INSTANT FLOW

そして僕は途方に暮れた——藤原ヒロシの連載「INSTANT FLOW」#58

ローマ、ミラノ、京都、カザフスタン、またローマ、シアトル、パリ、そしてどこだか名前も知らない町まで。ジェットセッター魂全開の縦横無尽な軌跡を辿りながらHIROSHI FUJIWARA(hf)の日々をしみじみ眺める当連載。第58回は、2023年4月〜7月にアップされた画像からおとどけします。

INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII

4月13日——独特のおもてなし

——ローマでは、こちらがスタンダードなサーブの仕方なんですか(笑)?
hf いや、わかんないですけど。プリンがこうやって出てきて、ローマ時代の処刑かなあ……と思いながら。
——3人だったからフォークが3本。黒ヒゲ危機一髪的眺め。大きいプリンなんですかね。
hf 普通サイズです。硬さがよく分かりますよね。
——いい硬さでした?
hf いいかどうか……。もしかしたら「お前ら早く帰れ」という合図だったかもしれない(笑)

4月20日——ミラノのあなた

——すてきなマダム。
hf ミラノの「ラ・ラッテリア」の、マリアさん。
——あの、世界一のレモンパスタのお店。なかよしなんですね。
hf わりと。ミラノにいたら毎日のように通うお店ですから。マリアさん、絶対に英語は話してくれなくて。僕はイタリア語、全然わからないんですけど。
——でも、なにか通じ合っている。

4月21日——赤いといえば、○○○

——豊川稲荷かと思いました。
hf イタリアの豊川稲荷(笑)。ホテルの前の道でしたが。サローネの時期だったからか、町中にアートっぽいものが。
——なるほど、こういうインスタレーションが町の其処此処に。でもなぜに赤いキツネ?
hf ……いや、イヌかな? オオカミかな? キツネじゃなさそうですね。
——赤いといえば反射的にキツネだと思っちゃう日本人。

4月21日——濃ゆくて、ねっとり

——ステーキみたいなスイーツ。チョコレートですか?
hf いや、豆みたいな……。
——なにやらトラディショナルな佇まい。
hf ちょっとねっとりした、ムースとケーキの間の食感。
——濃ゆくておいしそう。

4月21日——ベッカムの基礎知識

——ところで、サローネへは何のお仕事で?
hf マセラッティのコンセプトの発表です。ベッカムと一緒に……
——あ、ベッカム!


——ベッカムは何の役割で?
hf ベッカムは、マセラッティのアンバサダー。
——今は引退して、どうしているんでしたっけ。
hf マイアミだかどこかでチームを持っているそうです。行ったり来たりしてるって言っていました。僕はサッカーをよく知らないし、ベッカムがどんなにすごいかもあまりわかってないですけど。
——ベッカムは、地球上にベッカムヘアを流行らせました。

4月22日——そして僕は途方に暮れた

——なぜ、ここに泊まることに?
hf 長くなるからなるべく簡潔に話しますが……。ミラノで飛行機のストがあって遅れて、フランクフルトに着いた時には乗り継ぎ便が飛んじゃっていたんです。大体そういうときって待ってくれるだろうって余裕でいたら、まさかの乗り遅れ。その時点で夜の10時、空港には誰もいなくて、店やカウンターも閉まっていて。日本は深夜なので電話もつながらないしどうしよう。ってなって。
——かなり不安。
hf それで空港の掃除をしている人に「乗り遅れた場合どうするの?」って聞いたら、サービスカウンターに行けと言われたんです。フランクフルト空港って大きいんだけど、メインのターミナルまで移動して。スタッフがいたので乗り遅れたと言ったら、「バウチャー・カウンターに行ったか?」と。恐らくヨーロッパではこういうことが日常茶飯事なのでホテル・バウチャー専用のカウンターがあるんですね。で、そこに行ったら何人か人がいて。僕らもタクシー券つきホテル・バウチャーのチケットをもらったんです。そしてタクシーの運転手に連れて行かれたホテルがこちらです。このmiddle of nowhere(辺鄙な場所)に2泊しました。町の名前もわからない、フランクフルトから車で30分ぐらいのところに。
——電波少年っぽい……
hf ユースホステルみたいな。老人ホームみたいな。そんなホテル。
——簡素なベッドがあって。
hf そうそう。でもWi-Fiが完備されてたんで、問題なくNetflix三昧。あとは下着買いに行ったり……荷物もなかったんです、乗り継ぎ便に積んでしまったので。
——そうか。なかなか拉致感がありますね。
hf 久しぶりに途方に暮れました。自分で言うのも何だけど、旅慣れている自分でも、今回はけっこう困ったんで。旅慣れない人が巻き込まれたらどうなんだろうな、と思います。
——きちんとパニックになりますね。ちなみにそれが2泊になっちゃったのは?
hf それは、次の日の振り替え便がなくて……(以下、紆余曲折がつづく)。
——なるほど……めっちゃ紆余曲折。藤原さんと同行の方、英語が堪能なおふたりでも、こんなに大変だったとは。
hf 夜の空港で乗り遅れると、なかなか途方に暮れるという話。僕らはあまり怒らないタイプだから、この老人ホームで楽しもうって切り替えられたけど。人によっては、めちゃめちゃイライラした2日間を過ごすことに。
——でも自分では気をつけようがないですものね。
hf そもそもイタリアのストライキのせいですからね。
——海外は、ストライキやるっていったらやりますものね。ハリウッドの組合も本当にやってたし。
hf トム・クルーズが来日できなくなりましたね。
——以上、middle of nowhereからでした。

