PICK UP! 5 premium dining floor

犬養裕美子がチェック! 東京の新たなグルメスポット「プレミアム・ダイニング・フロア」5軒

六本木ヒルズのウェストウォーク5Fのリニューアルをきっかけに、「フロア全体が活気にあふれ、店選びが楽しくなった」とレストランジャーナリストの犬養裕美子さん。日本料理やスパニッュ、鰻専門店など気になる新店はまだまだある。犬養さんが新たに加わった5軒を食べ歩き、独自の視点で解説。おすすめメニューや楽しみ方も教えてもらった。

TEXT BY Mariko Uramoto

❶ 日本料理界の気鋭の職人がもてなす最新店
——よし澤(日本料理)

季節の移ろいを丸盆の上で表現する八寸。「彩り豊かできれいです」と犬養さん。

名店で培った日本料理の哲学を礎に、『銀座よし澤』、『ぎんざ 一二岐』をオープンし、両店でミシュランの星を獲得している話題の料理人、吉澤定久さん。二つの店を愛弟子たちに託し、本人は今秋から毎日、新店舗に立つ。そう、彼の技と感性を実際に目の前で楽しめるのが六本木店なのだ。
「この一皿のためにお客さんが訪れるという『銀座よし澤』のスペシャリテ「さわらのわら焼き」がここでも味わえる。10席ほどあるカウンターには席ごとに土鍋用のかまどを設置。シューッと音を立てて、ご飯が炊きあがる様子を間近で楽しめます」
銀座店にはなかった昼の定食にも注目と犬養さん。
「天然特大車海老フライ御膳は巨大な車海老が二尾ついて3,800円。少々贅沢かもしれないが、星付きレストランの味が楽しめると思えばお値打ち」
風情ある日本家屋を模した店は〈グランド ハイアット 東京〉に向かい合って立つ。室内の窓から、ホテルのテラスが借景として楽しめる演出も。

よし澤(日本料理) 接待に最適な個室は全4室。夜会席16,800円〜。昼会席6,000円〜。「天然特大車海老フライ御膳」は限定15食。

❷ 天然鰻の良質な脂をしっかり堪能できる地焼き
——鰻處 黒長堂(うなぎ)

季節の移ろいを丸盆の上で表現する八寸。「彩り豊かできれいです」と犬養さん。

うなぎ土鍋ご飯1人前6,800円〜(写真は4人前 / 鰻の量により値段が変わります)

東京では珍しい、蒸さずに焼く、地焼きで鰻を提供する専門店。使用する鰻はすべて国産。注文が入ってから、活きた鰻を手際よく一尾ずつ開き、串を打って、炭火でじっくりと焼く。白焼きだけでなく、蒲焼き、肝焼き、骨せんべいなど多彩な調理法で鰻を丸ごとふるまう。また、養殖と天然ものの食べ比べコースを用意しているのも特徴。両方を食べるからこそ、それぞれの良さがわかりやすい。
「個人的に地焼きが好きなので、東京にこういう店ができたのはとても嬉しい。天然ものはやっぱり脂が潔い。蒸して焼くより本来の旨味が際立つので、上質な天然鰻こそ、白焼きで食べるのが一番。ワサビをほんの少しつけて、“鰻の香り”を楽しみ、その本来の旨味もすっきり味わいたい。ちなみにこちらは蒲焼きのタレは甘さ控えめ。養殖鰻といえども、ここで扱う鰻は、素材がすっきりと後味がいい。うな重も品良くまとまっています」
天然鰻は手に入らない、と言われるが冬までなら上モノに出会える確率大。その味わいをとくと堪能あれ。

鰻處 黒長堂(うなぎ) 鰻珍味や串、蒲焼土鍋ご飯がついた「鰻食べつくし 国産鰻」16,000円〜。天然と国産鰻の食べ比べは25,000円〜。ランチ「鰻重」3,800円〜。

❸ モダン・スパニッシュ最前線。彩りあふれる料理をコースで
——ビキニ シス(スペイン料理)

北海道産の帆立とイカのプランチャ あさりとパセリのソース“サルサベルデ”(1,300円)

仔羊のカツレツ カリフラワーとポテトのピュレ(1,600円)

