せっかく迎えた元年も、もうすぐ終わってしまいますが、心の準備はいいですか? 藤原ヒロシさんの秋は、アートと美食に彩られていたようです。1年中ですけどね。彼のInstagramの謎の部分を掘り下げ取材する連載の第36回! 2019年10月から11月前半にポストされた画像からお届けします。
INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY HF WATCHING COMMITTEE (HWC)
10月2日——これ欲しい!
「リュック・タイマンスがこういうの描いているの知らなかったです。静物画とか抽象的なものが多いから」(hf) リュックさんは1958年生まれのベルギーのアーティスト。2000年に東京オペラシティで展覧会をやったり、金沢21世紀美術館にコレクションされていたりする、評価も人気も高い方です。「リンダ・ブレア(映画『エクソシスト』のリーファン少女を演じた女優)を描いているんです」(hf) 彼に限らず、このテーマを描いてる画家は珍しいかと。オークションですか?「そうです。買えませんでしたけど」(hf) いつか買い戻しましょう。
10月2日——パン パン 食パン
「(アントニー・)ゴームリー。「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツでの展覧会です。これ、食パンなんですよ。アミューズメント感のあるすごくいい展覧会(9月21日から12月3日まで)でした。」(hf) 本物の食パンだけど、腐らない加工がしてあるそうです。アミューズメント感とは?「ピンと張った針金をくぐったりとか、筒の中を抜けていくと光が差していたりとか」(hf)ゴームリーさんのは、コンセプチュアルアートの中でもかなりきゃあきゃあ感の強い作品が多いですよね。ところで、Youは何しにロンドンへ?「フリーズ ロンドンっていうアートフェアでモンクレールの立ち上げのエキシビションがあったんです」(hf)
あ。これですね。
「で、サイ・トンブリを観に行ったら“帰れ!”って言われたんです」(hf) え?「A TIME TO GO AWAYって」(hf) あっはっはっは。高尚なギャグについていけなくてごめんなさい。「だから『はーい』って帰ってきました」(hf) サイさんに言われちゃあ、ですよね。
10月6日——本場で007を観る。フルオーケストラと共に
「『フィルム・イン・コンサート』。一生に一度でいいかなって気もしますけど、面白かったです」(hf) フィルム・イン・コンサートってことは、映画も上映するんですね。「ロイヤル・アルバート・ホールで、映画をセリフだけに編集し直して、音楽は全部オーケストラが生演奏するんです。日本でもたまにやっているみたいですね」(hf) あああ、『スターウォーズ』とかやってますよね。「映画をフルで流して、そのBGMが全部オーケストラに変わってる。知ってる映画じゃないとダメかも。気が散っちゃうから」(hf) 迫力ある感じなんですか?「うーん。僕らって4Dの立体的音響に慣れてるから……。クラシックって音が真正面に来るから、迫力っていうことでは‥難しいかなあ」(hf) 微妙ですね。「でも弦の動きとか綺麗だからそういう意味で面白いです。ちょうどこの日はジェームス・ボンドの日だったみたいで、映画は007だったんです」(hf) 1962年10月5日に1作目の『007/ドクター・ノオ』が上映されたっていうことで全世界的にこの日がジェームス・ボンドの日になったようです。何はともあれ、このホールに行きたいって思います。
10月10日——蕪美味しい
美味しいものを「新ばし 星野」でお召し上がり。蕪も大人の味ですか?「蕪が美味しいって子供の時言わなかったでしょう?」(hf) え。蕪は大根よりは子ども寄りな食べ物なんでは。「えー!子どもの時、蕪とか食べないですよ」(hf) 食べますよ……。好きとか嫌いとかっていうよりは印象が薄い野菜なんだと思います。「『蕪、美味しいね』って子どもはいないでしょう。ハンバーグとかウィンナーとかカレーとかが好きなんですよ、子供は」(hf) 美味しいレベルまででは確かになかったかも。というふうに、子どもの心に返って討論しております。「子どもの時、蕪なんか食べたことないもん」(hf) うそうそ、食べてますよ、絶対。今度お母さまの取材させてください。討論は続く。
