長く営む人気レストランには、ゲストがそれを目指していく、伝説のひと皿がある。歴史と技術が育んだシェフ渾身のシグネチャーメニュー。ここではそんな、東京を代表する味をレシピと共にご紹介します。食べないなんてもったいない、感動必至のひと皿を。
TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 必ずもう一度食べたくなる魅惑のカルボナーラ
——RISTORANTE HONDA(リストランテ ホンダ)
大きめにカットしたパンチェッタが入ったカルボナーラ。その概念を覆すほどさっぱりとしていて美味。再訪必至の味わい。
パンチェッタ24gにゆっくりと火を入れ、無駄な油を捨てる。無塩バター20gを入れ、少し香りが出た後に白ワインを少々入れる。アルコールが飛んだら水を少々入れる。
アルデンテに茹でたパスタ80g(乾燥スパゲッティーニ1.9ミリ)をフライパンに投入し、良く混ぜてバターを絡める。
全卵1個+卵黄1個、パルミジャーノレッジャーノ16g、黒胡椒をホイッパーでチーズがダマにならないよう混ぜ合わせる。フライパンを火から離して卵液を入れ、弱火でとろみがつくまで、フライパンを火にかけたり外したりしながら卵に火を入れつつパスタに絡めていく。とろりとクリーム状になったら出来上がり。
皿にスパゲッティーニをねじりながら盛り付ける。まずパスタで土台を作り、2~3回に分けてピラミッドのように立体的に盛り付ける。
上からパンチェッタを盛り付け、黒胡椒を多めにかける。
1/3シンプルでありながらも高級感漂う内装で、心地良い時間が過ごせる。
2/3北青山にオープンして15年目。ランチ営業もあるので、落ち着いて会食をしたい時にも利用したい。
3/3オーナーシェフの本多哲也さん。フランスとイタリアで修業した後に帰国、2004年に同店をオープン。
ミシュラン1ツ星を11年間維持し続ける北青山の実力店。オーナーシェフの本多哲也さんは、イタリアで修業した伝統的な技法を守りつつ現代的なアレンジも加味。例えば山菜であったり、旬の魚介を取り入れたりと、日本人ならではの料理を提案。味はもちろん、細部までバランスを配慮した盛り付けも美しい。
そんな繊細な感性が光る本多シェフの料理の中でも、根強い支持をされているのが今回紹介するカルボナーラだ。作り方を再現してもらったが、そのプロセスは目を見張るほど、細心の注意が払われている。特に火を入れた後に、卵がスクランブルエッグのように固まってしまわないよう、少しずつ少しずつ鍋を火にかけたり外したりしながら、じっくりととろみをつけていく……生クリームを入れていないのに、スパゲッティーニに絡んだソースは至極柔らかな食感に。塩気の効いたパンチェッタと削りたての黒胡椒がアクセントになった、食欲をそそる逸品だ。
PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
❷ 煮込み料理の神髄を味わえるブッフ ブルギニオン
——LE BOURGUIGNON(ル・ブルギニオン)
黒毛和牛のブッフ ブルギニオン5〜6人前。材料は、和牛ネック1kg、赤ワイン1本、フォンドボー700cc、玉ねぎ1個、にんじん1本、セロリ1本、にんにく4片、A(クローブ2個、スターアニス1個、マール20cc、クレームドカシス20 cc)、バター、はちみつ、※付け合わせ マッシュルーム、インゲン、ベーコン、プティオニオン、ヌイユ(パスタ)。
肉をカットして塩、胡椒をしてフライパンで焼き色をつける。鍋で野菜を炒めフォンドボーと赤ワインを加える。肉を加えて一度沸かし、Aを入れる。弱火で2時間ほど煮込み、煮上がったら肉を取り出す。
煮汁を別の小鍋に移し、ブールマニエで少々煮詰める。煮詰めてからはちみつを加えてコクを出し、ソースとする。
取り出した牛肉は、巻いてあった糸を切って外す。
付け合わせのマッシュルーム、インゲン、プティオニオンとベーコンは、材料別にその材料に適した具合に炒める。
適宜茹でたヌイユ(パスタ)を皿に盛る。
ヌイユの上に牛肉を盛り、炒めておいた付け合わせの野菜とベーコンを、バランスよく盛り付ける。
最後に上から煮詰めて仕上げておいたソースをかける。ベースに赤ワインとフォンドボーをたっぷりと入れることにより、ツヤとコクのあるソースに仕上がる。
1/2西麻布のビル1階にあるが、外にはテラスが、店内にも明るい日差しが入り、リラックスできる雰囲気。
2/2同店をオープンして19年目の菊地美升シェフ。「クラシックをベースに自分なりの解釈とテクニックで、お客様に驚きと楽しさのある料理を提供したいと考えています」と語る。