4月25日——ふふ、観覧車が見える

——あの拉致から、次のポストがいきなり京都。おかえりなさい(泣)。ここはお母さまと行かれたのですよね? 日本のホテル代が高くなった、みたいな話を以前されてましたが。
hf そうそう。
——観覧車が見える、かわいい眺めの宿が京都にあるんですね。
hf 「ふふ京都」
——お姉さんもご一緒で、3人で。
hf 4人です。姉が2人いるんで。
——なかよしですよね、藤原家。京都で何か楽しいことありました?
hf いや、本当にここに行って帰ってきただけなので、特に何もないです。
——観光も。
hf しないです。世界中どこに行っても観光しないです。

4月28日——盗撮用ポケット〜(ドラ風)

hf カメラマンの梶野君のポケットの穴に、ちょうどiPhoneのカメラが。
——シンデレラフィット! そして怪しい(笑)
hf 絶対怪しい(笑)
——でも押せないですよね。
hf アップルウォッチから押せるんじゃないですか?
——プロっぽいですね。
hf 彼の後ろを歩いていて、僕、ぜったい監視されているって思った(笑)

4月30日——文春ライダー

——藤原さん「文藝春秋」に対談が載ってましたね。
hf そう、元「週刊文春」「文藝春秋」編集長の新谷さんと。これは新谷さんとごはん食べている時にもらって。村上隆さんの弟さん(村上裕二)との縁ですけど。
——そうなんですね。
hf 「文藝春秋」の表紙は、いつも村上隆さんの弟さんが描いているんです。

5月3日——はじめましてのカザフスタン

——カザフスタンにも行っていらしたんですね。
hf ファッションウィークがあったので。
——以前にも行かれていましたね?
hf それはグルジアですね。カザフスタンは初めて行きました。広大な自然の片田舎。

カザフ・ランドスケープ ❶

——スキージャンプ台がある。
hf 全然使ってないらしくて。レストランに変わるとか……もったいない。街のあらゆるところからこれが見えて、景色としては面白いのに。

カザフ・ランドスケープ ❷

hf これはロシア時代の教会。この前までロシアだったから。この国ではどこに行っても馬を祭ってあります。でも、みんな馬を食べるんです。不思議じゃないですか?
——祭りながら、食べもする。
hf 祭って、乗って、食べて。
——すべてを余さずいただく……。ファッションショー自体はいかがでした?
hf 基本は知らないブランドばかりだけど、面白いブランドもありました。新しい形のネオ・イスラム的なルックとか。女性が頭からかぶるヒジャブが宝石とネットでできているとか、そんなイスラムの伝統とファッション。
——ヒジャブは取れないけど、そこでおしゃれを楽しむ。
hf もう実際には、ヒジャブは被らなくてもいい感じなのでは? サウジですら多分被ってなくて。ここの国でも。日本人でたまに着物を着る、みたいなことじゃない?
——今はそんなムードなんですか。
hf カザフはそんな感じです。多分、被っているのはアフガニスタンとイランだけじゃないですか?サウジも急激にひらけましたもんね。サウジは観光資源をフル稼働させつつ、5年以内にドバイを追い越す予定らしいです。
——どんな開発をしているんだろう……。
hf めちゃめちゃやっています。日本人もたくさん行っていて。何キロかの長い町をつくっている。壁を2つ建てて、それを何キロかつなげて、中を町にする。砂漠の間に。
——発想がすごすぎる。サウジ、行ってみたいですか?
hf 行ってもいいけど。

