kushiage new style

串揚げ東京スタイル——定番から個性派まで、洗練の1本を

各店各様、工夫を凝らしたプレゼンテーションで、1本1本がまさに完成された“作品”。大阪が発祥、そして東京で進化する、六本木エリアの美味しい串揚げ店3軒をご紹介します。

PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC

❶ 約40種類から様々な串揚げを食す至福
——串の坊(クシノボウ)

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1/7左からイキがよくプリプリの食感の「車海老」、つぶつぶの食感とうにの濃厚さにお酒が進む「子持ち昆布の生うにとキャビアのせ」、ジューシーで食べ応えのある「アスパラの豚バラ肉巻」。 
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2/7左からほぐした身をキスで巻いた「カニのキス巻」、岡山の吉田牧場産のよくのびる「カチョカバロチーズ」、口に入れるととろけるように柔らかい「信州和牛のイチボ、わさび添え」。
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3/7卵かけご飯、赤出汁、佃煮、香の物で¥715。なんと卵かけご飯にキャビアを追加することができる。高知産の卵「土佐ジロー」に、キャビアがちょうどいい塩味を添える。5グラムのキャビアを追加するとプラス¥3,240。
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4/77メートル30センチもの檜の一枚板を使ったカウンター。職人が目の前で食材を揚げて、カウンター越しに揚げたてを出してくれる。
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5/7テーブルには調味料が置かれているので、好みに応じて串揚げにつけて食べる。オリジナルの串の坊ソース、特製ポン酢、胡麻芥子ソース、白胡麻岩塩、和芥子を用意。そしてお店のお勧めであるキャビアを、お好みでトッピングして食べることができる。目安は3グラム(串揚げ1本分)¥1,980
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6/7テーブル席にも同じく檜が使われている。周囲に飾られているのは工芸作家、安田泰三氏のガラス細工作品。贅を尽くしたインテリアには目を見張るものがある。
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7/72018年9月にオープンした際に店長に就任した深谷元気さん。70年の歴史がある『串の坊』に入社して13年目。

赤ワインを飲んでいるゲストには、それに合わせてステーキ串を出すなど、職人のセンスで供される串揚げのコースを堪能できる。

店でその日用意しているのは、定番串とスペシャル串を含めた約40種類。その中から順次出されるので、お腹がいっぱいになったらそこでおしまいと伝えればいい。「常連さんにはお腹がいっぱいになる前に、早めにお好みの串を出していきます」と、さりげない配慮を見せるのは深谷元気店長。

お客様の目の間で、まずネタを衣にくぐらせ細か目のパン粉をつけ、170度の動物性の油でからりと揚げる。昔ながらの定番ネタと、創作料理的なスペシャル串があり、いずれも珠玉の逸品。ステーキ串やチーズ串にハチミツをかけたものなど、ワインによく合うネタも用意。ちょっとリッチにいきたい人はキャビアをトッピングして、好みのワインと共にとびきりのひと時を過ごそう。

TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA

串の坊(クシノボウ) 住所 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ ウエストウォーク5F 電話 03-5771-0094 営業時間 ランチ平日11:00〜15:00(L.O.14:30)/ディナー平日17:00〜23:00(L.O.22:00)、土曜・日曜・祝日11:00〜23:00(L.O.22:00) 定休日 無休 ※カード使用可 ※価格は税別

❷ 洗練された空間で、吟味した食材の串揚げとワインを堪能
——銀座 六覺燈 麻布十番店(ギンザ ロッカクテイ アザブジュウバンテン)

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1/7串揚げにメニューはなくおまかせのみで、20本という目途はあるが、お腹がいっぱいになったら希望のところでここまでと伝えればいい。左から「鶏ささみ肉のしそ巻きトンブリのせ」、「ふぐのポン酢刻み芽ネギのせ」、「活車海老」。
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2/7左から「和牛のヒレ肉の菊の花の甘酢漬けと芥子マヨネーズのせ」、「サツマイモのメイプルシロップとブランデーソース」、「エンドウ豆のコロッケ」。ソースは芥子とレモン酢、出汁醤油、胡麻入りオリジナルソース、赤ワインを使ったオリジナルソース、山椒塩、沖縄の雪塩。職人が皿に出す時に串揚げをソースの前において、どの食材がどのソースに合うかを提案してくれる。
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3/7旬の野菜を使った生野菜サラダも串揚げのソースにつけていただく。おかわり自由。
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4/71階はこのカウンター6席と個室が、2階はカウンター席が13席ある。和と洋のエッセンスを併せ持つエレガントな空間だ。
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5/73名から5名で利用できる個室スペースがあり、接待の食事会でも利用しやすい。
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6/72階にあるワインセラー。ソムリエがふたりいて、好みに合わせたワインをお勧めしてくれる。ワインはグラスで¥1,600~、ボトルで¥8,000~。
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7/7メニューはないが、目安として、生野菜サラダと串揚げ10本で¥6,650、生野菜、串揚げ20本、パン、デザート盛り合わせ、コーヒーで¥13,670 (税・サービス料込み)

