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自然環境への配慮に重きを置き、SDGsの実践、フードロスの削減や自然派食材を育てる生産者の支援、建材や食器のリユース、様々な社会貢献活動など、サステナブルな試みを行うお店が増えてきています。ここではそんな、食の最前線をゆく3軒のレストランをご紹介します。
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 地球環境に配慮した食材を調達、その高い意識をひと皿に込める
——THE OAK DOOR(ステーキハウス『オーク ドア』)
これまでのラム肉に対する概念を完全に覆す、“まるで和牛のような美味しさ!”。日本語の“もったない”をそのまま冠した「モッタイナイラム」を、日本に初めて導入したのがグランド ハイアット 東京のステーキハウス『オークドア』だ。
美味しさの秘密は飼料にある。見た目の悪さから流通に乗せられなかった果物や野菜、そしてオリーブオイルやオリーブの絞りかすなどを加えているのだ。本来の飼料である牧草・穀物に対して、その配合比率は、なんと80%。“もったいない”とは、食材を廃棄せずに再利用する姿勢から命名されたものだ。
オレイン酸やオメガ3脂肪酸を多く含む「モッタイナイラム」は、まるで和牛のようなサシが入り、軽やかで、とろけるような肉質。ラム肉特有のクセがなく、ひと皿360〜400gを、ひとりでペロリと平らげてしまう人もいる。
ステーキハウス『オークドア』のもうひとつのシグネチャーメニュー「岩手県産帆立貝のロースト ハーブバター」は、海洋資源を守るために乱獲をせず、丸2年をかけて帆立貝を養殖する岩手の海産業者と提携。黒潮と親潮がぶつかる三陸沖深さ40メートルの海域で育った帆立は、身が大きくて、甘く、とってもジューシー。その格別な食材をステーキハウス『オークドア』ではハーブバターと共に、鉄板にのせた熱々のメニューとして提供している。
※「モッタイナイラム」は、COVID-19及びオーストラリアで起きた山火事の影響から現在は輸入がストップ。提供再開は、2022年以降を予定している。
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THE OAK DOOR(ステーキハウス『オーク ドア』) 住所 東京都港区六本木6-10-3 グランド ハイアット 東京 6F 電話 03-4333-8784 営業時間 ランチ11:30〜15:30(L.O.15:00)/アフタヌーン15:00〜17:30(L.O.17:00)/ディナー17:00〜20:00(L.O.19:30)/バー11:30〜20:00(L.O.19:30) 定休日 無休 ※価格は税別、15%のサービス料別 ※各種カード使用可
❷ パンの耳を廃棄せずに、ビールの原料として再利用
——bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー)
『ブリコラージュ』で人気のオープンサンドは、定番アイテム「ブリコラージュ ブレッド」をスライスしたもの。ところがこのドーム型パンをスライスすると、どうしてもパンの切れ端が日々出てしまう。これを廃棄するのではなくビールの原料として再利用したのが、同店で販売している「bread」シリーズだ。
日々、余ったパンの耳は、オーブンで再加熱して水分を飛ばし、カリカリの状態に。これを提携先のAJB CO.(アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング・カンパニー)に送り、ビールの原料として利用、完成した瓶ビールを店頭に戻している。もともと原料にこだわったパンだからこそ、「bread」にはローストしたパンの香りが漂い、飲み心地もスッキリと大評判。現在はビールのほか、『イチローズモルト』のウィスキー樽で3カ月熟成させたバレル熟成のバーレーワインも商品化に至っている。
DIYの精神を具現した店内は、古きものを捨てずに再利用するスタイルで満ちている。例えば店内の床材は、福井の古民家の廃校の床材を再利用したものだ。また店で使われているお皿も、全て骨董品の再利用。パンが美味しいことはもちろん、日常の中での等身大の気付きをしっかりと実践しているのもまた『ブリコラージュ』の素晴らしさだ。
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bricolage bread & co.(ブリコラージュ ブレッド アンド カンパニー) 住所 東京都港区六本木6-15-1 けやき坂テラス1F 電話 03-6804-3350 営業時間 平日8:00〜19:00、金曜・土曜・日曜・祝日・祝前日8:00〜20:00 定休日 月曜(祝日の場合は営業) ※価格は税込 ※各種カード使用可
❸ 炭火焼きグリルとヴィーガンメニューで、リアルに美味しいチョイスを提案
——The Burn(ザ・バーン)
「この店は、僕自身が来たい店。1カ月に1回でも友達を誘って、自腹でも来られる、カジュアルな価格設定で。そして店に来たらスタッフが生き生きと働いていて、いいエナジーを貰える。これが僕の理想とするレストラン像なんです」
そう語るのは、エグゼクティブシェフの米澤文雄氏だ。炭火焼きグリルとヴィーガンメニューという対局的な要素が同居するメニュー構成だが、ヴィーガン料理以外は受けつけない海外クライアントをお連れするのにも重宝されているそうだ。加えて、「牛肉は環境配慮を考える際に適した食材とは言えないが、それならば料理人として代替案を提示する必要がある。そうやって牛肉の消費量が減れば、むしろ牛肉を私たちは長く食べ続けられるのではないか」というのが米澤氏の考えだ。
一方で、この店舗ではレストラン以外にも様々な社会貢献活動を行っている。そのひとつが、品川区の障害者施設にあるカフェ「みんなのテーブル」の運営だ。ここでのメニュー監修やイベント開催を通じて、スタッフの課外活動を促し、モチベーションアップに繋げている。ほかに「大地の芸術祭 越後妻有アート トリエンナーレ」にまつわる食のプロデュースも、米澤氏率いる店のスタッフが手掛けている。
「レストランを作り上げるのは、そこで働く“ひと”なんです。若いスタッフが継続してレストランの仕事に携われるには、レストラン自体がいろんな活動に取り組み、動いていくこと。それがやがて待遇アップにも繋がり、彼らが厳しくも楽しく働き続けられる環境になっていくと思うんです」
レストラン運営を無理なく持続していくこと。この店では、“サステナブル”という言葉の原点を見ることができる。
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The Burn(ザ・バーン) 住所 東京都港区北青山1-2-3 青山ビルヂングB1F 電話 03-6812-9390 営業時間 ランチ11:30〜14:30(L.O.13:30)/ディナー17:00〜20:00(L.O.18:30) ※アルコール類の提供は19:00まで。カフェ、ソフトドリンクは19:30まで) 定休日 月曜 ※価格は税込。ほかにサービス料10%が必要。ディナーのみミューズ代¥500、パン代¥200がプラスされる ※各種カード使用可 ※政府発出の緊急事態宣言に伴い、短縮営業中。ご来店の際には事前にHPをご覧ください。
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