ビジネスパーソンにとって、きれいな歯は名刺の次に大事なもの。「だから毎食後ちゃんと磨いてる」と言っている人に尋ねたい。「そのブラッシングは本当に効果的ですか?」 虎ノ門ヒルズ トルナーレ歯科・矯正歯科龍醫院の龍信之助院長に、本当に効果的な歯のホームケアについて聞いた。
TEXT BY MIHO MATSUDA
PHOTO BY AYA KAWACHI
Q1. 美しい歯のための「歯みがき粉」の選び方とは?
ドラッグストアにずらりと並ぶデンタルペースト。「歯が白くなる」「薬用成分配合」など様々なコピーが踊っているが、何を基準に選んだらいいのだろうか。
「ずばり言ってしまうと、ドラッグストアに並んでいる歯みがき粉の効果はそれぞれですが、研磨剤で歯の表面を磨き、口の中をすっきりさせるものがほとんどです。殺菌効果が謳われているものもありますが、口の中には400種類の菌が1兆個いると言われており、これをすべて殺菌するものは未だに発明されていません」
ということは、安い歯みがき粉でも効果アリ?
「そもそも、ブラッシングに歯みがき粉はおまけのようなもの。理想は15分のブラッシングなのですが、歯みがき粉をつけて磨くと2、3分で口の中は泡だらけ。爽快感はあるので、磨いた気になってしまいます。だから、歯みがき粉をつけずに13分、歯みがき粉をつけて2分のブラッシングがおすすめです」
数ある歯みがき粉の中でも、龍院長がおすすめするのは〈アパガード〉と〈シュミテクト〉〈コンクール ジェルコートF〉の3つだ。
「まず研磨剤入りのものは、歯の表面をザラザラにするだけなので避けましょう。アパガードは歯の主成分と同じハイドロキシアパタイトが配合されて、脱灰した初期虫歯を修復してくれます。また虫歯でもないのに歯が染みる人にはシュミテクトも効果的です。研磨剤なしで殺菌効果がありフッ素が配合されているジェルコートFもおすすめです」
Q.2 きれいに磨ける歯ブラシの選び方は?
次に歯ブラシ。山形カット、コンパクトヘッドなどたくさんの種類があるが、どれを選べばいいのだろうか。
「歯ブラシは、それぞれに利点欠点があります。歯のひとつひとつは球体で溝があり、複雑な構造をしています。その全ての面に歯ブラシを当て、歯垢を除去できればいいのですが、どうしても歯と歯が接触しているところは磨けない。だから、歯ブラシとともにフロスまたは歯間ブラシを使ってください。1996年にアメリカ歯周病学会では〈フロス・オア・ダイ〉というキャンペーンを実施しました。歯周病は誤嚥性肺炎につながります。高齢になるほど罹患率は高くなり、それが死に繋がることも。決して、オーバーな表現ではありません」
Q3. 歯みがきしていれば、定期検診は必要ない?
忙しさのあまり、歯科医院から郵送されてくる定期検診のお知らせを放置している人も少なくないのでは。〈15分1日3回〉の歯みがきを続けていれば、定期検診は行かなくてもいいのだろうか?
「歯科医院でのケアは、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)といって、ホームケアとは別物です。48時間で歯垢は歯石に変わると言われており、一度付いてしまった歯石はPMTCでなければ取れません。歯石はバイ菌のかたまりです。放置しても良いことはありません。歯科医院は検診をいつでも歓迎しています。今すぐ定期検診に行ってください」
ベストなホームケアは歯みがき粉なし13分+歯みがき粉あり2分+デンタルフロスを1日3回行い、3カ月に1度定期検診に行くこと。それだけで、長く元気で生きられます。また、個人に合わせたホームケアはぜひ歯科医院で相談を!
美しい笑顔を作る、あごのトレーニング
最後に、美しい笑顔を作るトレーニングを教えてもらった。
「日本人は、歯にコンプレックスがある人が多く、笑顔が得意でないといわれています。表情筋の動きが少ないと、加齢とともに口周りのたるみ、二重アゴ、顎関節症も引き起こしやすい。それを防ぐのが〈あごトレ〉なんです」と龍院長。やり方はとても簡単。西原愛夏・歯科衛生士のお手本を見ながら、毎日のホームケアに取り入れてみよう。
龍信之助|Shinnosuke Ryu
虎ノ門ヒルズ トルナーレ歯科・矯正歯科龍醫院 院長。医療法人社団RMDCC理事長。江戸時代から続く医師の家系、龍一族の17代目。日本大学法学部、日本大学歯学部卒業。慶應義塾大学医学部歯科口腔外科研修医、慶應義塾大学医学部麻酔科大学院を経て開業。臨床を行いながら、神奈川歯科大学臨床准教授を務める。表情筋を動かして口元のたるみ、二重あごや、顎関節症も防ぐ『若返りあごトレ』(小学館)を広める活動も行なっている。また、トルナーレ歯科医院では見えにくいマウスピース矯正「インビザライン」も行なっている。
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