デートでも、ビジネス利用でも、気の置けない仲間との会食でも。今宵、お酒と酒肴(蕎麦前)を嗜み、蕎麦で〆る……そんな蕎麦屋の粋な作法を実感できる名店3軒をご紹介します。
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❶ 季節の創作料理とお酒、十割蕎麦を満喫
——蕎麦前 山都(ソバマエ ヤマト)
「蕎麦屋とは思えない、旬の素材を使ったつまみの数々をご用意しています」と店長の渡邊さんが言うように、気の利いた和食店のような酒肴でゲストを出迎えてくれるのが、ここ『蕎麦前 山都』。
豊洲から仕入れた新鮮な食材や、農家直送の野菜を使った天ぷら、春先は獲れたての山菜を盛り込んだ料理が並ぶ。食材の産地が明記された、その日のおすすめメニューも要チェックだ。蕎麦前の料理と一緒に飲みたいお酒は、日本各地の日本酒や焼酎、サワー、シャンパン、ワインなど幅広く網羅。「今後は、日本のワインにも力を入れていきたいですね」と店長。
〆は、ブレンドの蕎麦粉を使った十割蕎麦で。細めで喉越しのいい蕎麦は、打ち立てで供される。名物のつけ蕎麦は数種類を用意。中でも「濃厚胡麻つけ蕎麦」は、まろやかな胡麻だれが蕎麦とよく合い、クセになりそうな美味しさだ。
TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
PHOTO BY SHO KATO(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
❷ 古に思いを馳せ、呑み、蕎麦を手繰る
——大坂屋虎ノ門砂場(オオサカヤトラノモンスナバ)
明治5年(1872年)から脈々とその歴史を刻んできた東京屈指の老舗。佇まいからも、刻まれてきた長い年月を窺い知ることが出来る無二の蕎麦店だ。中高年男性の特権的存在だったここに、最近若いカップルや女性のひとり客など、これまでにない層が訪れるようになった。きっかけはもちろん、「虎ノ門ヒルズ」の開業。ワーカーたちにもその価値は再認識されつつあるようだ。
『砂場』という屋号は、大阪に端を発する。大阪城築城の際、資材としての“砂”を置いていた場所に、多くの蕎麦店が集まり大変に繁盛した、という史実に由来すると言われている。その後江戸幕府の始まりと共に現在の麹町へ移転、その暖簾分けとして『大坂屋虎ノ門砂場』が誕生した。
人気を博す理由は、往時から変わっていない。今となっては、定番から新作まで30を優に超える様々な肴で酒を愉しみ、〆は『砂場』系独特の繊細な蕎麦を食す。蕎麦のほか、丼物も様々。アイドルタイムのない通し営業ゆえ、遅めのランチ、仕事が早く終わったあとの早飲み……など、シチュエーションに応じて使い分けが出来る、都会のオアシスだ。
TEXT BY KAZUHIDE TAIRA
PHOTO BY SHO KATO(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
❸ 各地の地酒と美食を楽しみ、二八蕎麦で〆る
——青山 川上庵(アオヤマ カワカミアン)
江戸時代、仕事帰りに蕎麦屋に立ち寄り、料理をつまみながらお酒を飲んで蕎麦で〆る……そんな江戸の粋を現代に継承しているのがここ『川上庵』だ。
まず蕎麦の前に楽しみたい料理は、鴨たたきなど定番に加え、半熟うまきや、レンコンと海老のはさみ揚げなど、自由な発想で従来の和食にアレンジを加えたものが揃う。お酒も日本酒や焼酎の蕎麦屋の定番に加え、スパークリングや赤、白ワインが豊富に揃い、ゆったりとグラスを傾けつつ、語らい寛ぐことができる。
『川上庵』で供されるのは二八蕎麦。信州産をはじめ国内外からその時々で状態のいいものを仕入れ、自社の製麺所で毎日使う分だけを挽く。そして粗挽きの蕎麦粉と水で蕎麦を打ち、細めに切って提供している。つゆは醤油ベースで、本枯れ節と北海道の真昆布で出汁をとった、江戸前のきりりとした味わい。天せいろほか、冷たい蕎麦と温かい蕎麦のメニューも豊富だ。
TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
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