“麻”に“辣”が加わり、絶妙にクセになるものに進化してきている「坦々麺」。辛さをカスタマイズ出来たり、自分好みのものに「味変」できたりなど、辛いものマニア垂涎、美味なる「汁なし担々麵」のお店をご紹介します。
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 2種類の山椒で五感を刺激。究極の痺れがここに!
——SHIBIRE NOODLES 蝋燭屋 表参道ヒルズ店(シビレヌードル ロウソクヤ オモテサンドウヒルズテン)
店名にズバリ、“SHIBIRE-NOODLES”とある通り、ここは舌が痺れる感覚を存分に楽しむための店だ。これまで中華の料理人として20年間、腕を奮ってきた片桐さんが、「自分の料理に、もっと山椒を効かせてもいいのではないか」という仮説のもと、独自の味を探求。山椒の鮮烈な風味を前提に、担担麺や麻婆麺を新たに設計したという。もちろん単に激辛を追求するのではなく、山椒による舌の痺れを、中華の旨味と複数の香辛料で下支えする組み立てだ。
『蝋燭屋』という特徴のある名前は、東京・銀座に出店した1号店が、ガス灯通りに面していることにちなむ。現在は電気、その前はガス、さらにその昔は蝋燭。古き良きものを尊ぶ姿勢を示すべく、昭和時代のレトロなイメージで“蝋燭屋”という屋号に決めたそうだ。
メニューは3段階の辛さをセレクトできる。さらに、それぞれプラス¥ 100のエクストラチャージで、辛さ激増し、痺れ激増し、辣油増しをリクエスト可能だ。本格中華の濃厚な旨味と共に、毛穴が一瞬にして開き出す感覚は、言わば刺激の洪水。ところがバンジージャンプと同じく、一旦飛んでしまえば清々しいもの。ぜひとも勇気を持ってこの未体験ゾーンに、誘われていただきたい。
PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA(NDPP.)
❷ 本格中華のシェフが、無添加・化学調味料無しで料理
——担坦麺ぺんぺん(タンタンメン ペンペン)
東日本橋で名を馳せる四川料理の名店『虎穴』(フーシエ)で修業を積んだ料理人が、独立して木場に作った担担麺専門店が『香墳墳』(シャオペンペン)。『担担麺ぺんぺん』は、その『香墳墳』がプロデュースしたはじめての姉妹店だ。
実際、『担担麺ぺんぺん』のメニューは、『香墳墳』と変わらない。いわゆるラーメン店ではなく、本格中華料理の発想で作られたレシピは、無添加・化学調味料不使用にこだわり、食材本来のポテンシャルを引き出すことに徹底している。肉の旨味を閉じ込めた粗挽きポークに甜麺醤、豆板醤で肉味噌を作り、これを味のベースに各種麺類を展開。麻辣麺は敢えて麺を短くして、2回啜れば収まるように配慮するなど、そのディテールの完成度が名店の系譜を物語る。
そして麺を完食した後のお楽しみが、「ジャスミンライス」だ。タイ米が程よく汁に馴染み、濃厚な味を吸収。これを温泉玉子のまろやかさで包んで食すのが、『ペンペン』流なのである。
PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA(NDPP.)
❸ 金ゴマをたっぷりと使用。辛さと旨味の格別なハーモニー
——金蠍(キンカツ)
風味が良く、身体にも良し……。“ゴマの王様”と呼ばれる濃厚な味わいの金ゴマをふんだんに使用しているのが、『金蠍(キンカツ)』の担々麺だ。金ゴマのペーストをベースに、辛味のフレーバーをふわりとのせた味わいは、ただひたすら辛さを追求するのではなく、唐辛子と山椒の向こう側で、しっかりとゴマの旨味、甘みが主張する。その奥行き感が毎日食べても飽きさせず、ファンを惹きつけて離さないのだ。
『金蠍 神谷町店』は、わずか8席という限られたスペースだが、多忙なビジネスマンが少ない休憩時間を割いて行列を作る。それゆえ店側は着席後に一秒でも早く麺を提供出来るよう心がけているそうだ。また全時間帯で、全ての麺に小ライスと自家製ザーサイが無料で付いてくるのも嬉しい。店側のお勧めは、坦坦麺が2辛、成都担坦麺が5辛だが、カウンターには特製辣油や唐辛子、山椒が置かれ、味変を自在に楽しむことが可能だ。
PHOTO BY ATSUMI ODATE(NDPP.)
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