10月15日——シーラカンスの姿揚げ
すごいお店でこんなことばっか言って。「立ってるんですよ、すごいでしょ」(hf) すごい。この後陸に上がって生活するようになってやがて人類になるわけですね。
10月16日——痩せた野良犬が壁に帰ってきた
おかえりー。なんかちょっと大きくなったような気がしますね。「(この犬に)名前とかつけたほうがいいですかね。ヴィンセントがいいな。『ヴィンセントおかえりとゴーギャンが言う』ってタイトルなんてどうですか?」ある意味まんまですね。
10月20日——アナログマニア
「(ゲルハルト・)リヒターのレコードです」(hf) HF新コレですね。レコード盤なんですね。「正面から撮ってないからちょっとわかりにくかったですか。7インチと12インチはもっとカラフルなんですけど、僕はこれが一番好き」(hf) ちょっと欲しいなあって思わせるのっていいアートピースなんですよね、きっと。「このシリーズなかなかないです。最近全然出てなくて、この前ドイツのすごいマイナーなオークションに出てて」(hf) いいんです。この世に存在してくれているだけで。
10月23日——gen gen anのスムージーがめちゃ美味しい
何度か登場していますね。「そう。渋谷のちょっと入ったところにあります。サリンジャーラテをやったらいいんじゃない?って言ってたところです(6/25参照)。このスムージーが本当に美味しい」(hf)「GENGENAN」のグッズのデザインも相当可愛いです。行かねば。
10月25日——きっと来る
やめてください。声だして笑っちゃいました。「だってこれ、きっと来る、じゃない?」(hf) 貞子ですね。井戸が出てくるのは「リング2」でしたっけ。
京都精華大学ですね。鹿もいるんですね。「多分生徒が描くデッサン用に飼われている鹿です」(hf) いくら授業用でも飼える大学と飼えない大学がありますよね。それにしても精華大、面白い大学です。かつての学長さんが漫画家の竹宮惠子さんで、現学長がマリ共和国出身のウスビ・サコさん。それを聞いただけでも生徒になりたくなりました。叡山電鉄で通学、いいなあ。
10月31日——買ったけど一生食べられないであろう硬さのミカン。ハーゲンダッツの上を行く硬さ
「冷凍ミカンなんですけど凍りすぎてて、プラスチックのフォークが全然刺さらない」(hf) 罰ゲームみたいなことになってますね。「ニホンザルがどうやっても食べられないお菓子もらった、みたいな感じになるんですよ」(hf) わはは。つるんつるん、あれ?って。駅で売ってるのもありますよね。「冷凍ミカンの皮をむいたやつで『むかん』ってやつでしょ」(hf) あ、それそれ。「ネーミングセンスを疑う」(hf) みかんお好きなだけにね。数少ない食べられる果物ですもんね。
11月1日——stranger things! 見た事ないけど
「朔日市参り」(hf) 早朝だったんですね!「『ストレンジャー・シングス』ってアメリカのドラマこんなんじゃないですか?」(hf) 怖い話と一緒にしてはいけません。こちらは五十鈴川ですか?「五十鈴川の朝方」(hf) ちょっと青春っぽくもありますね。
で、朔日餅。「そうです」(hf)
11月5日——ふやけたかっぱえびせん、と思いきや。なんだこの美味しさは
で、お仕事でトリノ、モデナへ。食べるのもお仕事。モデナのレルバ デル レというミシュラン1つ星からお伝えされました。「これめちゃ美味しかった。なんて名前なんだっけなあ。ちょっと待ってね……。(検索中)トスカーナ料理でパッサテッリっていいます。日本では、目白の『トリガッティ』で食べられまず」(hf) パスタですか?「パスタです」(hf) ぶよぶよしてるのが?「ぶよぶよした形のパスタです」(hf) お味は?「パルメジャーノ」(hf) チーズ味なんだ! 日本に初めて外国の文化が入ってきたときってきっとこんな感じだったんでしょうね。いいですね。知らないものがまだまだあるというのは。