5月3日——カザフごはん

——カザフスタンの食事はいかがでしたか?
hf 馬がメインなんですよね、僕は食べてないけど。
——じゃあこのお料理は、藤原さん用のフィッシュメニューですね。お皿にすんっと一匹。カザフ料理、ちょっとトルコ料理のようですね。
hf そのお店のごはんはおいしかった。最近できた、山の方にあるきれいなレストラン。何だったらベスト50とかに入ってくる可能性もある一軒です。
——カザフ料理って東京にはあるんですかね、あまり聞かないですが。

5月9日——甘くて苦いTシャツ

——こちらは?
hf この前つくったTシャツなんですけど。よく見ると、チョコレートケーキなんです。
——チョコレートケーキの仕様になっているんですね。この絵のモチーフは……香水?
hf ちがいます、手榴弾。

5月10日——再構築したんじゃが

——ジャガイモですね? このケーキ。
hf なんか一時、こういうの流行りましたね。再構築系。ミカンなんだけど、中はフォアグラとか。でもジャガイモって面白いなあと思って。
——しっかり芽が出ていて。
hf ジャガイモにする意味あるのかな? チョコとジャガイモ、あまり関係ないじゃない。
——ジャガイモに何か特別な思い入れがあったんですかね。

5月10日——ローマのホテルの部屋にて

——そしてふたたびローマに。
hf 月4回ぐらい海外に行っていました。毎週火曜日に出発。
——ひゃあお忙しい。こちらのホテル、大理石の床がすごくいいなあと思って。でも滑って歩きにくい?
hf 僕は大理石にそんな興味ないけど、反射がきれいだなとは思う。ホテルの名前は忘れちゃった。

5月10日——旅は道連れ、黒ウーロン

——そして相変わらず黒ウーロン茶は離さない。黒ウーロン茶と無限エビと。
hf あと、しみチョコ。もうゴールデントライアングル。
——無限ループ。

5月12日——ローマ発、想像の旅へ

——ローマの空港のコンコースって、こんな風になっているんですね。いにしえの都らしい。
hf あれ観ました? 『インディージョーンズ』の最新作、「運命のダイヤル」。シラクサ包囲戦(紀元前211年)の時のアルキメデスが出てくるんですが。あの戦いって、対ローマだと思ったんだけど……舞台はシチリアでしたよね?
——そうでしたね。
hf 数学者、物理学者であるアルキメデスが活動していたのが紀元前287〜212年くらいなんです。で、アリストテレスが紀元前384〜322年。三平方の定理のピタゴラスが紀元前582年から496年です。ピタゴラスがあの難解な定理を発見している頃に、日本はまだ縄文時代なんですよね。すごくないですか。
——宇宙人がいたと思う(笑)
hf 日本で縄文から弥生になる頃が、アルキメデスの時代なんです。あんな戦争をしている時に、日本はもしかしたら土器に縄を貼っていた。
——縄文時代は1万年以上もありましたね。
hf 長いですよね。でもグレートジャーニーで、アフリカからホモサピエンスが歩き始めたのが6万年前だから。
——遠かったんだろうなあ、日本。
hf 遠かったけど、アメリカなんかもっと遠かったし。南米がさらにその後で、最後のフロンティアはイースター島。人類がたどり着いたところ。舟が登場するのは農耕が始まった以降なんで、南アメリカに人がやっと住みついてから。2000年とか3000年前まで人はいなかったらしいです。めちゃ最近のこと。
——縄文は豊かな時代だったといわれていますけどね。ローマとはまた違った意味で。
hf ふと思ったのは、日本に約1万年前に縄文人がやって来た時に、ニホンザルはいたんですかね。
——ニホンザル??
hf だってグレートジャーニーで人類、ホモサピエンスが来たのであれば、サルはどうなんだろう。
——ニホンザルの起源……
hf なにも調べずに面白がって言ってますけど、ちょっと不思議じゃないですか?
——(調べる)ニホンザルは、縄文人がいた1万年前よりもずっと昔,約50万年前に朝鮮半島から西日本に渡ったそうです。化石が山口県の秋吉台で確認されています。ニホンザルって北海道にはいないんですね。
hf じゃ、もうホモサピエンスより前に、サルはサルでグレートジャーニーをしていたんですね。
——で、東北まで分布を広げたけれど北海道には渡れなかった。寒すぎたのかな。
hf 北海道から来たんじゃないんだ?
——なんか朝鮮ルートらしいです、沖縄と北海道にはいないから。すごいジャーニー。しかし藤原さん、よくぞインディージョーンズからニホンザルへと。
hf 僕の想像のジャーニー(笑)

