MARRIAGE OF JAPANESE FOOD AND WINE!
『グランド ハイアット 東京』日本料理統括、『ケンゾー エステイト ワイナリー』GM兼トップソムリエが語り合う、日本料理×ワイン——マリアージュの現在形
『グランド ハイアット 東京』が誇る、洗練を極めた和食店『日本料理 旬房』。この空間は、日本人へ極上の和食体験を提供することはもちろんのこと、外国人客にとって日本文化に触れる“玄関口”であり、彼ら・彼女らに和食文化を伝える使命を担っている。その『日本料理 旬房』が、常日頃から提供するのが『ケンゾー エステイト ワイナリー』のワインである。今回は、根笹副総料理長(日本料理統括)が作る四季折々の味覚とワインとのマリアージュ体験を改めて確認するべく、『ケンゾー エステイト ワイナリー』のトップソムリエ・船溪氏を特別にお招きした。『ケンゾー エステイト ワイナリー』の白ワイン「あさつゆ asatsuyu」、赤ワイン「紫鈴 rindo」に合わせて、根笹副総料理長に2品の料理を提案していただく、という趣向である。
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
「場所は、すぐ近くですよね。お店の前はよく通るんですけれど、実は伺ったことが無いんです。敷居が高いような気がして(笑)」(根笹副総料理長)
「あの扉一枚が、最初は重たく感じたと、言われます(笑)。一度入っていただくと、気に入って頻繁に通っていただけるんですが……」(船溪ソムリエ)
「ワイン通じゃないと、入ってはいけないのかなって」(根笹副総料理長)
「いえいえ、アットホームなスタッフばかりです」(船溪ソムリエ)
「実は、和食部門で働いていた料理人、私の後輩なんです(笑)」(根笹副総料理長)
「そうなんですか!」(船溪ソムリエ)
と、今回が初対面のふたりだが、共通の知人の話題で早くも距離が縮まった様子。同じ料飲界で頂点にいる者同士、世間は狭いのである。
それでは早速、本日の一品目。『ケンゾー エステイト ワイナリー』のソーヴィニヨン・ブランを主体とした「あさつゆ asatsuyu」に合わせるのは「賀茂茄子の田楽」である。京野菜を味噌仕立てでいただく初夏の一品(2021年5月取材時点)。茄子は一度、油で焼いた上で特製の味噌を塗っている。
ただしイメージとして、味噌料理に合わせるのは赤ワイン。白ワインとはいきなりアクロバティックなペアリングだ。
根笹副総料理長曰く「賀茂茄子がキモ。瑞しくジューシーなので、合うと思うんです」
「(笑)……うん、確かに、見事に調和しますね」(船溪ソムリエ)
「大丈夫ですか? (ほっとした表情で) お刺身とか、キャビアとかもあるんですが、それでしたらちょっと普通すぎるかなと思いまして」(根笹副総料理長)
「味噌でも白味噌を混ぜるなど、少し白い要素があるとバランスが取れるのかな、といただく前にはイメージがあったんですが、『あさつゆ asatsuyu』なら、この田楽味噌のコクにも負けていないです。最初はキレイな味噌の甘みが口の中いっぱいに広がるんですけれども、茄子の肉厚の食感、瑞々しさを感じ始めた時に『あさつゆ asatsuyu』が引き立ち、余韻がキレイに合わさる感じがします」(船溪ソムリエ)
味噌だけを少しずつ舌の上に乗せてワインを楽しむのであれば、やはり赤ワインの方が合うのかもしれない。ただ“賀茂茄子と白ワイン”の相性が素晴らしいのだ。瑞々しくピュアで、まさしく“キレイ”なのである。
「『あさつゆ asatsuyu』は、アルコール度数が14度近くあり、通常の白ワインよりも高めなんです。ところがアルコール臭を感じさせない。ということは、酸と果実味がたっぷり含まれているということです。その酸と果実味が、出汁の旨味に寄り添うんですね。逆に、酸が足りないと、ふくよかな味わいの方向に振れてしまいます」(船溪ソムリエ)
「“寄り添う”という表現は、素敵ですね。和食は素材そのものの味わいを大切にしています。そのコンセプトにワインが同調するのですから、互いに支え合うのでしょうね」(根笹副総料理長)
両社が共にスタンドプレイをしてしまうと、どちらかが勝ってしまう。マリアージュ――それは、和食とワインの組み合わせにおいて繊細かつ重要な意味合いを持つ。その「あさつゆ asatsuyu」をいただくお勧めの温度帯を船溪ソムリエに伺うと……。
「『あさつゆ asatsuyu』は、氷水でしっかりと冷やしても、果実味が残ります。ですので、まずは氷水でボトルを冷やし、初めにフレッシュさを楽しんでいただきたいです。その後、ボトルを氷水から上げ、常温へ向かうと共に引き出される香りを楽しんでいただければと思います。今は10℃くらいになっていると思いますが、この「茄子田楽」なら、少し温度を上げた方がより調和しますので、今、まさにベストのコンディションだと思います」(船溪ソムリエ)
