WE ARE FISH LOVERS! AGAIN‼
『アルボール』古田崇シェフ ✕ 『イル・フリージオ』菅野大輔店長——今回は、菅野店長が『アルボール』を訪問。それぞれの“お魚愛”を今一度、語り尽くす!
古田崇オーナーシェフが神楽坂の本店に続き出店したのがこちら『虎ノ門ARBOL』。“Ocean to table”をテーマに、日本の海鮮食材をイタリアン仕立てにしている人気店だ。中でも注目したいのが、“クラフト・フィッシュ“と古田シェフが呼ぶ、極上養殖モノの一品。生産者のこだわりを受け継ぎ、旬の料理に落とし込む発想力に、『イル・フリージオ』菅野大輔店長も興味津々だ。この記事は、古田シェフが『イル・フリージオ』を訪問した2021年3月26日公開記事に対するアンサー企画。先の記事と合わせて、「虎ノ門ヒルズ」に君臨する魚料理ツートップの魚愛に溢れる話をどうぞお楽しみください。
TEXT BY TAKASHI TSUCHIDA
PHOTO BY CHISATO NOGUCHI (NDPP.)
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
美しく、リュクスな“職人仕事”
「こういう提供方法は、イタリアンではあまりやらないんですけれども(笑)、僕は若い頃にカリフォルニアキュイジーヌの店で修業してきたので、カリフォルニアっぽいイタリアンがあってもいいかな……と」(古田シェフ)
そう言いながら、古田シェフ自ら運んできたのが『虎ノ門ARBOL』オープン当初からの看板メニュー「オーシャンプレート」だ。イメージは、“刺盛りのイタリアン仕立て”。季節によって食材が入れ替わるものの、牡蠣とウニを中心にして、複数のシーフードがワンプレートにのせられている。
「“映え”を目指しています(笑)。結構皆さん、写真を撮ってくれますよ」(古田シェフ)
「それではひと口」と、生牡蠣を口に運んだ菅野店長が、古田シェフの目を見て、すぐさま「旨いですね!!」と第一声。
「牡蠣は、少しだけ火入れしています。お湯に白ワインとレモンを入れて香り付けしつつ、プリッとさせるために冷水に落としています」(古田シェフ)
「なるほど、だから食感がいいんですね。しかも、いくらを合わせることで、塩加減がちょうどいい。味付けはポン酢ですか?」(菅野店長)
「はい。自家製のポン酢を使っています。今日は北海道産の牡蠣に同じく北海道産のいくらをのせています」(古田シェフ)
菅野店長が次に手に取ったのが「海老のタルタル」だ。海老もわずかに炙ることで、本来の甘みを引き出している。素材の味を生かしてシンプルに提供するのがイタリアンなら、それを細やかな職人仕事でリュクスにアレンジするのが『ARBOL』流だ。
「うわっ、このウニととうもろこしも、すごく甘い! 甘みが効いていて美味しいです」(菅野店長)
「甘みと甘みを重ねて、相乗効果を狙っています。最近だと、カリフラワーにもウニが合うんで、いろいろチャンレンジしています」(古田シェフ)
「手が止まらない(笑)。無限にいけます! ウチでもやりたいな、この料理」(菅野店長)
ということで、もしも今後『イル・フリージオ』でウニの甘みを生かしたメニューが登場したら、それは今回の出会いによる成果物である。なにとぞ特別な気持ちでお楽しみくださいませ。
イタリアンに出汁、という新しい表現手法
続く2品目はパスタメニューだ。
「『水蛸とFish Eggの冷製イカ墨パスタ』です。トッピングには、3種類の子どもたち、金飛子、たらこ、いくらをのせました。こちらは今夏のお勧めメニューです」(古田シェフ)
「んっ!? 味付けは、何を使っているんですか?」(菅野店長)
「イカ墨を昆布出汁で伸ばして、そこに塩とレモンを加えています。完全にイタリアンにせず、敢えて和食の要素を加えて……」(古田シェフ)
「なるほどー、とても面白いですね」(菅野店長)
『虎ノ門ARBOL』では、野菜を煮るのにも昆布を使っているそうだ。
「すごい旨いです! うちの本店のパスタとは、また違った方向で」(菅野店長)
「『イル・フリージオ』プロデューサー、『アル・ケッチャーノ』の奥田政行さんは、塩とオリーブオイルを主体に、シンプルな形で鮨に仕立てていると思いますが、ウチはいろいろ投入しました(笑)」(古田シェフ)
それにしても、イタリアンに出汁、という新たな発想はどこから生まれてくるのか?
「もともと実家が鮨屋ですし、自分が初めに教えられたのも出汁でした。ブイヨンを取るよりも、出汁を取ることのほうが多かったので、だんだん出汁でもいいかなって(笑)。世界的にも、いま“UMAMI”が評価されています。その辺も踏まえつつ、和食が得意とする旨味は、これからも自信を持って使いたいと思います」(古田シェフ)
日本の生産者との繋がりが独自性を生む
さて、3品目は「高知県 ヒラマサの燻製 新生姜のタルタルソース」である。ソースは、新生姜をレモングラスに漬け込んで、水茄子と合わせたマヨネーズソース。ヒラマサは、鹿児島から取り寄せているそうだ。
「おぉ、スモークが効いていて、燻製の状態がすごくいい。このソースの香り、味わいともマッチしています」(菅野店長)
「ありがとうございます。燻製にすることで身が引き締まり、風味をギュッと閉じ込めることができるんですね」(古田シェフ)
「すごく旨いです。ところで新生姜というのも、これまたイタリアンでは見ないですが(笑)、アイデアは突然、閃くんですか?」(菅野店長)
「刺身で、生姜やわさびを使いますよね。そこから連想して、生姜が合うなら新生姜も合うんじゃないか、とか。それから生産者さんのお魚を視察に行った時に、その地域でほかに何が獲れるのかを確認しています。僕たちは知らなくても、地元の人達が昔から食べている優れた料理方法があるかもしれない。そこから広げていくことが多いかもしれません」(古田シェフ)
菅野店長はこの3皿のプレゼンテーションから、改めて、古田シェフの魚介に対する愛情を強く感じたそうだ。
「知識量がすごい。研究熱心な方だなと、つくづく思いました。生産者さんに寄り添っていく、一流シェフの生き様を見た気がします。今レストランは大変な状況ですが、僕らが出来ることって、彼らの食材を使わせてもらうこと。志のある生産者さんたちの気持ちを、料理で伝えることだと思うので」(菅野店長)
「僕はオーストラリアで修業していたんですが、日本に帰ってきて最初に思ったのは、もっと自国の食材を使えばいいのに……ということでした。高級店が出す、イタリアから取り寄せたリゾット米も確かに美味しいですが、コストを考えると、日本の農家さんに作ってもらったほうがいい。イタリアと完全に同じとはいきませんが、その分、アレンジを効かせていくほうが、僕たちならではのオリジナル料理ができるんじゃないかって」(古田シェフ)
単なるイタリアンではなく、シェフの感性を生かしたイタリアン。その方が、お客さんも楽しいという話で、今回も料理人同士で意気投合。“お魚愛”に溢れた「虎ノ門ヒルズ」の『虎ノ門ARBOL』と『イル・フリージオ』は、やはり日頃の意識レベルでお互いに通ずるものがあるようだ。
※ 2021年9月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
※ 虎ノ門ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一部店舗・施設の営業内容を変更しております。営業状況は定期的に変更がありますので、ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。
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