一つひとつ吟味したネタを使った串揚げを、おまかせで提供する店。創業は大阪で、大阪本店は40年の歴史を持つ。麻布十番店は2013年の開店だが、ここでも大阪本店の流儀が受け継がれている。

旬の最高の食材を、職人が感性で作る衣で揚げ、お客様の食べるタイミングに合わせて提供する。衣は小麦、卵、水、ワインを使い、薄めのものと濃厚なものの2種を用意し、食材によって使い分ける。付けるパン粉は細かめのものを使用。大変軽いので串揚げを食べた時、食材の持ち味を強く感じられ、揚げ物を食べているという感覚があまりない。それは沢山の種類を楽しんでいただけるようにという配慮から。鮮度抜群の車海老はふわふわの食感、和牛のヒレ肉はとろける味わいだ。6種類のソースや塩を用意し、その食材にはどれが合うかをお勧めしてくれる。それらをつけると確かにより美味しさが増す。

また、串揚げとワインのマリアージュをテーマにしており、ソムリエがその食材に合うワインをお勧めしてくれる。ナイフやフォークを使わないので、肩の力を抜いて高級な食材とワインを心ゆくまで楽しみたい。

TEXT BY YOSHIKO NAKASHIMA

銀座 六覺燈 麻布十番店(ギンザ ロッカクテイ アザブジュウバンテン) 住所 東京都港区六本木6-11-18 HOU1・2F 電話 03-5775-5020 営業時間 17:00〜23:00(L.O.22:00) 定休日 無休(年末年始は休み) ※カード使用可 ※なるべく予約を

❸ おまかせで、思わぬ美味しい出合いにホロリ
——串喝 知仙(くしかつ ちせん)

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1/8生でも食べられるほどの新鮮さにこだわった「アスパラ」。春時期は国産だが、それ以外も南半球から取り寄せているので通年でいただける。揚げることで風味をギュッと閉じ込めた「松茸」も、このうえなく美味。
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2/8一年を通して40種程度の串メニューを提供する『知仙』の中でも「牛肉とチーズ」「ハマグリ」「蟹」は、3大人気を誇る看板アイテム。この3品を集中リピートする人までいるとか。
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3/8「小振りののどぐろ丸ごと一匹の唐揚げ」は、アタマからいただいて香ばしさを味わいたい。「鱈の白子の湯葉巻き」は、揚げることで蒸し焼きの効果を出している。
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4/8「原木なめこの生姜煮」(時価)。新潟県の山奥から直送で届く特別ななめこは、格別な風味で香りも豊か。毎秋、およそ1カ月間のみ提供される旬のメニュー。
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5/8「すくい湯葉と生うにのあんかけ」は、うにの甘さと湯葉のとろみが口の中いっぱいに広がる一品。串間の日本料理もまた、心奪われるメニュー揃いなのだ。
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6/8店内はカウンターのみ全26席。揚げたてを提供する最善のレイアウトだ。鎌倉の禅寺を模した設えは、ここが東京・六本木であることを忘れてしまうほど。
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7/8お酒はビール、焼酎、日本酒から、フランス産のボルドーワインまで。店内にはワインセラーがあり、カジュアルなものから接待レベルまで、あらゆるワインが選べる。
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8/8料理長 猪狩博行さんは、『知仙』創業時から串を揚げ続ける。「これから冬の魚がおいしくなる季節。一品料理では白魚の唐揚げ、桜えびの揚げも人気です」

東京・六本木で40年超の歴史を誇る『串喝 知仙』は、料理人のおまかせコースが基本。とはいえその対応はきめ細かく、お客さま一人ひとりの食材の好き嫌いや、お腹の空き具合とも相談しながら、串1本1本を丁寧に揚げてくれる。自分では気づかない食材も、こうして料理人が美味しく届けてくれるのだ。逆に、その日の食材リストから、客が逆指名することもOK。串と串との間に提供される一品料理もまた素晴らしく、それぞれに季節の香りを運んでくれる。

昨今では低価格の串揚げ店も注目されているが、老舗の違いは、やはり油の鮮度。そこにサラリと揚げる熟練の技も加わり、沢山いただいても翌日胃もたれしないのだ。しかも『知仙』では、どの食材も最高ランク。したがって、臆せず旬を味わい尽くすのが『知仙』の流儀とか。締めは、なめこの粉を練り込んだ「なめこそば」か、イクラをちょんと載せた「だし茶漬け」をどうぞ。

TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA

串喝 知仙(くしかつ ちせん) 住所 東京都港区六本木7-16-5 電話 03-3478-6241 営業時間 17:30〜23:00 定休日 月曜 ※カード使用可 ※料理は¥5,000〜のおまかせ(リクエストもOK)