春といえばお花見シーズン。桜の下に仲間が集って食べる食事は格別なもの。しかし、その楽しみを1年のうち10日程度に限定するのはもったいない。そこで、東京ピクニッククラブの伊藤香織さんと福留奈美さんに、都市型ピクニックのポイントとコツを聞いた。
TEXT BY MIHO MATSUDA
PHOTO BY TOMO ISHIWATARI
視点を変えると、いつもの街が違って見える
いたるところに、小さな公園や緑地などのパブリックスペースがある東京。つい通り過ぎてしまいそうな場所だが、そこは格好のピクニックスポットだ。
「屋外にラグを敷いて座ってみましょう。視点が変わると都市の光景がいつもと違って見えます。ピクニックは都市空間を楽しむのに有効な方法です」
ピクニックするために、わざわざ郊外の広大な公園に出向く必要ないと、東京ピクニッククラブの共同主宰で、東京理科大で都市デザインを教える伊藤香織さんは語る。
「高度に密集した東京で庭を所有する人はごくわずか。でも、まちのパブリックスペースは“みんなの場所”なので、“あなたの場所”でもあります。だから自分のリビングを持ち出すつもりで、まちの空間をもっと活用しましょう。ピクニックなら、都会の中でも自然や季節を感じることができ、さらにそれが社交の場にもなります。芝生があるとやりやすいですね。身近な場所、集まりやすい場所で探してみましょう。例えば、皇居外苑は良質な芝生があり、駅からもすぐ。出張帰りの人がお土産片手にピクニックに参加することもできます」(伊藤さん)
休日のレジャーだけでなく、ビジネスランチにもピクニックはおすすめ。
「テイクアウトのランチをひと工夫すれば、すぐにピクニックになります。ラグはあると良いですね。青空の下なら、会議室の中では生まれなかったアイデアが飛び出すのでは」(伊藤さん)
注意したいのは、火気厳禁の場所が多いため煮炊きは基本的にNG。また飲酒を禁じている場所もあるため、事前にチェックしておこう。
都市型ピクニックはココがポイント!
では次に都市型ピクニックの利点と、気をつけたいポイントを教えてもらった。
ロケーションにテーマを設ける
「ガントリークレーンが建ち並ぶ海辺や、新幹線とモノレールが眺められる場所、高層ビルに囲まれた場所など、東京は風景のバリエーションが多い街。テーマを設けてピクニックサイトを選ぶのも都市型ピクニックならではの楽しみです」(伊藤さん)
デリやフードは近所で購入
都市型ピクニックの利点は、デリやフードを売っている場所が近くにあること。「ピクニックは準備が大変だと敬遠する人がいるかもしれません。でも、ピクニックサイトの近くのお店にどんなものが置いているのか把握しておけば、事前に準備するものは必要最低限で済みます」(福留さん)
ラグはテーブル。上がり込まずに囲むべし
ラグは集いの象徴。靴を脱いで上り込むお座敷形式ではなく、ラグにはフードを広げて、人は周りに腰をかける程度に。きれいなファブリックをラグにすれば、場が華やぎます。座ったり立ったり、芝生に寝転がったり、思い思いに自由に過ごそう。
遅れて参加する人は、温かいスープ/アイスクリームを手土産に
ピクニックは時間厳守とは無縁。遅めに到着するなら、その時間に皆が食べたいものを想像して、すぐに食べたい温度重視のフードを持参しよう。先に参加している人が遅めに来る人に頼むのもアリ。「遅れるのは迷惑」どころか、むしろ歓迎される存在に。
これだけはマスト!
ピクニックの基本アイテム
ピクニックの経験を重ねると、必要最低限のものがわかってくる。福留さんのピクニックセットも実にコンパクト。7つの必須アイテムを参考に、自分なりのピクニックスタイルを完成させよう。
❶ 紙皿ではない取り皿
シェフ手作りのデリなのに、紙皿ではどうしても残念感が。そこで、使いやすい大きさの取り皿や、カラフルな紙ナプキンを用意すると、ラグの上が華やかに。
❷ ガラス製のグラス
ワインがあるなら、紙コップでは味気ない。ガラス製のグラスを入れ子のようにして数種類持参すれば、ドリンク用のほか、ショットグラスにジャムやソースを入れるなど用途が広がる。ガラス製のグラスは重いので、ひとり2個を目安に。
❸ フォーク、ナイフ、スプーン類
プラスティックの使い捨てもよいのだが、使い慣れた小さめのカトラリーを持っていけばそれだけでチープ感は回避でき、さらにゴミの軽減にもつながる。ささいな心遣いが、楽しいピクニックのコツだ。
❹ 料理を入れる容器
お店のプラスティック容器そのままでは味気ないときに、籐のカゴなど料理を入れる容器があるとラグ上が華やぐ。東京ピクニッククラブではアンティークのピクニックセットもコレクションしている。会話のきっかけにもなりそうだ。
❺ カッティングボードとパン切りナイフ
野外にパンを置いておくと表面が乾燥しやすい。食べたい時に好きなだけカットできるカッティングボードとパン切りナイフはとても便利。サンドイッチを作って持っていくより、パンと具材だけ持って来て、各自が好きな具材を挟めばいい。
❻ 栓抜き・缶切り・ワインオープナー
せっかくのフードもこれがないと観賞用に! 飲み物のボトルには、シリコン製のボトル栓があれば、こぼしてしまう心配も軽減。
❼ 水平を確保するコースターやトレイ
芝生の上ではグラスが倒れやすいので、硬さのあるコースターやトレイなど、水平な場所を作ることができるアイテムは便利。
これらのポイントを踏まえて、あとは自分なりにカスタマイズ。春から秋にかけてのピクニックシーズン、思いっきり野外で楽しもう!
伊藤香織|Kaori Ito
東京ピクニッククラブ共同主宰。東京理科大学理工学部建築学科教授。博士(工学)。都市デザイン、都市解析が専門分野。アンティークのピクニックセットのコレクションは世界一。
福留奈美|Nami Fukutome
東京ピクニッククラブメンバー。フードコーディネイター。博士(学術)。テレビ・書籍・雑誌などのフードコーディネイト、レシピ提案、料理制作、食関連のセミナー講師、食のイベントや飲食店のメニュープランニングを行う。
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