鮮度抜群の日本の魚介を、異国風な味のアプローチで引き立てる。 ニッポンの食材を再発見する今月の“ひと皿”は、アークヒルズ仙石山森タワーの「HALE海's」の宮島シェフによる〈マダイ〉を使った無国籍料理の逸品です。
PHOTO BY Takahiro Imashimizu
edit & text by Jun Okamoto
和食をベースに、独創的な味のアプローチ
《生うにを乗せた銚子産マダイの刺身 七味と梅風味の塩ポン酢ソース》
HALE海’sのオリジナルで、創業以来のシグネチャーメニュー。魚の扱いに優れた宮島シェフがひいた繊細な刺身に、爽やかなハーブや梅肉、鰹節、様々な香りを振りまく七味などで多層的な風味を加えることでより立体的な料理に。上に乗せたうにもソースのひとつととらえている。まったりと濃厚なうにの旨味がすべての要素を上手にまとめてくれる。季節によって使う魚の種類は変わるが、白身で柔らかい身の魚を使うのが定番。
今日のために厳選された旬の食材は?
紀州産の大ぶりの梅は皮が薄く、種が小さく身が厚い。その梅を使った梅干し。酸味が柔らかく、塩気も程よく梅の爽やかな香りがいい。
上質と言われる北海道産のうに。一般的な旬は初夏から夏と言われている。仕入れによって産地は変わるが、この日は北海道・礼文島産。
北海道から九州まで水揚げされる真鯛。主な産地は瀬戸内海、日本海、房総などで、この日は銚子産の大ぶりのものが築地から。
料理をひきたてるおすすめワインは?
白身の魚によく合うバランスのいい酸とすっきりキレがいい味わいのチリのワイン。飲み心地もとてもいい。エラスリス エステイト ソーヴィニョン・ブラン。ボトル4,200円。
和食出身の繊細な手当で魚を生かし
アイデアを加えて冒険的なひと皿に
宮島シェフの経歴はなかなかにユニーク。実家の鮨屋で魚に囲まれて育ち、父の背中を見て魚の扱いを覚え、大人になると和食の料理人を志した。転機が訪れたのはハワイのトップシェフのひとり、ロイ・ヤマグチ氏率いる「ロイズ」に入店したことから。東京にできた「ロイズ」では、フレンチ、イタリアン、そしてハワイアンのシェフが入り乱れ、異種格闘技並みのキッチンを経験した。
「すぐ隣でイタリアンやフレンチのシェフが料理を作っているので間近でみることができましたし、何より使ったことのない食材に触れる機会を持てて引き出しが増えました」と宮島シェフ。ここで料理人としてひとまわり大きく育ち、「HALE海’s」をオープン。たちまち人気店に押し上げた。
刺身からステーキ、パスタなどジャンルにとらわれないHALE海’sでは、多くの国産食材を使うが、とくに魚へのこだわりは強い。鮮度抜群の日本の魚介と独創的な味のアプローチは他では味わえない世界観がある。梅干しや鰹節、七味など、日本でおなじみの調味料を使っていてもどこか異国風のニュアンスが漂い、それこそが宮島シェフの料理の魅力となっている。
HALE 海’s
独特な響きを持つ店名は、ハワイ語の「HALE=家」と「KAI=海」を合わせた「海の家」を意味することば。ハワイのファインダイニングを思わせる店内はとても開放的。「ロイズ」出身の宮島シェフは、ジャンルにこだわらず“美味しいもの”を追求している。刺身からステーキまで、素材の良さを生かしたアイデアあふれる料理が評判。
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