気温が低下し、空気が乾燥する東京の冬。そんな季節だからこそ美味しいコーヒーがきっとあるはず。表参道にある「KOFFEE MAMEYA」のバリスタ・三木隆真さんに、東京の冬に合うコーヒーと、バレンタインに向けて〈チョコレートに合うコーヒー豆の選び方〉を教えてもらった。
TEXT BY MIHO MATSUDA
PHOTO BY KOICHI TANOUE
コーヒーのトレンドは、ホーム・ブリューイングへ
まずは、コーヒー界全体のトレンドから。2015年を中心に吹き荒れた「サードウェーブ」旋風も、最近では落ち着きを見せているが、次なるコーヒーの流行とは?
「サードウェーブコーヒーの流行で、農園の名前を出したシングルオリジンの豆を、産地特性を生かし浅煎りにして提供するカフェが増えました。その影響もあって、日本でも手軽にいい豆が手に入る環境になり、家で楽しむ人が増えたのですが、一方で『コーヒーは難しい』という声もあります。コーヒーが一過性のブームでなく日本に根付くには、生活に美味しいコーヒーがあることが重要です。だからいまコーヒー業界は、ホーム・ブリューイングに力を入れているのですが、豆選びや抽出など、美味しい一杯にたどり着くにはいくつも工程があります。
そこで、僕らは抽出のプロとして、好みの味の豆をご紹介する対話型のKOFFEE MAMEYAを始めました。ここでは、農園や焙煎士さんの考え方や、豆に合った淹れ方もお伝えしています」
では、ホーム・ブリューイングの第一歩、〈東京の冬に美味しく感じる豆の選び方〉を教えてもらおう。
東京の冬に、甘みのある深煎りのコーヒー
KOFFEE MAMEYAでは、国内外の様々なロースターの豆を取り扱う。さらに、浅煎り、深煎り、口当たりも様々。その中から、東京の冬に合うおすすめのコーヒーは?
「夏はフレッシュな浅煎りを求めるお客さんが多いのですが、気温が下がってくるにつれ、煎りが深い豆を求める方が増えてきます。深煎りの豆といえば、日本には喫茶店があります。読書したりタバコを吸ったりしながら、一杯のコーヒーをゆっくり飲む。そんな風に、深煎りのコーヒーが東京の冬に合うのではないでしょうか」
ちなみに、浅煎りと深煎りの違いとは?
「コーヒー豆は、もともとフルーツの種子なので酸味があります。それを生かして浅煎りにすれば、産地の個性が引き立つ酸味のあるコーヒーになりますが、さらに煎って、コーヒー豆の糖分をキャラメライズすると酸味よりも甘みが増します。しかし、ある一点を越えると豆の個性よりも炭化した苦味が上回ってくるんです。かつて、日本でいい豆が手に入りにくい時代は、深く煎った苦味で味をカバーすることがありました。でも、今は甘みを残した美味しい深煎りがあるので、浅煎り好きの方もぜひお試しください」
チョコレートには、ベリー系のフルーティなコーヒーを
2月になるとバレンタインの季節。チョコレートに合わせるとしたら、どんなコーヒーを選んだらいいのだろうか?
「もともとコーヒーとチョコレートの相性はいいので、チョコレートの風味をもつコーヒーを合わせても面白くありません。今年はフルーティなフレーバーチョコも多いので、ストロベリーやブルーベリーの風味を感じるフルーティなコーヒーを合わせてみてはいかがでしょうか」
おすすめは浅煎りの「モアドコフェ(エチオピア)」と、中深煎りの「ハイレセラシュ(エチオピア)」。豆を挽くと、チーズのようなコクのある香りが漂う。
「どちらも精製方法が〈ナチュラル〉。コーヒーの果肉がついたまま豆を乾燥させているので、独特の風味があります。フレーバーチョコレートだけでなく、ビーントゥバーのチョコレートと合わせても楽しいと思います」
虎ノ門コーヒーでは、シングルオリジンのラテに注目!
KOFFEE MAMEYAのコーヒーは、虎ノ門ヒルズの「虎ノ門コーヒー」でも味わうことができる。中でも注目は、シングルオリジンのラテ。
「KOFFEE MAMEYAではブラックのみですが、虎ノ門コーヒーではミルクを使ったメニューがあります。ブレンドがベースのラテと、シングルオリジンのラテがありますが、豆の個性によって、紅茶のような口当たりになったり、厚みがあるクリームのような食感になったりと味わいも様々です」
スペシャルティコーヒーを、ラテにして味わう贅沢。ぜひこちらもチェックしよう。
三木隆真|Takamasa Miki
2012年に嗜好品研究所に入社。OMOTESANDO KOFFEEなどのヘッドバリスタを経て、2017年よりKOFFEE MAMEYAのヘッドバリスタを務める。
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