渋谷や赤坂、日本橋など飲食店激戦区で人気のモダン・スパニッシュ「ビキニ」の最新店。美食の街として知られるスペイン・カタルーニャ地方の伝統の味と日本の食材を融合して表現し、美しい色彩の料理の数々を月替わりのコースで楽しめるのが「シス」のコンセプトだ。監修を行っているスペイン人シェフ、ジョセップ・ビオラナ・ビニェスさん曰く、「もっともクオリティが高い店舗になるだろう」という自信作。
「コースに出てくるピンチョスは、ベースに全粒粉で作ったパンを使っていて、麦の香ばしさを感じます。サイズを統一していて“洗練されたピンチョス”という新鮮な印象を持った。店内はシェフの趣味だというレゴで作った壁があり、ポップなイメージ」
気軽に立ち寄れるカウンター席、カジュアルな集まりに最適なソファ席、接待にも利用できる個室など、シチュエーションや気分によって使い分けができる。

ビキニ シス(スペイン料理) ディナーはイベリコ豚や魚介パエリアが食べられるコースが5,000円〜。ランチは「季節のカルドソ」1,500円のほか、2つのコースがある。

❹ 老舗の遊び心を感じる、ラグジュアリーな串揚げ
——串の坊(串揚げ/串カツ)

「1950年、大阪・法善寺で創業した串カツ屋が今や全国に30店展開。その最新店は、アーティスティックな空間とシャンパンを充実させ、さらにはトッピングにキャビアを用意!個人的にはこういうバブルっぽい空気感は嫌いではない。“老舗”だからこそできるお遊びだと思う」
もちろん、豪華な設えや素材だけで注目を集めているわけではない。守り抜いてきた老舗のこだわりも健在だ。
「きれいにカラリと揚がるのは、精度の高い油を使っているから。香ばしくて、かつ軽い。この油あって、野菜も魚介も肉もおいしさを増している」
カレー風味のレンコンやアスパラガス1本揚げなど、野菜のおいしさを引き出せるのは揚げ物ならではと感じる、とも。
「イクラのせ、生ウニのせなどヒルズ限定メニューも組み込んでくれる。トッピングにキャビアを別注できるが、これは乗せるより、そのままでシャンパーニュを合わせる方が箸休め的でいいのでは」

串の坊(串揚げ/串カツ) 旬の食材を織り交ぜた「おまかせコース」は12本で約6,000円。15時までのランチタイムは串カツが8本ついた「潮騒」1,800円などお得なセットメニューも。

❺ エンタメ感あふれる焼肉と極上の赤身肉
——赤身専門 にくがとう(焼肉/創作)

和牛赤身ロック(1,650円)、シャンピニオン・ド・パリ(1個500円)

赤身肉をメインにした焼肉店として、人形町で開業。特製のタレと生卵をくぐらせていただく「イチボの一枚焼き」、ニンニクとバターを添えた「タンのブルゴーニュ風」など独創性あふれるメニューで話題を呼び、国内外から多くの人が足を運ぶ。
「前菜に肉寿司、箸休めに卵かけ御飯、〆は冷製パスタなど、バラエティに富んだコースを組み立てていて、しかもコースは6,000円台もあり良心的」。さらにグレードをあげたヒルズ用の裏1万円台コースも必見。
オーナーの三浦剛さんは生粋の肉好き。仕入れる肉は日本各地で信頼できる生産者のみから取り寄せる。また、自身も山形県で牛の飼育にも関わっている。仕入れた肉は部位ごとに厚みや角度などを変えてカッティング。カンボジア産のペッパーをアクセントに効かせたり、タスマニアの粒マスタードを添えたりと、肉の個性に合わせて、味付けを変化させている。随所にこだわりが光る、エンターテインメント性溢れる焼肉と極上赤身肉をぜひ。

赤身専門 にくがとう(焼肉/創作) 肉メニューだけでなく、寿司、パスタ、サラダがセットになった六本木ヒルズ限定の「VIPコース」6,500円と9,000円と裏1万円台。ランチタイムは「定食 赤身 上牛かつ御前」1,650円など。

※初出=プリント版2018年11月1日号
※掲載の情報は変更になる場合があります。詳しくはお出かけの際に店舗にご確認ください。


profile

犬養裕美子|Yumiko Inukai
レストランジャーナリスト。東京を中心に、世界の食文化やレストラン事情を取材。「VOGUE JAPAN」「DISCOVER JAPAN」などの雑誌やWEBで執筆。独自の視点によるレストラン紹介は幅広い世代に支持されている。農林水産省顕彰制度「料理マスターズ」審査委員。