WEEKEND TRAVELER

サーフィンするように日常と非日常を行き来する——徳井直生(メディアアーティスト/DJ)

クリエイティブな人たちは、得てして時間の使い方がうまい。なかでも、1日や2日という短期間で、驚くほど効率的に旅をする人は、セルフマネージメントの達人と言えるだろう。そうした賢人たちの行動例から、週末小旅行のアイデアを学ぶシリーズ。今回のゲストは、人工知能と人間が音楽を通じて対話するプロジェクト「AI DJ PROJECT」を手がける徳井直生さん。テクノロジーの世界で開発を続けながら、大のサーフィン好きとしても知られる徳井さんに、海への旅と非日常について聞いた。

TEXT BY SHINYA YASHIRO
PHOTO BY NAO TOKUI

naotokui_sub1
1/7新島でのキャンプ。すぐ近くにサーフィンができる海岸がある。
naotokui_sub2
2/7チリのイースター島にて。サーフポイントの眼の前にも立っていた。
naotokui_sub3
3/7イースター島でサイクリング。起伏が非常に激しく島を横断する道のりはかなりタフ。
naotokui_sub4
4/7ペルーの海岸。1人で旅をしていても、波を待っている間にサーファー同士で仲良くなることも。
naotokui_sub5
5/7ペルー・チカマの宿から海を臨む。海以外は月面のような風景が広がっていた。
naotokui_sub6
6/7ペルーで食べた魚のフライ。いわば、現地の「海の家」だ。
naotokui_sub7
7/7宮崎の海岸で、お気に入りのボードと朝焼けを臨む。

——サーフィンが好きとお聞きしました。仕事で海外に行かれたとき、出張から足を伸ばして海に行かれることも多いのでしょうか。

徳井 2017年は、AI DJ PROJECTとして、フランスのナントやスロベニアのトルボヴリェで公演を行いました。ナントまで行ったときに、サーフィンで有名なビアリッツというリゾートまで行こうとしたのですが、意外と交通の便が悪くて行けなかったんですよ。海外だとスケジュールがタイトになりがちで、レコード屋に行くくらいしかできないことも多いんです。

12年に米国のオースティンでSXSWというイベントに参加したとき、帰りの足でペルーまで行って、世界で一番長く乗れる波として有名なチカマというポイントに行ったことがあります。近いだろうと思って勢いで行ってしまったんですが、飛行機で24時間くらいかかってしまいました(笑)。あとは、仕事とは関係ないですが、昨年チリに2週間滞在してイースター島などを観光しながら、サーフィンしました。

——国内でも、普段からサーフィンされることはありますか?

徳井 そもそも数年前に、都内からサーフィンができる鵠沼まで引っ越したので、毎日のようにサーフィンをしています。国内の行き先で印象深い場所だと、新島でしょうか。サーフィンはもちろん、「WAX」というビーチラウンジがあってDJもできるので、僕にとっては天国なんです。起きたらサーフィンして、キャンプでゆっくり本を読む。あとは友達と一緒にスケーティングをしたり、音楽を聴くようなゆったりした旅が好きです。

新島でのスケーティングの様子。まっすぐな道を進んでいるうちに、サーフィンができる海岸にたどり着く。

——旅行を計画されるときは、常にサーフィンが念頭にあって、波を基準に行き先を選ばれているのでしょうか?

徳井 波の質を一番に考えるタイプのサーファーではないですね。そもそも、それほどうまくないですし……(笑)。もちろんチリもペルーも悪い波ではなかったですが、サーフィンの聖地として知られるハワイには行ったことがないんですよ。サーファーが多い場所に行くのではなく、自分が「外国人」だと感じられるところが好きです。いい意味での孤独感を味わえる場所というか。

——毎日サーフィンをされている徳井さんにとっても、旅先で波に向き合うことは、非日常を楽しむ行為といえるのでしょうか。

徳井 そうですね。チリにまで行くと、波質も風景も違うし、周りで波に乗っている人たちの印象も違いますから。ペルーでは地元の子供達がぼろぼろのサーフボードに乗っていて、その全員が右足を前に出すグーフィーフッターだったのが印象的でした(南極からのうねりの影響でサーフポイントのほとんどがグーフィー向けのレフトの波なので)。ただ、やることは日常と同じなんですよ。周りのサーファーに気を使いながら、波を待ち、いい波が来たら立つ。だから、海外でサーフィンしていると、日常と非日常の間に生きているような気持ちになります。

僕の人生観に大きな影響を与えた音楽家のブライアン・イーノによれば、人生も創作活動も一番面白いのは、完璧なコントロールとカオスの中間の状態だそうです。彼はその状態をサーフィンに例えています。つまり、来る波に流されてしまう受け身と、波に乗ろうとする主体性が両立している状態ということですね。それが一番おもしろいと彼が言っていたのが、心に残っています。僕にとっては、日常と非日常のどちらでもない海外でのサーフィンが心地よいのは、彼の言葉が心に残っているからかもしれません。

——日常でも非日常でもない状態ですか。ちょっとサーフィンをしたことがない方には想像しづらいかもしれませんね(笑)。

徳井 もしかしたら、宮崎でのサーフィンを例に挙げると分かりやすいかもしれません。宮崎県のクライアントと2年以上仕事をしているのですが、サーフポイントからそれほど遠くないところにオフィスがあるんです。宮崎空港に着いたら海岸に直行して、仕事の前に少しサーフィンをします。その後、軒先をお借りして、ウェットスーツを乾かしたり……。日常と非日常、つまり仕事と遊びの距離がとても近い。ただの仕事でもなく、ただの遊びでもない、楽しい時間ですよ。

1日目

09:00
東京から飛行機で宮崎空港に到着。
10:00 
クルマで海岸まで行き、サーフィン。
12:00 
オフィスへ向かい、開発を行う。
19:00 
宮崎の街で、食事を楽しむ。
22:00 
ホテルに戻り、就寝する。

2日目

05:30
起床して、海岸に向かい、サーフィン。
09:00
クルマで温泉へ。汗を流して、早めの昼食を食べる。
12:00 
空港に向かい、東京へ。

徳井直生|Nao Tokui
東京大学 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了。工学博士。ソニーコンピュータサイエンス研究所パリ客員研究員などを経て、2009年にQosmoを設立。AIと人の共生による創造性の拡張の可能性を模索している。近作にAIを用いたブライアン・イーノのミュージックビデオの制作など。また、「AI DJプロジェクト」と題し、AIのDJと自分が一曲ずつかけあうスタイルでのDJパフォーマンスを国内外で続けている。ちなみに、サーフィン歴は12年。

RECOMMENDED