IKUKO’S METHOD

ニューアイコンバッグを探せ!——地曳いく子のおしゃれメソッド110

ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは進化するアイコンバッグです。

STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA

受け継がれるものとアップデートするもの

この1年は、ビッグメゾンをはじめとするブランドのデザイナー交代のニュースが多く飛び交い、モード界にとっては大きな転換期となった年だったのではないでしょうか。そして、この春夏コレクションからは続々と新たなデザイナーやクリエイティブ・ディレクターたちによるデザインが店頭に並びはじめています。デザイナーの交代は大きな話題となりましたが、これまでもムッシュ ディオールが急逝したのちイヴ・サンローランがディオールを引き継いだりと、現在のビッグメゾンと呼ばれるブランドは、デザイナーの新陳代謝を図りながらブランドの核となるDNAを紡いできています。受け継がれるものとアップデートするもの。つまりは伝統と革新とでもいうのでしょうか。その対峙するふたつの考えが共存するからこそ、長い歴史を刻んできたのだと深く感じたのが今シーズンでした。そこで気になったのが、今のデザイナーたちの解釈。中でもアイコニックなバッグにそのアイデアが一番顕著に表れるのでは?と思い、ニューアイコンバッグをテーマに考えてみました。

ジョナサン・アンダーソンによる新作バッグ《ディオール クランチー》。ブランドを象徴する「カナージュ」モチーフをパフっとした立体感のあるキルティングにアレンジ。チェーンを通すアイレット部分がDiorの「o」となっているところなど、ジョナサンらしい遊び心が嬉しくなるデザイン。バッグ¥700,000(ディオール/クリスチャン ディオール/麻布台ヒルズ ガーデンプラザ C 1F

人気の《ディオール ブックトート》を彩るのは愛らしい「デイジー ガーデン」モチーフ。ムッシュ ディオールが愛したガーデンがキュートでフレッシュな印象に。「ディオール メダリオン」の優雅な雰囲気とのコンビネーションもユニーク。ショルダーストラップ付き。バッグ¥540,000(ディオール/クリスチャン ディオール/麻布台ヒルズ ガーデンプラザ C 1F

ヴィンテージ感を感じさせるグッチの新作《グッチ ボルセット》。ボルセットとは、イタリア語でバッグを意味する「ボルサ」と、シグネチャーのホースビットを意味する「モルゼット」を組み合わせた言葉遊びから生まれたネーミング。GGキャンバスと、グリーン・レッド・グリーンのウェブ ストライプも組み合わさり、グッチのアイコンがぎゅっと詰め込まれたコンパクトなボストンバッグ。レザーストラップ付き。バッグ¥396,000(グッチ/六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 1F

ボッテガ・ヴェネタの新クリエイティブ・ディレクター、ルイーズ・トロッターが手がけた新作トートバッグ《バーバラ》。イントレチャートをあしらったボリューミーなボディと、チューブ状のハンドルの繊細さとのバランスの対比が絶妙なデザイン。ジップクロージャーでトップが閉められる実用的な面もあり、仕事にもちょっとした旅行にも活躍します。バッグ¥891,000(ボッテガ・ヴェネタ/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F麻布台ヒルズ ガーデンプラザ B 1F

アクセサリー感覚で持ちたいボッテガ・ヴェネタの《ベイビー ヴェネタ》。イントレチャートで形づくるコロンとしたフォルムがかわいい。美しすぎる工芸品です。バッグ¥478,500(ボッテガ・ヴェネタ/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F麻布台ヒルズ ガーデンプラザ B 1F

映画『プラダを着た悪魔2』にも登場予定のアレッサンドロ・ミケーレによるヴァレンティノ ガラヴァーニの《パンテア》バッグ。新作は、ベージュのナッパレザーとオーストリッチレザーを組み合わせたシェブロン柄のパッチワーク。エナメルとスワロフスキー®で仕上げたパンサーモチーフのパーツがショルダーチェーンのフックとなりインパクトを添える逸品。バッグ¥1,089,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ/ヴァレンティノ/表参道ヒルズ 本館1F、2F

