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手づくり納豆で、菌を育ててみよう!——小倉ヒラク(発酵デザイナー)【おうちでワークショップ】06

発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開する発酵デザイナーの小倉ヒラクさんによるワークショップは、お家でできる「納豆づくり」です。自宅ですごす子どもたちのために、さまざまな分野の専門家が研究や活動、考え方のおもしろさを伝えてくれるシリーズ企画【おうちでワークショップ】の第6回。

workshop by Hiraku Ogura
illustration (top) by fancomi

こんにちは、小倉ヒラクです。僕は発酵の専門家として、いろんな発酵食品の手づくりの仕方をみんなに教えています。だんだん暖かくなって発酵菌たちが元気になるこの時期、学校では教えてくれない発酵のテクニックをおうちで勉強してみよう。

納豆をつくると菌のことがわかる!

今回僕がみんなに提案するのは、納豆づくり!

君はきっと納豆大好きだよね。あの何ともいえない香り、味、ネバネバ……。納豆の美味しさは、実は納豆菌という、目に見えない小さな小さな菌たちがつくっている。そいつらがどんな風に働いていくのか。きっと僕が言葉で説明しても想像つかないと思う。だから自分で納豆をつくって、納豆菌たちを育てて観察してみよう!

【納豆のつくりかた】

材料:
乾燥大豆100g 
納豆1パック(30-40g)

① 大豆をお鍋で3〜4時間煮てやわらかくする。
② 大豆を鍋からあげてジップロックに入れ、納豆1パックを入れてよく混ぜる
③ ジップロックにしっかり封をして、お湯を入れた魔法瓶のなかに浮かべる(※ジップロックに水が入らないようきっちり封をする。空気は抜かない)
④ 一日に三回、8時間おきにお湯を熱いものに変える(※この時ジップロックを出して封を開け、納豆を観察する)
⑤ 2日間魔法瓶で大豆を暖め続けたら、納豆のできあがり!

納豆菌はどうはたらく?

それでは二日間のあいだ、発酵菌が何をしているのか説明しよう。

納豆菌は大豆のなかにある糖分やたんぱく質を食べるのが大好き。そして納豆菌が元気になるには、普通の部屋の温度よりもうちょっとあったかい、40〜45°くらいの温度。

最初に大豆を煮るのは、大豆の栄養ぶんをやわらかく、納豆菌が食べやすくするため。そしてできあがった納豆を混ぜるのは、納豆菌を大豆のなかに引っ越しさせるためだ。

魔法瓶であたためるのは、納豆菌を元気にするため。やわらかい大豆(エサ)とあったかい温度(元気になる条件)が揃うと、納豆菌たちはどんどん大豆を食べて子どもをつくり、どんどん増えていく。そのスピードはものすごくて、一日に1億倍くらいまで増えることも。1億倍って、数字で書くと、

100,000,000倍!

納豆菌が糖分やたんぱく質を食べると、大豆はネバネバになっていく。そしてあの不思議なにおい、味ができてくる。これは納豆菌が大豆の栄養ぶんをバラバラにしてしまう〈分解〉という働きのおかげだ。納豆菌が食べた大豆を、さらに人間の僕らが食べる。納豆菌の食べ残しは、なぜかもとの大豆より美味しい。

こういうふしぎな力を持つ菌を「発酵菌」と呼んで、僕たちのおじいちゃんやおばあちゃんたちは大事にしてきた。お味噌汁やチーズ、パンも納豆菌とは違う働きをもつ「発酵菌」の仲間たちによっておいしくなった食べ物たちだ。

さあ自分で育てた納豆を食べてみよう。ふだん食べているものと全然ちがう味がするはずだ。豆の味がしっかりしてホクホクだし、小さな菌たちの「めしあがれ!」という声が聞こえるかもしれないよ。

profile

小倉ヒラク|Hiraku Ogura
発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。