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オープンから2年、最新ビルの一角に東京中の名店26軒を集めた「虎ノ門横丁」がさらなる賑わいを見せている。気に入った店で軽く一杯飲んでつまんだら、次の店へ。お酒をこよなく愛するフリーアナウンサーの宇賀なつみさんが、注目のスポットではしご酒を楽しんだ。
TEXT BY AI SAKAMOTO
PHOTO BY NORIO KIDERA
STYLING BY WAKIKO KONDO
HAIR & MAKE-UP BY HITOMI AKIYAMA
「『虎ノ門横丁』に入るのは、今回が初めて。以前、テレビ番組の収録で虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーを訪れた際、いろいろなお店が軒を連ねる楽しそうな様子を見て、来たいと思っていたんです」
巨大な提灯が目印の横丁入口で、路地を覗き込みながら宇賀さんが楽しそうに笑う。「人が行き交う中で飲んで食べるという、この感じも久しぶりだから、本当に楽しみです」とうれしそうだ。
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路地を歩く宇賀さん。写真右手に見えるのが、「酒食堂 虎ノ門蒸留所」の蒸留所。
2020年6月、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー3階にオープンした「虎ノ門横丁」は、タベアルキストのマッキー牧元さんが店舗の監修を務めた、これまでにない新しいスタイルの横丁。
長年、1店舗だけで営業してきた老舗や、予約のなかなかとれない人気店など名だたる26軒が出店。それぞれの店舗ではもちろん、横丁内に数カ所設けられた「寄合席」に料理を持ち寄って味わうこともできる(寄合席で食べられるのは限定メニューのみ)。
「虎ノ門蒸留所」のクラフトジンを味わう
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酒食堂 虎ノ門蒸留所 横丁内でもっとも広い面積を誇る。「寅年生まれなので、ボトルに貼られた虎柄のエチケットが気になります」と宇賀さん。
今回、宇賀さんは「虎ノ門横丁」ならではの楽しみ方として「はしご酒」にトライ。まずはジンの蒸留所を併設する居酒屋&バー「酒食堂 虎ノ門蒸留所」へと向かった。
「すごく広いんですね。天井も高いから開放的。実は、最近ジンをよく飲むんですよ。さわやかでドライだから、暑い夏にピッタリ。虎ノ門のビルの中でつくるジンはどんな味がするんだろう?」
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口開けの一杯を味わう至福の時。ジンハイボールは、強炭酸を入れたグラスの中にジンを注ぐことで香りを際立たせるという。
“トーキョーローカルスピリッツ”をコンセプトにつくられるクラフトジンは、年間16〜20種。八丈島や新島といった東京都の島嶼部でつくられた島焼酎と奥多摩の湧き水を原料にしたオリジナルジン「COMMON(コモン)」をベースに、四季折々のボタニカルで香りづけした季節のジンをリリースしている。
「今なら、栃木県産とちおとめのいちごのジンや、奥多摩のわさびを使った一杯が味わえますよ。とくに爽快感のあるわさびのジンは、揚げ物や濃い味の料理に合うんです」と、バーテンダーの猪口愁さんは話す。
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店舗に隣接する蒸留所。蒸留は月2回ほど行われる。
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1個からオーダーできる揚げ物や、〆の焼きナポリタンなど、ジンに合う居酒屋料理を提供する。「BGMが、80年代のジャパニーズ・シティポップなのもグッときますね(笑)」
宇賀さんが口開けの一杯に選んだのは、「COMMON」を強炭酸で割ったジンハイボール。1軒目ということもあり、つまみは、ポテトサラダとドライフルーツのジン漬けと軽めに。
「おいしい! とても飲みやすくて、危険です(笑)。えごまのプチプチした食感といぶりがっこが味のアクセントのポテトサラダも、ジンの風味がしっかり染みこんだドライフルーツもお酒にすごく合いますね。うーんっ、楽しくなってきました(笑)」
それでは、そろそろ2軒目に行きましょうか。
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手前から、ドライフルーツのジン漬け650円、ポテトサラダ エゴマの粒マスタード添え650円、ジンハイボール800円。
