NICE FOOD AND TEA PAIRING!

“ティーペアリング”という、コースメニューの新たな地平

ノンアルコールドリンクのスマートさや美味しさが改めて見直されつつある昨今。中でも、料理とお茶のマリアージュを楽しむ“ティーペアリング”に注目が集まっている。料理との相乗効果を狙うべく、茶葉の選定、その抽出方法や提供スタイルにまで趣向を凝らした、腕利きソムリエたちの知識と技を、今こそ存分に楽しみたい。

TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY FUMIAKI ISHIWATA (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC

❶ スパイスや柑橘を組み合わせた、料理の迫力と余韻に負けないティースタイル
——Réglisse(レグリス)

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1/8提供する直前までスパイスを漬け込み、ワイングラスに注ぎ入れる際に取り除いている。茶葉抽出後に急冷し、水出しのようにスパイスを漬け込む。グリーンの鮮やかさを保ちつつも、漬け込むことによって色調もしっかりし、照りが出る。
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2/8昆布出汁をベースに、ムール貝の旨味を加え、オリーブオイルで整えた、素麺を想起させるカッペリーニ。具材はオマール海老、アワビ、真鯛など。トッピングしたキャビアのまろやかな塩味と、ムール貝のコクを味わいたい。
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3/8抽出時間を長く取った濃厚なフレーバーティーに、“清見オレンジ”を合わせる『レグリス』オリジナルのティースタイル。料理のソースに柑橘のニュアンスを発見したことがヒントとなった。
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4/8オレンジジュースをグラスの底に沈め、それからお茶をゆっくりと注いでいる。液体が2層に分かれたビジュアルは、まるで「テキーラサンライズ」のようだ。
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5/8長野・塩尻市の本州鹿のタンと、岡山・倉敷の猪のタンの炭火焼き。鹿はシンプルに塩レモンで、猪は骨を煮詰めたフォンドボーに赤ワインを加えたタレソースでいただく。
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6/8現在、席数を以前よりも少なくして、個々のスペースを広く取っている。またランチタイムもゆっくりと楽しめるように、夜のコースメニューを昼時間にも提供中だ。逆に、夜時間ではアラカルトメニューやショートコースなども用意。時短営業中でも『レグリス』の味を楽しめる工夫が施されている。
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7/8仕入れたジビエ肉の骨や羽をシェフ自ら加工したアート作品。年を追うごとにこの作品も成長している。
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8/8波多野猛シェフが供する料理は、洋食のテイストを加えたカジュアルフレンチ。ジビエは通年で提供、オマール海老のエビフライ、トリュフオムレツは是非一度オーダーしたいフラッグシップメニューだ。

オリジナルモクテルとお茶ベースのアレンジドリンクを組み合わせた新感覚ノンアルコールペアリングを提供するのがここ、『レグリス』だ。中でも波多野猛シェフらしいジビエ肉の迫力と余韻に負けないようにと、ソムリエが工夫を施したティースタイルは、まるで芳しい香水のような存在感を放ちつつも、料理にぴったりと寄り添っている。

夏の名残りを感じさせる冷前菜「カッペリーニ」に合わせるのは、カリフォルニア・マイティリーフ社の「ホワイトオーチャード」。これは、緑茶にメロンや白桃の甘やかな香りを加えたフレーバーティーだが、独自にシナモンスティック、スターアニス、カルダモン、コリアンダーシードを3日間じっくりと漬け込む凝りようだ。ソムリエ曰く「夏に提供したいグリューナー・ヴェルトリーナー品種の白ワインに見立てました。爽やかさと余韻のスパイス感がお料理を引き立てます」。

また温前菜「鹿と猪のタン 炭火焼き」に合わせるのは、エルダーベリーとハイビスカスのノンカフェインフレーバーティー。こちらは規定時間よりも敢えて抽出時間を長くして、ベリーの果実味を濃厚に引き出す工夫を施している。ジビエ肉の特徴である鉄分がベリーの風味と調和し、料理のバランスがよりエレガントに昇華するからだ。

しかもこのお茶は、“清見オレンジ”をグラスの底に沈めたカクテル仕立てで提供される。茶葉だけではもの足りない要素をプラスして、強いアロマによるドラマティックな感動を導いているのだ。コース料理の隣でもうひとつのストーリーを奏でるこのユニークなペアリングを『レグリス』では積極的に楽しみたい。