5月17日——あの頃の熱も狂気も

——『49冊のアンアン』、すごく気になってます。
hf 面白いです。それこそ近田まりこさんとか、現在65歳から70歳くらいの人たちって、めちゃめちゃ面白いなあと思いながら読んでいたんですけど。でもやっぱり登場する人が、知らない人だらけなんですよね。それを考えたら僕らの世代か、もうひとつ下の世代の本も、早く誰か書かないと駄目だなと思うんです。この本が20年前に出ていたら、もっと面白かったはずだったから。読んで共感できる人が少ないんじゃないかな、今になってしまうと。
——「堀内誠一が編集長以上の権限を持つ日本初のアートディレクター制の雑誌」って、すごいなあ。めちゃ面白そう。
hf それが面白いと思える人が、もう少ないんじゃないですか? 僕が読んでいても、たまに知っている人が出てくるだけ。それに昔は雑誌と現実の乖離がすごくて、それが良かったんですよね。外国人がまだ身近ではない時代にモデルもみんな外国人で。でも今は、近くにいる人がモデルじゃないですか。生活感あふれた雑誌になっているから、もっと飛躍したものの方が面白いのかもしれないけど、もうネットで全部つながっているから。まだ見ぬ世界もないし憧れるべき遠い世界もない。
——そういうの、なくなっちゃいましたね。すべてがSNSでフラットに。

5月23日——2023年のシアトルで思う

——シアトル郊外。こちらは1号店ですか?

hf わからないですけど。シアトルとポートランドは、めちゃめちゃ荒んでいましたね……
——シアトルがそういう感じというのは、何年か前に聞きましたけど、ポートランドも?
hf そうですね。もうあの「ポパイ」みたいな、シティボーイのイメージはゼロです。コロナの後に暴動があったじゃないですか。
——ありましたね。
hf あれがポートランドです。もう昼間からジャンキーがダウンタウンを歩き回っているような町になっています。
——そんな……すてきなコーヒーの街が。
hf 黒いスリムデニムに髭はやしたおっさんが自転車乗っている町だったんですけど。そういうのはいなくなりました。
——街やカルチャーが変わってしまうのって、一瞬なんですね。
hf ちょっと歩いたら、たぶん怖いと思う。でも、シャネルの売り上げは全米1位らしいです。
——そうなんですか?!
hf ポートランド(オレゴン州)は無税だから。

6月1日——好奇心と猫とTシャツと私

——このネコのTシャツ、かわいい!
hf 今日、友だちにあげようと思って問い合わせしたんだけど、全部売り切れてました。
——このイラストは誰ですか。
hf 写真です。
——めちゃかわいい。
hf 僕も自分で作った中でも好きなTシャツです。イギリスの諺で「キュリオシティ・キルド・ザ・キャット」という、好奇心はネコを殺す(好奇心もほどほどに)。キュリオシティに驚いている猫です。

6月11日——PERFECT YAKISOBA

——これ、完璧な焼きそばじゃないですか。絶対おいしいよね……
hf 五反田の「鉄板バル チェローナ」。もともとは「焼きそばバル チェローナ」という名前だったんですが、ちょっとおしゃれになっちゃって。でも焼きそばだけはそのまま残っていて。知り合いが教えてくれて行ってみたら、おいしかった。
——五反田って、焼きそばがおいしそう。

6月14日——甘くないほうのクッキー、どう呼ぶか

——藤原さんは、「おかずクッキー」って呼ぶんですね(正式な名称は「やま岸のおつまみクッキー」)。
hf 甘くない方の塩っぽいクッキー、僕はそう呼んでます。
——おしゃれなサレ系を、おかずクッキーって呼ぶのいいですね。
hf 「やま岸」は麻布台ヒルズに出店しましたね。ヘザウィックビルの中。
——麻布台ヒルズどうでした?
hf すごい良かった。
——ガウディ感ありますよね。ちょっと不思議な風景で。
hf 初めて近くでちゃんと見たんですけど。森ビル、けっこうやるなと思ったのは、ヘザウィックのあの建物、ちょっと古い石を用いた感じでできていたんです。まったくキラキラしていないから、他の最近のビルとはセンスが違うと本当に思ったんです。めちゃめちゃよくできていました。
——藤原さん大絶賛。
hf しかも低層のところはつながっていて、あのイメージがずっと続いていて。すごく面白かったです。