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わさびのジンの香りを嗅いで、少しだけ試飲。「ほのかに、わさびのニュアンスを感じます」
「鮎ラーメン+」で鮎の新たな魅力に開眼
次に訪れたのは、「鮎ラーメン+(プラス)」。二子玉川で20年近く愛される人気店が満を持して出した2号店で、鮎ラーメンに加えて、「神のカキ」と呼ばれる広島県・大黒神島(おおくろかみしま)産のカキが味わえる。
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鮎ラーメン+ 鮎ラーメンと、カキが二枚看板だ。
実は、カキが大好きという宇賀さん。「生もいいし、焼きもいいし、フライも食べたい」と悩みながらも、生ガキと鮎一夜干しをオーダーする。合わせるのは、店長・内藤卓さんオススメの岐阜の銘酒「蓬莱」純米大吟醸 極意傳。「うちで使っている鮎は、馬瀬(まぜ)川や宮川でとれたものなので、同じく岐阜のお酒によく合うんですよ」という。
日本酒で喉を潤しながら待つこと数分、まずは生ガキが登場。「小ぶりだけど、ギュッと詰まった濃厚な旨味がすごい。クリーミーで、ずっと口の中に入れておきたいほど(笑)。この味わいは、広島に旅した気分になれますね」
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映画『ブレードランナー』を彷彿とさせる、これまでにない横丁。幅1.6mの路地に、高低差のある各店の軒が張り出すことで、賑わいと同時に親密な雰囲気をつくりだしている。
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「蓬莱」純米大吟醸 極意傳 1合800円。鮎とともに味わえば、岐阜のテロワールを感じられる!?
次に出てきたのは、鮎一夜干し。「独自製法で一夜干しした鮎を、直前にあぶってからお出ししています。骨は手作業で取り除き、よく焼いているので、頭からシッポまで丸ごと食べられますよ」と、内藤さんも太鼓判を押す。
「鮎の一夜干しを食べるのは初めてですが、いわゆるクセがないですね。鮎のいいところがギュッとつまった味とでも言うか、お酒のつまみにピッタリ。まだまだ知らない味がいっぱいあるんだなぁ」と、宇賀さんも鮎の魅力を再発見したようだ。
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無人島である大黒神島の周辺は海がきれいなため、生でも安心して食べられるという。「しっかりした塩味があるので、レモンだけで十分!」。生ガキは1個300円から注文できる。
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鮎ラーメンの上にも載せられる一夜干し700円。噛むほどに、鮎の芳しい旨味が口の中に広がる。
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「せっかくだから、〆のラーメンも食べたい!」と2軒目にして、〆を味わう宇賀さん。「鮎だしのあっさりスープに、細麺がよく合う! 直前にあぶった一夜干しから脂が溶け出して、味により深みが出ている気がします」。鮎丸ゴトラーメン1,150円。
星つきの味を気軽に楽しめる「プランチャ スリオラ」
「虎ノ門横丁」には、ミシュランの星つきレストランも出店している。6年連続で2つ星を獲得しているモダンスパニッシュの実力派「スリオラ」が手がける「プランチャ スリオラ」もそんな1軒だ。
プランチャとは、スペイン語で“鉄板焼き”を意味。その名の通り、ホタテやイカといった魚介から、牛フィレ、国産牛100%のハンバーグステーキなどのプランチャを中心に、タパスやパエリア、本店で人気のバスクチーズケーキなどが味わえる。
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プランチャ スリオラ 本店とは違うメニューを味わえるのが、「虎ノ門横丁」の魅力。「プランチャ スリオラ」は鉄板焼きに特化している。
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カウンターで、シェフの手さばきを見ながらワインを傾ける。スタッフや他の客との距離の近さも横丁ならではだ。
「オススメは、イベリコ豚 プルマのプランチャです。天使の羽を意味するプルマは、肩甲骨あたりの赤身の部位で、食感と風味はまるで牛肉。当店で使っているのは、イベリコ豚の中でも最高級ランクのベジョータなので、よりおいしさを感じていただけると思います」とは、シェフの平田耕示さん。