Réglisse(レグリス) 住所 東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ けやき坂通り3F 電話 03-6804-3306 営業時間 11:30〜15:00(L.O.13:00)/17:30〜20:00(L.O.19:00)、18:00以降はアラカルトのみ(L.O.20:00) 定休日 月曜 ※ノンアルコールペアリング¥3,300(3種)、¥5,500(5種) ※各種クレジットカード使用可

❷ 茶葉のポテンシャルに徹底して向き合える、ストロングスタイルのペアリング
——NéMo(ネモ)

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1/8ティーペアリングの内容は料理によって異なるものの、およそ5〜6種類程度。お茶のポテンシャルだけで勝負する正統派のペアリングスタイルだ。
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2/8女性の陶芸家によるオーダーメイドの磁器。ワイングラスのように飲み口が薄く、お茶の繊細な風味を存分に楽しめる。一煎ではもったいないので、臆せずお湯のお代わりを。
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3/8「穴子のベニエ マカダミアナッツ」は、根セロリのシャキッとした食感と共に、タイムの香りとレモンの酸味を効かせた揚げ料理。ペアリングのお茶がまるで最後のソースのように、口の中でさらっと溶けていく。
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4/8「東方美人」は、48時間かけて水から抽出。徹底して渋みを抑え、この高級茶の甘み成分を最大限に引き出すためだ。
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5/8皮面は香ばしくパリッと、身は絶妙な火加減でレアの甘みを残し、口中に多角的な味わいが広がる「梅色のポワレ」。焦がしバター、玉ねぎを使ったソースに加え、お茶の甘みが魚の旨味を引き立てる。
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6/8自然光が優しく降り注ぐ店内。フレンチといえば白のクロスを敷いたテーブルが一般的かもしれないが、『NéMo』にはかしこまった設えはなく、最高峰のフレンチを等身大に楽しめる雰囲気がある。
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7/8店内では完全に空間を別にした個室が1テーブル分用意されている。こちらを利用希望の場合は、予約時にスタッフにリクエストを。
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8/8厨房の様子はカウンター窓から窺うことができる。出来たての料理を最短でテーブルに届けたいとする根本憲一シェフの思いを実現したものだ。

2021年6月に開業、既に美食家の話題をさらっている青山の『NéMo』だが、この店ではオープン当初からティーペアリングに力を入れている。

それは、お酒がそれほど得意ではないという根本憲一シェフたっての願い。「さっぱりとしながらアロマが際立つお茶は、ワインの代替品以上の可能性を秘めている」という視点から生み出されたものだ。魚介を得意とする根本シェフの繊細な料理に対して、抽出温度はもちろん、提供時の液温やテクスチャーにまでこだわり抜いたソムリエの技が、まるで点を射抜くような精度で存在感を発揮する。

「穴子のベニエ マカダミアナッツ」に合わせるのは、静岡茶「おおいわせ」。敢えて80℃の高温で茶葉の旨味の過度な抽出を抑え、グリーンなニュアンス、フレッシュ感を強く引き出している。かぶせ茶ならではのヨード香は、穴子との相性も良く、テアニンが穴子の旨味を引き立たせ、カテキンの渋みが揚げ油を中和する。

静岡・下田から直送される「梅色のポワレ」には、台湾茶「東方美人」をペアリング。14℃前後という液温は、ボリュームのあるワインの提供温度に等しく、ポワレの火入れとも温度感を合わせたものだ。「東方美人」とは、ウンカが茶葉を噛むことで酵素を引き出し、ほかの茶葉にはない独特の香りと甘みを生み出した高級茶。人工的には作れない希少なお茶であることはもちろんだが、この魚料理との組み合わせがパーフェクトなマリアージュを奏でる。

『NéMo』では昼夜共におまかせコース料理のみ。その理由は、産地から直送される魚介の仕入れによるから。当然、料理に合わせてペアリングするお茶も変わってくるが、例えどんなメニューとなっても「ティーペアリングを選んで良かった」と、必ずや満足するクオリティーだ。

NéMo(ネモ) 住所 東京都港区南青山6-15-4 B1F 電話 03-5962-6085 営業時間 12:00〜L.O.13:00/18:00〜L.O.20:00 定休日 月曜(祝日の場合は翌火曜休) ※ティーペアリング¥3,200(ランチ)、¥4,600(ディナー) ※各種クレジットカード使用可

※ 2021年10月現在の情報となります。
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