ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子が、独自の視点で切り込む大人のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは「秋冬のコート&ストール研究」。寒さも本格的になってきたこの季節、“いく子流メソッド”で今年買い足すべきアウターを考えていきましょう。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
コートとの出逢いは真剣勝負の恋
ここ最近ぐっと寒さが増し、そろそろコートが気になる季節になってきました。さて、大人女史の皆様、コートを何枚ぐらいお持ちでしょうか? クローゼットの奥に眠っているものも合わせるとそれなりの数があったりしませんか?
ところがコートは何着持っていても、実際にそのシーズンに着回すのは2、3着程度。そんな経験ありますよね。「昨日と同じ服」なんていう心配の必要もなく、気に入れば毎日着ても許されるのがコート。だからこそコートとは本気で恋に落ちないといけないのです。「いつも同じコートだね」とたとえ言われても、「それが何か? だって好きなんです」って威張れるぐらいでなくてはいけません。
すでにベーシックな1着はお持ちだと思うので、今年買うならトレンチやPコートでも一味違った技ありものの1着と真剣勝負の恋をしてみてはどうでしょうか?
地曳いく子が伝授する
コート&ストール選びの心得
❶ 浮気せずに愛情ある1着を探す
パリやニューヨークのコレクションに行くと、世界の一流ファッション関係者たちは期間中ずっと同じコートを着ている人が意外と多いのです。毎日ちがうコートというのは一部のセレブだけ。もちろん旅先ということもあるかと思いますが、見かける度にあの人だってわかるくらいコートを自分の個性にしているんです。コートに対する認識がそれですっかり変わりました。あれもこれもと浮気心を出すよりステディな一着を着ているほうがずっとかっこいい。このひと冬勝負できる愛着ある1着を探すことこそ大切なのです。
❷ コートはシェル(殻)と考えるべし
「このコートにはどんな服がいいでしょうか?」とよく聞かれることが多いのですが、コートを買うときに合わせる服のことなんて考える必要はありません。コートは一番外の殻ですから。寒い冬に前を開けておしゃれに羽織るなんて実際はほとんどしません。コートは単体でスタイルが完成するものと(私は)思っています。ほぼ毎日お付き合いするものなので、どれだけそのコートと恋に落ちることができるかのほうが大事。モコモコのピンクファーやラッフル付きのトレンチなど、乙女心を爆発させて好きな気持ち優先で選んでいいのです。
ただしひとつだけ注意を。コートを買うときは、よく履くいつもの靴で行くことを忘れないように。単体でスタイルが完成するとはいえ、靴とのバランスで全体の印象が変わってきますから(もし似合わなければ、靴まで買い替える覚悟で買いましょう)。
❸ 大人女史は素材感やシルエットで差をつける
冬の定番ともいえるダウンジャケットや、依然根強い人気のミリタリー系コート。カジュアルになりがちなコートは、素材やシルエット選びで断然変わってきます。ダウンジャケットもサテン地ならエレガントになりますし、Pコートもロングなシルエットを選べばぐっと大人っぽくなります。
❹ 見た目にはだまされない
コートを「ハンガー面(づら/業界用語ですが)」だけで判断するのは要注意です。ハンガー面がよくても着てみるとしっくりこないことも多いのです。人間関係と一緒で自分にしっくりとくるコートは意外と少ないもの。見た目で恋に落ちても、まずは試着。似合わなければすっぱりと諦めるのも人生肝心。コートは高い買い物ですから。今年の技アリ系コートはハンガー面が思いのほか悪いので、気になったらまずは着てみましょう。思わぬところに出逢いがあるかもしれません。
❺ 大判ストールを賢く使う
秋の肌寒い日のアウター代わりとしても活躍する大判ストールは、凝ったややこしい柄(笑)がおススメ。バイアスに折って使えば、どんな派手な柄を選んでも不思議と馴染みます。それに冬のコートといえばほとんどが単色なので一枚巻けばアクセントにも。ややこしいカオスなスタイルがファッション全体の傾向ですが、私たち一般人の身長だと本当にカオスになってしまうので、ストールぐらいで今年の気分を取り入れるのが丁度いいのです。
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地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超えを誇る。数多くの女優のスタイリングも手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評がある。独特の語り口も魅力で、現在はテレビやラジオでのコメンテーターとしても活躍中。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)など多数。
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