山菜をはじめ、春の訪れを告げる食材が届き始めるこの季節。料理を盛る器も、春を感じられるものを選びたいものです。料理家の谷尻直子さんが六本木で季節に合わせた器を探すこの連載。今回も料理をぐっと華やかにしてくれる器が見つかりました。
TEXT BY Yuka Uchida
PHOTO BY Kohei Shikama
柔らかな白で春の食材を引き立てる
最初に訪れたのは、デザイン性のある日用品が揃う〈リビング・モティーフ〉。国内外の洗練されたテーブルウェアの中から、谷尻さんが手にしたのは偶然にもすべて白い器。
「frescoのガラスのお皿は透明感が素敵。程よい深さがあって、どんなお料理も引き立ててくれそうです。あとの2つは海外のものですが、日本料理にも合いそう。春の料理は色も楽しみたいので、その意味でもやっぱり白を手にしてしまいますね」
3つのブランドに共通しているのは、和洋どちらのテーブルにもしっくりと馴染むプレーンなデザインであること。加えて、柔らかさのある白が春野菜の瑞々しいグリーンを引き立ててくれそうだ。
日本が誇る磁器の美しさを春の食卓に
続いて向かったのは、リビング・モティーフから徒歩1分のマンションの一室にある有田焼の窯元、深川製磁の六本木店。シークレットアドレスのような、秘密めいた部屋に、直営店ならではのラインナップが揃っている。1894年に創業した深川製磁は、1900年のパリ万博でグランプリを獲得するなど、世界最高レベルの品質を誇る磁器を海外へと発信してきた老舗の窯元。西洋との関わりを持ってきたからこそ見える日本らしさや、海外でも評価されるグローバルなデザインが特徴だ。
「プレゼントにも喜ばれそうですね」と谷尻さんが最初に手にしたのは蓋物。白磁に藍色の絵柄がくっきりと浮かび上がり、爽やかな印象。「白磁の白がきれいなのでお料理も映えそうです」と谷尻さん。富士や松竹梅などめでたいモチーフが描かれた器も多く、春の訪れを祝う、華やかな食卓がつくれそうだ。
今回は六本木五丁目周辺で器巡りを楽しんだ谷尻さん。桜が咲き始めるこの季節、お花見がてら器探しを楽しむのもよさそうだ。
谷尻直子さんの「菜の花と切り干し大根のピリ辛和え」
作り方(2人前)
菜の花 ————————————— 1/2把
切り干し大根 —————————— 15g
鶏ささみ ———————————— 100g
いしる(または醤油)—————— 大さじ1
マヌカハニー(または蜂蜜)——— 大さじ1
ごま油 ———————————— 大さじ1
にんにく ———————————— 1/2片
一味唐辛子(または七味唐辛子)— 少々
白ごま ————————————— 少々
① 菜の花はさっと塩茹でしたらザルに上げて冷水に通し、水気を絞る。鶏ササミは熱湯で茹でる。茹で汁に浸したまま冷ますと、パサパサせずにしっとりとした食感に仕上がる。
② 切り干し大根を水でさっと揉み洗いし、軽く絞って5〜8分ほどそのまま置いておく。水に浸しておかなくてもこれで自然と戻る。水に漬けると栄養分まで流れ出てしまうため、この戻し方がおすすめ。
③ 調味料全てをボウルで良く混ぜ合わせておき、ほぐしたササミ、一口大に切った菜の花と切り干し大根を加えて和える。一味唐辛子は最後に好みの量加えて混ぜる。盛り付けた後に白ごまをひねりながらかけて完成。ごまは粒のままだと消化しにくく、せっかくの栄養分が取り入れられずに排出されてしまうので、“ひねりごま”がおすすめです。
谷尻さんおすすめの調味料はこちら。ごま油は韓国産、いしるは能登、マヌカハニーはニュージーランドのもの。「特にマヌカハニーは殺菌効果があるなど、この季節に重宝しますが、使いこなせないと感じている方も多いのでは。和え物で砂糖の代わりに使うと、加熱もしないので、本来の効果が期待できますよ」
谷尻直子|Naoko Tanijiri
料理家、予約制レストラン「HITOTEMA」主宰。ファッションのスタイリストを経て、現職に転身。幼少期から傾倒してきた食の世界では、自身がベジタリアンだった経験や、8人家族の中で育った経験を生かし、カラダ作りに気を配った献立を提案している。
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