続く2品目は、『ケンゾー エステイト ワイナリー』のフラッグシップワイン「紫鈴 rindo」に合わせる『日本料理 旬房』のスペシャリテ「季節の野菜と飛騨牛のすき煮」である。海外からのお客様からの「すき焼きをひとりずつ、すぐに食べられるように持ってきてほしい」というリクエストを叶えた一品だ。
「これは最高です! 肉質と脂のキメ細かさが重なり合いつつ、スッと溶けていきますね。溶き卵や赤ワインとの相乗効果がどうなのかな……と考えながら食べましたが、これは食が進みそうです。ワインを飲むことによって、さらに食べ疲れしないのかなと思うんです」(船溪ソムリエ)
「それ、ありますよね。お肉だけをいただくよりも、ワインを一緒に飲むほうがいい。これが日本酒だと、『ご飯を持ってきてよ』ってなるんです。シメたくなってしまう。不思議ですよね、飲み物で気分が変わるって」(根笹副総料理長)
根笹副総料理長が、このメニューに選ぶのが飛騨牛。サシがキメ細やかで、脂ののりが程良いことが特徴だ。レシピは、割り下を使う関東風。陶板が熱を伝えやすいことから、手早く仕上げるために、割り下を使用する。
「2018年の『紫鈴 rindo』は、カベルネ・ソーヴィニヨンが53%と、ぶどう品種5種をブレンドする中で半分以上を占めています。そのカベルネ・ソーヴィニヨンが、牛肉の脂とピッタリくるんですよね。そこに、甘辛い割り下が加わり、さらにはワインの果実味が相乗効果を生んでいます。食べ疲れしないのは、ワインの酸があるからこそ。その爽やかさが、もうひと口、もう一杯と、繋がっていくと思うんです」(船溪ソムリエ)
酸味は、数あるアルコールの中でも、ワインが得意とする分野である。そのワインが和食と出合ったことで、さらなるポテンシャルに注目が集まるようになった。和食とワイン――このマリアージュは、まだまだ可能性を秘めている。
「ひと昔前までは、ワインに合わせるとなるとストレートな和食ではなく、我々も創作料理的なものをお出ししていたんです。ところが今では、本当に和食そのものを手を加えずにお出しして、それを違和感なくワインと楽しんでいただけるようになりました」(根笹料理長)
マリアージュ相手の旨味を引き出すのは、『ケンゾー エステイト ワイナリー』の根幹を成す思想である。昔ながらの技を込めた和食と、『ケンゾー エステイト ワイナリー』のような素晴らしきワインとのマリアージュ。それが、これからのプレミアム和食の手本となりそうだ。
「今現在は、なかなか海外からのお客様にはお越しいただけませんが、海外からのお客様は創作料理ではなくて、生粋の和食を食べたいんです。そして飲み慣れたワインの方が、日本酒よりも心地いい。その時に、『ケンゾー エステイト ワイナリー』のような日本の造り手によるワインをお勧めすると、非常に喜ばれます」(根笹料理長)
単刀直入に、ケンゾー エステイトのワインは、他の輸入ワインとどこが違うのだろう?
「和食料理人として感じるのは、繊細であること。ワインは土壌造りから始まると言いますが、それがボトリングされるまで、ひとつひとつ積み重ねていく作業工程が、繊細さを持って進んでいるのではないでしょうか。その結果、和食にも寄り添うワインが出来上がると思っているんです」(根笹副総料理長)
「『ケンゾー エステイト ワイナリー』のオーナーは、ゲームメーカー「カプコン」の創業者。ゲームもワインも、世の中に無くても困らない。困らないものだからこそ、世界でナンバーワンにならないといけないんだ……という思想で、ゲーム作り、ワイン造りを行っています。その想いが現れているのではないかと私自身、思っているんです」(船溪ソムリエ)
やはり頂点にいる者同士の価値観は、近いものがあった。そして、「この企画をご縁に、感染症がひと段落ついた暁には、何らかのコラボレーションを考えてみましょう」(根笹副総料理長)とも!
どんなスペシャル企画となるのかは、乞う、ご期待。六本木ヒルズを媒介にした、和食とワインの洗練されたマリアージュに、これからも目が離せない。
※ 2021年10月現在の情報となります。
※ 六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一部店舗・施設の営業内容を変更しております。 営業状況は定期的に変更がありますので、ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。
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