6月18日——きっと、すごい人

——こちら、どなたですか……すみません、全然わからないんです。
hf G-DRAGONさん、元ビッグバンの。
——ビッグバンはわかります……
hf  G-DRAGONさんと、こっちの人は初めて会ったからお名前わからないけど、俳優さん。
——きっと見る人が見たらすごい人。

6月23日——ミラノとパリで絶対にいく店

hf フレンチフライは、フランスで。
——こんなに積んじゃって、ジェンガみたいに。
hf ミラノでは「ラ・ラッテリア」、パリでは「ラミルイ」です。絶対に行くのは。
——保存しちゃお。いつ行くのかわからないけど……
hf 行ったことないですか?「ラミルイ」。めちゃいいですよ。昔からあるビストロで、フォアグラがおいしいです。

6月23日——パリ共産党本部の中へ

hf パリの共産党本部。
——このカッコいい部屋よ!
hf 本部の建物、めちゃきれいなんです。有名なデザイナーが手がけたはず。
——オスカー・ニーマイヤーですって。スパイ映画のセットみたい。
hf ファッションウィークだから、いろんなところでイベントをやっていて。
——ここでやったんですか?
hf そういうことにもけっこう貸し出しているんですね。

6月25日——そのメロン、なに味?

hf 知り合いからもらったメロン。
——フラグメントメロン!どうやってつくるんでしょうね?
hf 友だちの友だちが農家をやっていて。もちろんプリントするわけじゃなく、小さいうちにキズを付けるんです。もう何カ月かかけて作り上げる、時間がかかるものなんです。僕だったら「リンゴ」とか書くかな(笑)
——混乱する(笑)
hf どんな味がすると思います? リンゴとかミカンとか書いてあるメロンを食べた時。って実験をしたいです。

7月3日——バカラ村へ行った

——パリの後は、バカラ村へ。バカラがあるからバカラ村?
hf 逆です。バカラ村で始まったから、バカラ。

7月4日——バカラのものづくりとは?

——そのバカラが作った教会ですか。
hf 教会のステンドグラスが全部バカラ。めちゃめちゃきれいでした。
——美しい……。モダンなステンドグラスですね。
hf 教会そのものが50年代か60年代のもので、そんなに古くない。モダンです。
——バカラへはお仕事で?
hf はい。コラボの仕事で。いちど何も知らずにただデザインをあげて、「これ、できそう?」と聞いたら、それは非常に難しいと言われて。何が簡単で、何が難しいかを僕らはわかっていないから、いちど来てものづくりを見てくださいと言われました。
——面白そう!
hf 面白かったです。ガラスは吹いて回して作るんですが、型があればいいけどその型を新たに作るとなると何千万とかかかる。だから型は作らないで、新しいことを試みて。
——すごい困らせて(笑)。バカラとのコラボ、楽しみです。
hf 困らせて。結局できたんですけど。バカラとのコラボ、めちゃいいですよ。

7月6日——ちょっと会って紅(くれない)?

——YOSHIKIさん、お知り合いですか。「パリで偶然、久しぶり。同世代と言わせてもらっていいのかな。」と。
hf 僕よりちょっと下ですけどね。彼がX JAPANの頃にレコーディングしたことがあってそれ以来。たまにお茶したり……でも最近は全然会ってなかった。そしたら「今パリにいるんです、ちょっと会いましょう」と連絡があって。
——そうなんですね。YOSHIKIさん、肌がきれい。以前コラボした曲は、どんなのですか。
hf  X JAPANのリミックス、でもリリースはされなかったかな。僕、ここにYOSHIKIさんって書いてないけど、やっぱりわかるものだね。
——わかるどころか……みんなめっちゃコメントしてます。
hf 有名人とはそういうものです。
——でもちょっと意外な感じがしました、おふたりの接点が。
hf それがいいんです。

7月7日——やよいちゃんは人気者

——そして彌生ちゃん。
hf タクシーで通りがかった。
——草間彌生の人気はすごいですね。
hf ヴィトンが権利を取ってやっているんじゃないですか。あれがルイ・ヴィトンの本社です。
——そうですか、このドットになっているところが。しかし自らこういうアイコンになれるというのが……
hf 本物のアーティストですね。