11月5日——レモンパスタラブ
これはいつものミラノのレモンパスタですよね。「そう。今回、ミラノは予定にはなかったんだけど、帰りのフライトまで1時間だけあったんで。『じゃあミラノに一瞬寄ろう』ってこれだけ食べに行きました」(hf) どんだけ愛しているんですか。
11月8日——鮑のすき焼きbyくろぎじゅん
すき焼きなら肉も食べるんだ!と思ったらアワビでした。聞いたこともないような世界観です。こんなに驚いているのにヒロシさんにスルーされました。
11月10日——白にケチャップで一日が始まる
ショッキング映像。「はい。着ていた服にケチャップがついちゃった」(hf) こういうこと、ヒロシさんにもあるんですね。取れました?「取れてない」(hf) ええええ。クリーニング屋さんに出せばいいんですよ。「今からでも間に合う? でもいいや。だってケチャップついてても着るもん」(hf) いっそ増やすとか、全体をケチャップ染めにするとかという前向きな考え方もあります。
11月11日——ポッキーの日、らしい。ありがとう
ポッキーの日。1111。さりげなくパッケージって変わってますよね。「EUではMIKADOだからね」(hf) それはいいの?「ね」(hf)
11月11日——読書の秋でもある
古市さんの本。面白かったですか?「この前ご飯食べに行って、あとで送られてきました」(hf) いい方ですね。「面白い人でした」(hf)
11月11日——これ作れる人と結婚する
「最高デザートでした」(hf) そんなに、ですか。「4種類の牛乳でできてるデザートなんです。中はアイスクリームで、上はパウダー。違うミルクでできていて、全部ミルクを使っているんです」(hf) 結婚宣言しちゃいましたね。シンデレラアプローチが始まりますよ。「俺、作れますけど」って人が現れたら結婚するんですか? 言ったからにはしましょうね。
11月12日——カツサンド ビルディング
「韓国で見たビルの壁。カツサンドにしか見えなくて。何を表現したかったんだろう」(hf) カツじゃないですか。「それしてもなんだったんだろう」(hf) ヒロシ大いに悩む。
11月13日——北を向いて鰻を食べる
からの、38度線。「38度線って鰻が有名なんですよ。鰻のバーベキューがいっぱいあって、行ったことがなかったから行ったんです」(hf) 軍事境界線の非武装鰻。「窓の外は鉄条網。軍事境界線でそこから先には入れないんですけど、韓国軍の敷地なんです。もうちょっと向こうが北朝鮮」(hf) イムジン河近いですから鰻も取れるのでしょう。養殖もありで。
11月14日——最強素朴海老フライ
鰻からの急展開。京都の和久傳。こんな美味しいエビフライはないと大絶賛です。「お店ではエビフライって呼んでないと思うんだけどね」(hf) えびのあげたん、ですか。「和久傳、久しぶりに行きました。美味しかったです」(hf)
11月14日——毎朝コカコーラ飲める壺
「アイ・ウェイウェイですよ。僕は彼の最高傑作だと思ってます。《コカコーラのロゴが入った漢王朝の壺》Han Dynasty Urn of Coca Cola Logo。骨董品として価値があるとされているものに資本主義の象徴でもあるコカコーラのロゴを描いて、その価値をなくすっていうのがアイ・ウェイウェイのアートなんだけど、その結果もっと高くなるっていうパロディ」(hf) お部屋に置いてます?「置いてます。コカ・コーラをずっと入れておいて、毎朝すくって飲むっていうのをやりたいんですけど」(hf) やれって言われたら嫌ですって言わせていただきますけどね。
藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。英米で触れたクラブ文化を80年代の日本に持ち込むなど、音楽とファッションの両軸で日本のストリートカルチャーを牽引。現在、デジタルメディア「Ring of Colour」を運営する。京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教授。
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