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大好きなおもちゃで静物画を描こう——今井 麗(画家)【おうちでワークショップ】05

画家の今井麗さんの絵によく登場する、怪獣ダダの人形や、クマやコアラのぬいぐるみ。好きなおもちゃを並べて描く静物画の楽しさを教えてくれました。自宅ですごす子どもたちのために、さまざまな分野の専門家が研究や活動、考え方のおもしろさを伝えてくれるシリーズ企画【おうちでワークショップ】の第5回。

workshop by Ulala Imai
text by Yuka Uchida
illustration (top) by fancomi

① 好きなおもちゃや身の回りの道具を集めよう

絵の中に登場させるおもちゃを選びます。そのほかに、コップやスプーンなど、家の中にある気になるものを集めます。私は台所が好きなので、台所から探しました。冷蔵庫にある野菜や果物、調味料もおすすめです。できるだけ無関係なものを集めるようにすると、物語をつくるのが楽しくなります。そして、ツルツルしているもの、ザラザラしているもの、ピカピカしてまわりのものが映り込むものや、透明なものなど、いろいろな質感を選ぶと、あとで絵を描くときに楽しくなります。

② 映画監督になった気分で、集めたものを並べてみよう

どんな物語にするか考えながら、集めたものを並べてみます。映画監督になりきって、映画のワンシーンをつくるイメージです。私は「まだ見ぬ惑星への逃避行」というシーンにしました。台所という楽園の星に不時着した宇宙人が主人公です。ステンレスやプラスチックなど、微生物が分解できない素材を選ぶと、宇宙っぽくなるかもしれないと思い、組み合わせてみました。

③ 何度も繰り返し、組み立ててみる

これだ!という配置が決まるまで、何度も何度も組み立て直します。そして、構図を決めるために写真を撮ります。下から撮ったり、斜めから撮ったり、いろいろな角度から眺めてみます。また、このときに光の向きを意識するのも大切です。太陽が射す窓辺で組み立てるのか、蛍光灯の光の下で組み立てるのか、物語にぴったりの光を探してみましょう。私は台所の蛍光灯の光が好きです。光が落ちる場所に、反射するものを置いてみるのも面白いです。

④ 写真をよく見ながら絵を描く

写真が撮れたら、それを見ながら絵を描きます。写真に撮らずに、目の前にあるセットを見ながら描いても構いません。私が写真に撮る理由は、家族と暮らしているので、絵が完成するまでの間、台所にセットを残しておくわけにはいかないからです。絵を描くときは、モチーフの形や色だけではなく、影や光の反射もよく見て描きます。ステンレスの冷たくて硬い感じ、ジャガイモの土っぽくて温かい感じなど、マテリアルの質感を描き分けてみましょう。すると、絵に奥行きが生まれます。画材は好きなものを。私は油絵具を使っています。水彩絵具もいいと思います。

Ulala Imai《PARADISE》 2020, oil on canvas, 455×530mm

静物画の中に自分だけの物語を作る

私は西洋絵画が好きです。中でも大好きなエドゥアール・マネは、19世紀のフランスで活躍した画家です。彼は、白いアスパラガスを描いた有名な作品を残しています。

静物画というと、動かないものが台の上に並んだだけの退屈な絵と思う人もいるかもしれません。でも、モチーフを選び、並べ方や光の当て方を考え、構図を練って、それを自分の手で描く面白さがあります。そうやって、自分だけの作品が生まれるのです。

忙しい毎日を送っていた私たちは、急にお家の中で過ごす時間がたくさんできました。この時間を使って、大好きなおもちゃを手に、お家の中のいろいろな場所に行ってみましょう。台所でも、ピアノの上でも、お庭の中でもいいです。そこで作った物語を絵にしたら、今度はお家の中に飾ってみましょう。きっとその絵は、生活を明るく照らしてくれるはずです。

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1/3Ulala Imai《Cooking in 3min》 2018, oil on canvas, 606×727mm
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2/3Ulala Imai《ROUTE 7》2018, oil on canvas, 606×727mm
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3/3Ulala Imai《Mr.ROUND TOP BREAD》2015, oil on canvas, 530×652mm
profile

今井 麗|Ulala Imai
1982年神奈川県生まれ。画家。2009年多摩美術大学大学院美術研究科博士課程満期退学。 2012年シェル美術賞の本江邦夫審査員奨励賞受賞。国内外で展示をしながら、装丁や広告の仕事も手掛ける。4月はイギリスの〈union pacific〉でギャラリービューイング展示を開催。6月末には恵比寿の〈nidi gallery〉にて個展を開催予定。