宇賀さんがオーダーしたのは、このイベリコ豚 プルマのプランチャと夏の限定メニューであるハモのアヒージョ。ハモにはカヴァを、イベリコ豚には赤ワインを合わせる。
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ハモのアヒージョ2,640円に興味津々の宇賀さん。グラスワインはカヴァ880円、赤ワイン990円〜。
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「ハモのアヒージョは、トマトとナスとの相性もばっちり。オイルをパンにつけて食べると、もう止まりません」
「ハモのアヒージョは、スパイシーで食欲が進みますね。イベリコ豚のプルマはひと言で言うと“すごい!”。シェフのおっしゃる通り、牛肉のような柔らかさと旨味、質のいい脂で、言われなければ豚肉だと気づかないほど。横丁という気軽な場所で、こんな本格的なスペイン料理をいただけるのって、本当に魅力的だと思います」
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「目の前の鉄板で調理している様子が見えるライブ感がいいですね。すごくいいニオイがしてきました(笑)」
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イベリコ豚 プルマのプランチャ6,600円。ニョラ(スペイン産の乾燥パプリカ)を使ったソースが、味に奥行きを持たせる。
近頃、「好きな時に、好きな人と、好きな場所で、好きなものを食べること」が本当の幸せだと実感しているという宇賀さん。利用客のニーズに合わせた自由な使い方ができる「虎ノ門横丁」なら、それも可能だ。
例えば、ランチで名店の味を気軽に楽しむのもいいし、早めにディナーをスタートさせて何軒かをはしごしてもいい。お目当ての店がいっぱいだったら、「寄合メニュー」をテイクアウトして、角打(「虎ノ門蒸溜所」「TORANOMON BREWERY」「HAND PICKING WINE」が該当)で購入したお酒と一緒に、寄合席で楽しむこともできる。
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ジン、日本酒、ワインと、この日もいろいろ飲んだ宇賀さん。
「路地からそれぞれの店内の様子が見える、明るくて開放的な造りだから、女性の一人客でも訪れやすいですよね。袖触れ合うも多生の縁ではないけれど、お店のスタッフや他のお客さんとのコミュニケーションも、やっぱり楽しい。今回は3軒でしたが、まだまだ魅力的なお店がいっぱいあるので、また来なければ! と思っています。目標? それは、もちろん全店制覇です!」
3軒はしごをしたとは思えないほど、しっかりとした、そして軽快な足取りで帰路につく宇賀さん。その「虎ノ門横丁」への再訪は、思いの外、早そうだ。
ワンピース¥25,300(セルフォード/セルフォード ルミネ新宿1店 / Tel.03-6279-4750) イヤリング¥17,00 リング¥14,850(ともにドーターズジュエリー/ Tel.0254-41-1770) サンダル¥13,750(ダイアナ/ダイアナ 銀座本店 / Tel.03-3573-4005)
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宇賀なつみ|Natsumi Uga
1986年東京都生まれ。2009年立教大学社会学部卒業後、テレビ朝日入社。『グッド!モーニング』『羽鳥慎一モーニングショー』など、情報・バラエティー番組を幅広く担当する。2019年フリーランスに転向。テレビ朝日『池上彰のニュースそうだったのか!!』、関西テレビ・フジテレビ系『土曜はナニする!?』にレギュラー出演中。TOKYO FM『SUNDAYʼS POST』、TBSラジオ『テンカイズ』ではラジオパーソナリティも務める。
虎ノ門横丁
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住所=虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー 3F営業時間=11:00〜23:00(店舗により異なる)※虎ノ門横丁では、店舗により営業時間を変更させていただいております。詳細は「【重要】虎ノ門ヒルズおよび新虎通り周辺エリアの営業状況について」をご確認ください。※一部店舗では事前オンライン予約可
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