TWO WAYS TO EAT “UNAGI”

“地焼き”か “蒸し焼き”か? 夏バテ知らずの鰻対決!

やってきました!7月30日は「土用の丑の日」。必食は、夏バテ回避の定番、鰻。今年は、関東風の“蒸し”でいくか、それとも、関西風の“地焼き”でいきますか?

PHOTO BY DAISAKU NISHIMIYA (NDPP.)
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地焼き

パリッとした皮の食感と香ばしさ、肉厚の身とのハーモニーを楽しむ——鰻處 黒長堂

「上 鰻重」¥7,700。地焼きされた国産鰻1.5尾分が贅沢に供される。『黒長堂』では極太でありながら、皮が薄く、身は柔らかい「新仔(しんこ)」鰻にこだわっている。蒲焼きのタレには三河みりんが使われている。

「鰻巻」¥1,540。卵焼き部分は薄味の出汁で焼かれ、甘さは控えめ。鰻が力強い分、バランスをとっている。大根の鬼おろしといっしょにいただく。

「鰻ざく」¥1,540。鰻ざくも土佐酢と鰹出汁が効いたさっぱりとした味わい。鰻が惜しげもなくたっぷり入っている。

鰻重などと一緒に薬味として出される特製の「生山椒」。特別なレシピでペースト状にされており、その鮮烈な香りやしびれ味でうなぎの旨味がより際立つ。一度は試してみたい味。

蒸さずに焼く「地焼き」の鰻を味わえる名店が、六本木ヒルズ ウェストウォーク5Fにある『鰻處 黒長堂(くろちょうどう)』だ。シックな格子戸の入り口にかかるのれんの文字は漆黒で力強く、『黒長堂』の鰻へのこだわりを表している。

“関西風”ともいわれる地焼きは、腹開きした活き鰻をそのまま炭火で焼く。余分な脂が炭火に落ち、その燻煙で皮が燻され、パリッとした食感と香ばしさが生まれる。身は焼き縮むが、その分旨味が凝縮され、噛むほどに滋味溢れる味わいとなる。鰻が持つ力強い味わいを楽しみたいなら地焼きがおすすめだ。ただ、地焼きの場合、細い鰻では焼き負けしてしまう。『黒長堂』では鹿児島などの国産鰻から極太を厳選している。また「新仔」にこだわるのも特徴だ。「新仔」とは養殖場でほかの鰻よりも早く大きく育ち、1年以内に出荷される希少な鰻を指す。早熟で大きくなっているため、身は柔らかいままで、皮も薄い。『黒長堂』のうなぎのパリッとした皮の食感と柔らかな肉厚の旨味は、「新仔」だから出せるものだそうだ。

また、ここでは鰻の味わいを受け止めるご飯と薬味の生山椒も隠れた主役。ご飯は炊いた後、せいろで蒸している。福岡県の柳川せいろ蒸しは有名だが、ご飯はそれと同じようにしている。蒸されたことでふっくらとしたご飯が、最後まで冷めることなく楽しめる。生山椒は特別なレシピでペースト状にしたもの。山椒の鮮烈さをフレッシュな状態で味わえる。力強い鰻とも相性は抜群で、この生山椒のファンも多いという。地焼きの美味しさを知りたいのなら白焼きもお薦め。スタミナをつけたい夏本番、東京では珍しい地焼きの鰻を『黒長堂』で!

鰻處 黒長堂 住所=東京都港区六本木6-10-1 ウェストウォーク5F 電話=03-3478-5445 営業時間=11:00~15:00(L.O.14:00)/17:00~23:00(L.O.22:00) 定休日=無休 QRコード決済、交通系IC決済、各種クレジットカード利用可
 
TEXT BY TAKESHI KONISHI

蒸し焼き

蒲焼の真骨頂「江戸焼」の美技に酔いしれる
——鰻 まえはら

鰻を一本使った「うな重(宝船)」¥5,800。 蒲焼をのせたお米にもこだわりが。専属農家から南魚沼産コシヒカリの八部つきを取り寄せ、少し硬めに炊いている。時間が経っても水っぽさがなく美味しく食べられる工夫だ。

きゅうりと酸味が爽やかな酢の物「うざく」¥2,200。コクのある鰻重の箸休めや、蒲焼きが出てくるまでの酒のアテに欠かせない一品。

黄味が濃い、上質な卵にこだわった「う巻き」¥2,100は、大人から子どもまで大人気。甘みを加えない出汁焼き卵はたっぷり食べても飽きがこない。

「江戸焼」の一番の特徴は、一度焼いて白焼きにし、それを蒸す工程。蒸すことで余計な脂も落ち、ふっくらとした蒲焼きに仕上がる。

蒸して丁寧に骨を取った鰻を炭火で再度焼く。その際、蒸した水分が残っているとタレを壊すため、少し炙り水気をとってタレをつけて焼く。極上の鰻が焼かれていく工程はカウンターからも見える。ライブ感もごちそうだ。

“虎ノ門で鰻”と言えば名前が上がる店のひとつ『鰻 まえはら』。大将の山際幸史さんは、15歳で北海道から上京。京都・丸太町のミシュランガイドの一つ星も獲得した『鰻割烹 まえはら』など錚々たる名店を経た、鰻ひと筋50年の職人だ。多くの店で修業し、研鑽を積んで辿りついたのが「江戸焼」した蒲焼だ。これは直接焼き上げる「地焼」に対し、「江戸焼」は背開きにした鰻を一度白焼きし、蒸し上げた後、さらに焼くという大変手間のかかる手法だ。

色付けの段階ではやわらかい火で焼き、しかも最近の鰻は早生でひと昔前より骨がしっかりしているため、小骨が口に残る。そのため丁寧な「骨取り」が大切な工程となる。熟練した焼きと共に重要なタレは、香り高い蒲焼に欠かせない。伝統を引き継ぐタレの妙味は、暖簾同様、店の顔。こちらのタレは蒸しによってふんわりした焼き上がりに合わせてややマイルドだ。旨味の出るもの、照りの出るものと2種類のみりんをはじめ、濃口と甘露と、しょうゆも2種類を使って作る。砂糖は高価な氷砂糖を用いるが、これは普通の砂糖に比べ、冷めても美味しいため、テイクアウト需要が多いうな重への真摯な心配りと言えよう。

場所柄、接待なども多い。メニューはこだわりの南魚沼産のご飯と取り合わせた「鰻重」のほか、「鰻のハム」「鰻巻き」「うざく」など鰻を使った酒肴やお酒の種類も充実。またオリジナリティ豊かな「鰻のしゃぶしゃぶ」や女性に人気の「すっぽん鍋」なども。メニューが豊富なのでビジネスパーソンや休日のプライベート利用が多いのもうなずける。赤々と染まる炭火で主人が蒲焼きを焼く風景もごちそう。夏を乗り切る英気を美味しく養おうではないか。

鰻 まえはら 住所=東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー 3F 電話=03-6550-9557 営業時間=11:30~21:00 定休日=日曜(臨時休業などあり) ※各種クレジットカード利用可
 
TEXT BY AKIRA TANAKA

※2023年7月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。