゃんみたいな子が多いですし、私たちはよく読者参加型のイベントを開催するのですが、そこでも子どもたちは専門家の先生に教えようとしています(笑)

──そうした現在の子どもたちと、創刊100周年という『子供の科学』の「歴史」は、どのようにまじわるのでしょう。たとえば、紙飛行機の人気連載を49年間続け、2023年11月に永眠された二宮康明さんの追悼記事は、そのひとつの象徴のようにも思います。 

土舘 二宮先生の紙飛行機の連載は、まさに『子供の科学』の“魂”といいますか、象徴のように感じます。かつての読者であれば「『子供の科学』イコール紙飛行機」だというぐらい、あの付録をつくって飛ばした人は多いですよね。改めて振り返ると、「実際に自分の手で試してみて、科学の原理を感じる」という、まさに理想のような連載でした。飛ばすのが決して簡単じゃなかったのも、またいいんですよね。綿密に計算された機体だからこそ、ちょっとした角度の違いでうまく飛ばないこともあるし、だからこそ飛ばせると本当に嬉しいものでした。いまは失敗すること、試行錯誤するということを避けて、成功体験だけを重視する傾向がありますが、かつて『子供の科学』を読んでいた人であれば、失敗することの大切さを知っているので、仮に自分の子どもが失敗しても文句はいわないだろうと、私たち編集部も信じているんです(笑)

 いまも続いている最長の連載は、湯浅浩史先生に隔月でご執筆いただいている「世界の不思議な植物」ですね。毎回、手書きの原稿を頂戴するんですよ。私が取りにいって、お茶をお出しいただいて、お話しして……ご存じの知識の広さも深さも本当にすごくて、この連載がつづいているのが『子供の科学』であり、その「歴史」を子どもたちに橋渡ししていくということなんだなと、実感しています。

──そうした歴史の先に展開しているのが、100周年記念事業「キッズスタートアッププロジェクト」のメインプロジェクト「小中学生トコトンチャレンジ2024」です。応募者のうち、審査を通過した採択者を「お金、技術、情報、環境の面でサポート」するそうですね。

土舘  「好きなこと」「やりたいこと」があっても、それを子どもたちが本当にやってみる機会ってあまりないと思います。その大きな一歩を踏み出すチャンスになればと考えています。研究資材費などのサポートはもちろんのこと、「小中学生トコトンチャレンジ」は、専門家とコミュニケーションをとりながら取り組めることが、とても大きな経験になるはずです。将来、20年後でも30年後でも、このプロジェクト出身の子が研究や開発の分野で何か面白いことを成し遂げてもらえれば、私としては大満足です。そのとき私はもう高齢者ですが(笑)、そんな未来を見てみたいという思いがありますね。

 先ほど「なぜ? なぜ? どうして?」の話が出ましたが、あの欄は毎回子どもたちの質問に応じて、適した回答者の先生を探してお声がけしている、とても大変な欄なんです(笑)。そんなとき、「『子供の科学』の読者でした」とおっしゃってくださる先生が、本当に多いんですね。今の読者やトコトンチャレンジの出身者が、将来このコーナーの回答者として登場するようなつながりがつくれたら嬉しいです。

土舘 『子供の科学』創刊号には、巻頭に初代編集長の原田三夫さんが書いた「この雑誌の役目」という文章が掲載されています。要約すると、研究者だけが知っている面白い話を子どもたちに分かりやすく伝えるということ、実験や工作といった体験をしてもらうことで発明の才能を開花させるということ、そして一番重要なのは「ほんたうの科学」を伝えることだと書いてあります。本当の科学とは、森羅万象あらゆることの仕組みを明らかにすることであって、それは人間の根本的な欲求なのだ、と。こうした「この雑誌の役目」は、いまもって、まったく一緒です。

profile

宮田文久|Fumihisa Miyata
1985年、神奈川県生まれ。フリーランス編集者。博士(総合社会文化)。2016年に株式会社文藝春秋から独立。2022年3月刊、津野海太郎著『編集の提案』(黒鳥社)の編者を務める。各媒体でポン・ジュノ、タル・ベーラらにインタビューするほか、対談の構成や書籍の編集協力などを担う。