ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子が、独自の視点で切り込む大人のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。秋冬トレンド着こなし第二弾の今回は“ウール”がテーマ。肌寒さとともに秋冬物が本気で欲しくなってきた今、“いく子流メソッド”で今年買うべきウールを見極めていきましょう。
TEXT BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
ウール=一生もの時代よ、さようなら
9月も終わりに近づき、そろそろ“ウール”が恋しい季節がやってきました。着道楽かつ素材フェチだった母に育てられた私は、上質なウールまみれの生活を送っていた影響なのか幼い頃から“ウール(毛物)”好きなんです。こっそりと母のクローゼットに忍び込んでは、カシミアのコートやセーターに触ってうっとりとしていました。そんな一昔前は上質なウールといえば一生ものというイメージ。でも一生ものってどうなのでしょう。例えば10年前に思い切って買ったカシミアのセーター。ベーシックな形だからといっても今年着るとなんとなくやぼったい。春夏トレンドでもお伝えしましたがこれが定番の罠。身幅やボリューム感が時代によって変わってきているから当然なのです。だったらトレンドもので今年(できたら来年も)楽しめれば!ぐらいの買い方をしてもいいのではないでしょうか。ということで、今回はカジュアルに楽しめるウールの数々を集めてみました。その代わり買ったからには今シーズン着倒して元(コスパ)を取ってくださいね(笑)。
地曳いく子が伝授する
ウールアイテムの心得・着かた
❶ 気持ちをあたためるのが今年のウール
現代のウールはカジュアルで薄手が基本。ヒートテック等が出現する以前の“石器時代のウール”は身体をあたためるための防寒着。でも“21世紀のウール”は気持ちをあたためるもっとカジュアルな存在。都会での生活なら、寒さをしのぐためのモコモコセーターや厚手のウールパンツはもはや必要ありません。通勤電車の中やオフィス環境を考えると、ウールが不快になる時も。でもオールコットンでは見た目がどこか寒々しくなってしまいます。要するに「ウールを着る」行為があたたかさ、しいては秋冬らしさを演出するのです。これからの季節、カジュアルなウールを基本に1アイテム取り入れるコーディネイトを心掛けていきましょう。
❷ トレンドを盛るなら色か形のどちらかで
今季気になるレッドやマスタードイエローのキーカラー。取り入れるのならウール素材が大人女史にはおすすめです。赤のスカートもウールなら落ち着いた大人色になるので、この一着だけで派手過ぎずに今年らしさを盛り込めます。逆に、アシンメトリーやスリーブコンシャスなデザイン性高めのものはダークな色味かメンズライクなウール地で。トレンドは色か形のどちらかで取り入れましょう。うっかり両方盛るのはかなり危険。大人に冒険はもう必要ありませんから。
❸ ちょい足しフェミニンが今の気分
カジュアルなウールといっても、やはりそこはウール。他の素材よりは重めになるのは否めません。今季選びたいのはフェミニンなディテール。ジャケットならウエストをきゅっと絞ったもの、ニットならレースディテール、スカートなら大胆なスリット等。ディテール選びで重さが抜けぐっと女らしさがアップします。
❹ 中折れ帽を征してこそおしゃれ上級者
フェルトの中折れ帽は、ストール・マフラーの次にくるウール小物の代表格。この数シーズン、マスキュリンな中折れ帽が流行っていることもあり「どんな服に合わせたらいいのでしょうか」という質問をよく受けるようになりました。ということで、ここで皆様に回答しておきます。帽子使いが上手な人はどんな服にも被っています。帽子上手になりたければ毎日被る、これに尽きます。服を選んでいるうちは、まだ帽子をこなしているとは言えません。帽子に負けています。気に入ったものを手に入れたら、自分の個性にするまで被り続けましょう。
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地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超えを誇る。数多くの女優のスタイリングも手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評がある。独特の語り口も魅力で、現在はテレビやラジオでのコメンテーターとしても活躍中。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)など多数。
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