ミシュラン星付き店から独立した料理人がオープンした店、フランスで長く研鑽を積んだ若きシェフが営むレストラン……。ここでは、数多あるフレンチレストランの中でも、これからの進化と躍進が楽しみな、新進気鋭のガストロノミー2店をご紹介します。
PHOTO BY KAZUO KIKUCHI
EDIT BY TM evolution.Inc.
❶ 選りすぐりのシャンパンと、絵画のようなひと皿に酔いしれる
——Champagne Restaurant L’ orgueil(オルグイユ)
南青山の住宅街にある『オルグイユ』は、若きオーナーシェフ・加瀬史也さんが開いた隠れ家的フレンチレストラン。加瀬さんはフランスのシャンパーニュ地方『ミッシェル ゲラール』、南西地方の『ル グレイエール』と、ふたつの2ツ星レストランで修業をした後に帰国、その後、都内の3つ星レストラン『カンテサンス』で研鑽を積んだ後、31歳という若さで同店を開いた。開店直後にミシュラン1ツ星を獲得したという、今注目の若手シェフだ。
シェフがシャンパーニュ地方で修業した貴重な経験から、都内でも珍しく、料理とシャンパーニュのペアリングを提案している。料理は昼夜共におまかせコースのみで、それに合わせたシャンパーニュ3種、4種という、ふたつのペアリングセットを用意。食材や料理の味付けに合わせ、プロが選んだ1杯を試せるのは、素晴らしく贅沢な愉しみだ。しかも大手の有名銘柄だけではなく、家族経営や小規模ワイナリーのものを中心に約100種類をリストオンしているので、仮にシャンパーニュ通のお客様でもまた新たな発見があるという。料理だけではなく、デセールにはデセール用ワインを合わせてくれるなど、愉しみは最後まで続く。
料理はフランスで修業をした基本を大切に、日本ならではの食材も使い、全世界から食材が集まる東京の利点を生かした料理を心がけている。提供する直前に作るのはもちろんのこと、「お客様の飲んでいるものを見て、それに合わせソースを若干アレンジすることもあります。だから、ひとりでやるにはこの10席がちょうどいいんです」とシェフ。
例えば、写真のフォアグラのテリーヌは、鶏や鴨で有名なランド地方のフォアグラを低温でコンフィにしてからテリーヌに。白いソースはイタリアの水牛のブルーチーズにカンボジア産の胡椒を加えたもの。バターナッツかぼちゃは、バニラ風味のピューレ、網焼きにフリットと、食感に違いを出すため3種類の調理法を使い分ける。複数の星付き店で培った技術に若い感性が加わった料理。そしてシャンパーニュのペアリングという誘惑を、この秋是非愉しんでほしい。
TEXT BY YOSHIKO ENDO
❷ 素材にとことんこだわった本格派のフレンチをカジュアルに
——Pirouette(ピルエット)
虎ノ門ヒルズの『Pirouette』で、シェフを務める小林直矢さん。南仏のミシュラン2ツ星レストラン『オステルリー・ジェロンム』、パリの新進気鋭のレストラン『GARANCE』で修業を積んできた。
そんな小林シェフが目指しているのは、カジュアルだけれども味は本格的という「ビストロノミー(ビストロ+ガストロノミー)」だ。「僕は、ニンジンならニンジン、ジャガイモならジャガイモと、食べてすぐその食材がわかる料理が好きなんです。ここでは、手をかけ過ぎずに食材そのものの味わいを引き出す料理を、気軽な雰囲気で楽しんでいただきたい」。その言葉を裏付けるように、食材は生産者の元にまで出向いて厳選。小林シェフが納得した素材を主役にした個性的なひと皿は、「どんな味が広がるのだろう?」と食べ手を料理に引き込む。
店内は、レストランとカフェに分かれており、メニューも異なるが、どちらにもオープンキッチンに面したカウンター席がある。調理の様子を五感で体験しても良し、スタッフとのコミュニケーションを楽しんでも良し。素材と向き合い、それをひと皿にのせていく小林シェフの技も、料理と共に味わいたい。
TEXT BY REIKO HISASHIMA
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