7月12日——生き方が大変そうな、斎藤さん

——斎藤幸平さんは、東大の准教授ですか?
hf そうですね、『人新世の「資本論」』を書いた人です。共産主義の、左翼の若手旗手。
——資本主義は駄目と言っているのに藤原さんのファンで、昔のTシャツを大事に持っている。矛盾してません(笑)?
hf だから、「生き方大変じゃないですか」って僕も言っていたと思うんですけど。対談は面白かったです。第2弾もやりたい。
——第2弾ではどんなことを話したいですか?
hf ゲレンデが悪いのは分かるけど……二酸化炭素を出しまくるから。でもロレックスに何の罪があるんですか?とか聞きたい。
——たしかに、ロレックスはなんで駄目なのかな。でも、この思考に行き着いているのにブランドTシャツは問題ないんですかね……
hf それはカール・マルクスだから。マルクスは僕も好きだし理解はあるんだけど。あの本は過激な書き方をしているから、だからこそ売れるというか。斎藤さん自身も少し演じているんじゃないですか? 面白い人ですよ、本も面白かったです。
——あちらから藤原さんと対談したいと?
hf はい。
——インテレクチュアル男子に好かれますね。
hf アルキメデスに謎を求め、ニホンザルに行き着くような考えを持っているからかな(笑)
——今回の対談は、どんな話から始めたんですか?
hf カール・マルクスの「Religion is the opium of the people」つまり「宗教は民衆のアヘンだ」という有名な言葉があって。それをもじって斎藤さんは「SDGsは民衆のアヘンだ」と。同じ頃に僕らも「Opium of the people」というTシャツを出していたので、その話とかです。
——SDGsはアヘン……なるほど。
hf SDGsって言うだけで、いいことをしているような気持ち良さを感じるという。
——思考停止になって。なにか許される言い訳になってしまったら残念ですね。
hf そんなことじゃ生ぬるいから意味ない、というのがこの人の意見で。それは確かに、と思います。
——じゃあ、第2弾ですね。

7月11日——昔のジージャンと、ウォーホルの包丁

——このオークション、すごかったですね。
hf 1,100万円。
——何も知らないので、なぜこのジージャンがこんなに高いの?ってなりました。
hf 昔のデニムとかって人気なんです。ずっと古着って高いんだけど、今は特に「この年代のこれ」という的確なモデルが幾つかあって。
——それを、持っていたと。
hf 30年くらい前に買って、取っていた。
——なんか草彅君とかが持っていそうな。
hf そうそう、そういうやつ。
——30年前に買った時は、ここまで人気じゃなかった?
hf でも10万、20万はしていたと思います。
——親孝行なジージャンですね。

 

——では、この包丁とウォーホルの関係についてもお願いします。

hf 赤坂のイタリアンに連れて行ってもらったんですけど。包丁が、磁石みたいなもので壁にくっつけてあったんです。その様子とまるっきり同じような、ウォーホルの絵があるんです。写真を撮ってアップしたら、1人だけ友だちから「ウォーホルですね」って的確に返ってきて。すごいな、この人と思った。
——「ウォーホル、ナイフ」で検索……これですね! 確かにそっくり。

7月21日——ベースボールバットと、授業のはじまり

——これはなんですか?
hf LAの友達がやってるスポーツブランドのバットが、送られてきたんだけど。
——なぜ藤原さんにバットを送ってきたんですか? 野球やらないですよね?
hf やらないですけど。昔のヒップホップの歌詞で、「ジャンキーがベースボールバットを持って歩いている」みたいな歌詞を書いたんです。だからきっとそれを知ってて、歌詞に被せているんだと思います。「ドブネズミが前の部屋にいて、ゴキブリが後ろを歩き回って、ジャンキーがベースボールバットを持って歩いている」。
——ハードな風景。話は変わりますが、藤原さん、授業をされるんですか?
hf はい。オープンキャンパスの、ちょっとした授業。
——最初は東大でですか? これはどういう?
hf そもそも「メンズノンノ」の連載をずっとやっていたんです。それをなにかの形で本にまとめようというふうになって、ならば授業をやって、それを本にするというのは面白いんじゃないって。
——最終的に本になるんですね。授業は遅刻厳禁で!

 

藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。fragment design名義でファッションをはじめさまざまなジャンルのクリエイティブ・ディレクションを行い、ストリートカルチャーに多大な影響を与えている。