バレンシアガのアイコンバッグから新サイズの《ル・シティ モト ミニ》が登場。よりカジュアルな雰囲気になり、デニムスタイルに合わせたくなるバッグ。取り外し可能なショルダーストラップ付き。バッグ¥264,000※予定価格(バレンシアガ/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F

フロントを開けたままにしたようなくたっとしたデザインが特徴のバレンシアガのニューアイコン的バッグ《ロデオ》。新色はシックなスウェードのブラック。注目したいネオコンサバのスタイルに持ちたい。バッグ¥671,000※予定価格(バレンシアガ/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F

新アーティスティック・ディレクターのマイケル・ライダーによるセリーヌの新アイコンバッグは、あの名作を今の気分へとアップデートした《リトル ラゲージ》。横に広いプロポーションとなった小ぶりなサイズで、より軽やかな印象に。バッグ¥489,500※予定価格(セリーヌ/麻布台ヒルズ ガーデンプラザ B 1F・2F

クロエのアイコニックなバッグ《パディントン》が20周年を記念し、新しいデザインで再登場した昨年。今季の新作は、象徴的なパドロック(南京錠)のサイズはそのままに軽量化されスモールサイズとなってお目見え。バッグ¥349,800(クロエ/表参道ヒルズ 本館1F

バーバリーのアイコン「馬上の騎士」のメタルとオーバルアイレットが象徴的な新作《スモール ライダー バッグ》。しなやかなレザーの風合いとオイル&ワックス仕上げの艶が素敵。取り外し可能なショルダーストラップ付き。クロスボディにしてカジュアルに持っても。バッグ¥397,100※予定価格(バーバリー/六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り 1F

現代アートのような配色と素材の組み合わせがマルニらしい《POD ホーボー スモール》バッグ。ワンショルダーのバッグはデニムスタイルの仕上げに持ちたい。バッグ¥379,500(マルニ/表参道ヒルズ 西館1F

ラフィア調のツートンカラーの波模様が特徴的なマルニの《トラペーズ トップハンドル ミニバッグ》。透明のリングトップハンドルが象徴的な《パニエ バッグ》。色や素材で遊んだマルニのバッグはアクセサリーのように楽しみたい。バッグ右¥149,600、左¥344,300(マルニ/表参道ヒルズ 西館1F

最高級素材でシックにシンプリシティを極めるザ・ロウ。クタっとしたサイドのシルエットが美しい《アグネス》は控えめながらも圧倒的な存在感を放つ逸品。この形だけでザ・ロウと思わせるのはさすが。バッグ¥884,400(ザ・ロウ/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F

クリスチャン ルブタンを象徴するソールをデザインに取り込んだ《ヴィーナス》ラインのバッグたち。《ヴィーナス バゲット バッグ》(右)は肩に馴染むラウンドハンドルが特徴的。コンパクトな《ヴィーナス クロスボディ バッグ ミニ》(左)は、ハンドキャリー、ショルダー、クロスボディと幅広いスタイルに活躍。バッグ右¥369,600、左¥401,500(クリスチャン ルブタン/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F

しなやかなレザーの素材感がエレガントな《ヴィーナス ショルダー バッグ ミディアム》。シックな黒のインナーにちらりと覗くルブタンレッドがフォルムの美しさを際立たせます。バッグ¥522,500(クリスチャン ルブタン/六本木ヒルズ ウェストウォーク 2F

地曳いく子が指南する
アイコンバッグとの付き合い方

❶ 軽やかに復刻するアイコンバッグ

アイコンバッグの復刻というのは、今季のひとつのキーワードではないでしょうか。そのまま復刻というのではなく、サイズがコンパクトになったり、以前ならハンドバッグだったのものが肩に掛けられるぐらいハンドルが長くなっていたり、ショルダーストラップが付いて2WAYで楽しめたり。全体的にカジュアルかつ軽やかになった印象。一周回ってレトロと感じるところもあるけれど、アップデートされた今の時代の感覚がデザインに組み込まれているからこそ新鮮なのです。