ブッフ・ブルギニオンとは、仏ブルゴーニュ地方の料理で、牛肉の赤ワイン煮込みのこと。フランスで4年半、ブルゴーニュで1年半、4軒のレストランで修業したオーナーシェフの菊地美升さんは、それ以降も毎年ブルゴーニュに行って、料理やワインについての研鑽を重ねてきた。店名もそれに由来する。
同店のブッフ・ブルギニオンは、肉が柔らかいのに、食感はとてもしっかりとしている。「それはスジが細かく入り込んで、煮込みに適した和牛の首のスジ部分を使っているからなんです」と菊地シェフ。家庭でも作りやすいよう、ここでは「2時間ほど煮込む」と紹介してくれたが、実際に店では、40〜50分煮込んで一旦火から下ろして休ませる、を2~3回繰り返しているという。付け合わせの野菜も全て個別に炒めるなど、手間暇をかけて丁寧に作られたひと皿は、極めて印象的。約20年に渡って常連客たちから愛されてきた理由が分かる。
PHOTO BY SHO KATO(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
LE BOURGUIGNON(ル・ブルギニオン) 住所 東京都港区西麻布3-3-1 電話 03-5772-6244 営業時間 11:30〜15:00(L.O.13:00)/18:00〜23:00(L.O.21:00) 定休日 水曜、第2火曜 ※カード使用可 ※価格は税別
❸ 冷たいパスタと温かいパスタの2種を味わえる至福
——PIATTO KITAMI(ピアット キタミ)
ディナーコースには冷製パスタと温製パスタの双方が出る。写真は、揚げた玉ねぎと桜海老の冷製パスタ。
揚げた玉ねぎと桜海老の冷製パスタ(1人前)には、玉ねぎ20グラムと桜海老20グラムを使用する。
パスタ20グラム(1.4ミリの乾燥スパゲッティーニ)を茹でている間に、強力粉をまぶした玉ねぎを油で揚げる。
揚がった玉ねぎには軽く塩をふる。
同じく強力粉をまぶした桜海老を油で揚げる。
パスタが茹で上がったら、小さなボウルに入れ、氷を入れた大きなボウルの上にのせてさっと冷やす(1分以内)。
パスタを冷やしたらキッチンペーパーに取り、水分を除く。ボウルにパスタを入れ、にんにく、タカの爪、塩、バージンオリーブオイルで味付けをする。
皿の上にパスタを盛り、その上にまず桜海老を盛り、さらに玉ねぎをのせる。上から刻んだイタリアンパセリ少々を振りかける。
この日の温かいパスタは、玉ねぎとうなぎのアラビアータ。玉ねぎの甘みとうなぎのコクが絶妙のパスタ。うなぎは国産を使っている。
1/3ワインは北見シェフが選んだ通好みのものがボトルで ¥4,000から揃う。ワインのセレクトは、コース同様シェフにおまかせという常連客も。
2/3オーナーシェフの北見博幸さん。テーブル10席とカウンター席が、ひとりで切り盛りしていくにはちょうどいいサイズだという。
3/3料理はおまかせコースのみで、ディナーは¥6,580、¥10,000、¥12,000、¥15,000の4種類。
シェフの独創性溢れる絶品パスタが楽しめる『ピアット・キタミ』。ディナーコースでは、冷たいパスタと温かいパスタの2種類を楽しめるのが嬉しい。この日の冷製パスタは、揚げた玉ねぎと桜海老の冷製パスタで、パリパリした玉ねぎや桜海老の食感と、冷たい細めのパスタがよく合うひと皿。季節により異なるが、冷製パスタは、桃やラ・フランス、フルーツトマトを使ったパスタや自家製スモークサーモンのパスタなども提供される。
一方の温かいパスタは、玉ねぎとうなぎのアラビアータ。辛みが効いたトマトソースが、玉ねぎとうなぎに好相性。「健康にもいい玉ねぎをたっぷりと入れるとより美味しくなる」と北見シェフ。温製パスタは、ほかにも、ずわい蟹と蟹ミソを使ったパスタなど、贅沢な食材を使ったものもあり、日々ゲストを唸らせている。
PHOTO BY YUJI YAMAZAKI(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
PIATTO KITAMI ピアット キタミ 住所 東京都港区虎ノ門1-11-13 B1F 電話 03-6457-9927 営業時間 11:30〜L.O.13:00/18:00〜23:00 定休日 日曜、ランチは不定休(日曜は事前のグループ予約、パーティー予約のみ受付可能) ※カード使用可 ※価格は税別
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