知育玩具のパイオニア「ボーネルンド」の取り組みをご紹介する企画の第5弾では、中西みのり副社長にインタビュー。自らの子育てを通して強めたあそびに対する思いやあそび環境づくりの大切さ、今後の展望を語っていただきました。
TEXT BY Kyoko Takahashi
Photo: Courtesy of BørneLund
「子どもにとって、あそびは人生のかけがえのないエッセンス。“ごっこあそび”で対話力や社会性を学ぶなど、あそびを通して、心身共に自立した大人になるために必要なことを習得するのだと思います」と、ボーネルンド副社長を務める中西みのりさん。子ども時代には、食べることや眠ることと同じように、あそぶことが大切——。ボーネルンドが創業から一貫して主張してきたことを、5歳になる娘の子育てを通して、疑いのない事実として確信するようになったと話します。
ボーネルンドが大切にしている「あそび」とは、子ども自身の“やってみたい”から始まる体験のこと。テレビゲームなどスイッチを入れるだけで受動的に物事が進んでいくものでも、また、「やりなさい」と指示されるものでもなく、子どもの能動的かつ自発的な体験を重視しています。
「自分で選んですることだからこそ、生き生きと取り組み集中できるのだと思います。たとえ転んで足を擦りむいて痛い思いをしても、今度はこうしてみよう、と次につなげることができるのではないでしょうか」
大型遊具の輸入から事業を始めたボーネルンドは、現在はあそび道具の提供やあそび環境づくりへと事業を拡大。全てにおいて、子どもの主体性を育むことを重視しています。たとえば、体を使うあそび場では、子どもの好奇心を刺激し、多くのからだの動きを生み出すよう、遊具の機能、配置、ベンチや壁面グラフィックまで考えぬいています。
「『運動が今まで苦手だと思っていた子どもが、ボーネルンドの遊び場では喜んでからだを動かすので驚いた!』という感想をよくいただきます。運動を強制せず、自発的にやりたくなるような工夫をしているからだと思います。『たくさんからだを動かしてあそんだ帰り、車に乗った途端に爆睡しました!』と写真を送ってくださる方もいました(笑)」
安全を理由に公園から遊具が撤去されるなど、日本の子どもたちがあそぶ機会はどんどん減っているとされています。さらに、コロナ禍で外あそびの時間も減少するなか、多様なあそび環境作りと機会の創出により力を入れたいと、中西さんは続けます。
「昔は良かったと懐かしんでも戻ることはできません。専門家とも協力し、時代や環境のニーズに合わせて思いきりあそべる場所や機会を少しでも多く作っていきたいですね。あそびを通して未来を担う子どもたちの健やかな成長に寄与することは、健全な社会を作る一助にもなります。子どもたちが存分にあそべる環境をつくることは、大人の使命ではないでしょうか」
SHARE