❷ ブランドのDNAに個性を主張

注目したいのは、ブランドのシグネチャーを新たに解釈して、フレッシュにアップデートしたニューアイコンバッグ。私はファッションオタクでもあるので、「あっ! そのアイコンをこう使いましたか」というデザインを見つけるとワクワクしてきます。ジョナサン・アンダーソンによるディオールや、アレッサンドロ・ミケーレによるヴァレンティノ ガラヴァーニはブランドのDNAを受け継ぎながらも彼らの個性を組み込み挑戦していますよね。アイコンを使って新たなアイコンを作っているところに唸らされます。

❸ 服よりも長持ちしてしまうバッグたち

ファッション業界に長く身を置き、おしゃれ好きでいると、時々出くわすのが“ちょっとデジャブ現象”。「これ、私持っていたわ」シリーズが出てくるのです。定番の罠にも近いのですが、昔から持っていたものと新作はちょっと似ているけれど、今の新作ものとは絶対にちがいます。今回、撮影のために集めていてそれを改めて感じました。時代に合わせてアップデートされたデザインを目の当たりにすると、すごくおしゃれ脳の刺激になります。とくに、バッグは服よりも長持ちしてしまうのが怖いところ。私が高校生の時、母からブランドもののバッグを借りたり譲り受けたりしていたのですが、母が持つとマダムなバッグも、10代の私が持つとちょっと新鮮。それは今でも変わらない感覚です。だから、私は若い子たちに昔持っていたバッグはどんどん譲っています。たびたび「持っていた」シリーズに出合うことがありますが、じゃあ、それを私が大事に取っておいたとしても、やっぱり自分では手にしないと思うんですよね。私が昔のバッグを持つとシンクロしてしまうので(笑)。若い子が持っている方が断然かわいい。大人世代の皆さまは、新しいものへと入れ替えていくことも大事なのです。ニューアイコンバッグだったら、かつて持っていたバッグに似ているようでもフレッシュな感覚をプラスしてくれますから。

❹ 螺旋を描き次なるトレンドへ

今の時代、世の中的にも、ファッション的にも、明治維新の文明開化ぐらい!?に変革期を迎えていると思うのです。少し前の常識では通用しないことも多くあります。変わらず古いものもいいけれど、やっぱり変化がないと魅力が薄れることも。魅力的であるためには、変わることも大切。でも、人間の脳は変わろうとすることを恐れるそうなのです。ルーティーンワークに安心するというか。自分がおばさん化するかどうかは心の問題。新しいものを拒絶した途端、それが老化のシグナルだと思っています。違和感に対しての拒絶感が、老化してしまう原因なのです。今回、ニューアイコンバッグを集めていて、若い頃は、かわいいやおもしろそうという感覚で素直におしゃれを楽しんでいたその気持ちを思い出しました。今は、何がいいとか、悪いとか、判断をしてはいけない時代。多様性の時代なので、美にもそれぞれの価値観があります。ただ、ジャッジはされないけれど、ダメなものは自然と淘汰されていきます。トレンドは一気に変わるのではなく、螺旋を描きながら変わっていくもの。今回のテーマを通し、過去のアーカイブなどブランドのいろいろな引き出しを開け閉めしながら、螺旋を描いて次に進んでいくのだなと思いました。


profile

地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持ち、執筆も多く手がける。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『60歳は人生の衣替え』(集英社)など多数。最新刊として、人気の旅エッセイに新たな書下ろしを加えポケットサイズに再編集した『新しい大人ひとり旅』(扶桑社文庫)を上梓。

※ 2026年4月現在の情報となります。
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