晩秋から冬にかけては、新酒などワインの美味しい季節。中でも昨今人気を博しているのが、自然派のカテゴリーに属する日本のワイン。“ヘルシー”、“二日酔いしない”などナチュール全般の魅力に加え、深遠な哲学を持ち、若い感性が光る日本の自然派ワインは、進化を続けています。この季節、個性的な国産自然派ワインの味わいに触れれば、気付きに満ちたその魅力にきっとハマるはず。ここでは、そんな日本の自然派ワインや日本限定商品にこだわったレストラン3軒をご紹介します。
TEXT BY YOSHIKO ENDO
EDIT BY TM EVOLUTION.INC
❶ 併設のバーでワインを試してから購入もできる
——no.501(ナンバーゴーマルイチ)
1/6左のワインは宮城県のワイナリー、ファットリアルフィオーレ の「オオノフィールドブレンド2017」ロゼ ¥4,720。右は岡山県のワイナリー、ドメーヌテッタの「ブランドピノノワール2017」¥4,100。どっしりとした重みのある自然派の白ワイン(価格は共に税込)。
2/6所狭しとワインのボトルが並ぶ店内。何を購入するべきか迷ったら、ソムリエに相談を。お祝いやプレゼントに購入して行く人も多いとか。
3/6広島産牡蠣のオリーブオイル漬け ¥900。オーナーが広島出身で、実家から送られてくる野菜をはじめ、広島の食材がふんだんに使われる。牡蠣は白ワインと鷹の爪、ニンニクを入れさっと火入れをして、オリーブオイル漬けに。白ワインが牡蠣の旨味をより引き立てる。
4/6広島世羅町産とろとろ卵のオムレツ ¥900。野菜と牛肉、赤ワインで2日間かけて仕込む自家製デミグラスソースは、酸味が効いてとろとろの卵と相性ぴったり。料理の仕込みにはワインがふんだんに使われ、味わいの決め手になっている。
5/6バーと販売で接客してくれるソムリエの益谷真歩さん(左)、シェフの原賀愛夢さん(右)。快活な若いスタッフが店を盛り立てている。
6/6ドアを開けると温度と湿度が調節されたワインセラーになっており、その奥にバーがある。
国産とフランス、イタリア、ドイツ、スペインなど輸入物の自然派ワインを扱う、バー併設の酒店。ブランデー、日本酒、ビールもあり、いずれも自然派の酒をラインナップ。ワインは常時600~700種類が揃う。オーナーとソムリエが、造り手の個性や芸術性を感じられる、実際に試飲して美味しいと感じた自然派ワインのみを仕入れている。
各銘柄、入荷数が少ないため、気に入ったらその場で購入するのがおすすめだ。奥のバーでは手作りの温かい料理と共に、10種類ほどのワインを楽しむことができる。中には週2回以上通う常連もいるが、いつ来ても違うワインを試せるのは品揃え豊富なこの店ならでは。もちろん、バーで試したワインが気に入ったら、店頭で購入もできる。また逆に、店頭でボトルを購入し、抜栓料¥2,000追加でバーに持ち込んで飲むことも可能。
ソムリエの益谷さんが、グラスワインを選ぶ時もボトルを購入する際も、丁寧に説明してくれるのも嬉しい。同店では2018年12月にドメーヌテッタで醸造された自然派ワインを『no.501』からリリース。ワイン好きなら是非チェックを。
TEXT BY DAISAKU NISHIMIYA
no.501(ナンバーゴーマルイチ) 住所 東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑1F 電話 03-6721-0510 営業時間 13:00〜23:00 定休日 不定休 ※カード使用可 ※カード使用可 ※小売販売のワインは全て税抜、バーは全て税込
❷ 和食×自然派ワインの新境地
——葡呑(ブノン)
1/6農楽蔵の自然派ワイン「NORA 2017」の白と赤。白はシャルドネで、冷涼感と瑞々しいミネラル感が特徴。赤はベリー系の果実のニュアンスがあり、飲んだ後、身体に染み入るような味わい。共にボトルで¥8,900。
2/6古い木材の温もりが居心地のいい店内。落ち着ける2階席もある。
3/6あん肝ポン酢 ¥900。新鮮なあん肝を冷水と酒と塩で小一時間血抜きし、筋を取り成型、蒸し上げる。橙のポン酢をかけて提供。さっぱりと軽い塩気で、あん肝本来の持ち味を味わえる。
4/6牡蠣豆腐 ¥1,400。牡蠣、ネギ、きのこ、豆腐の入ったシンプルな鍋で、牡蠣の旨味を存分に味わえる。「カキは鍋にするといい出汁が出る三陸ものを使うことが多いです」と店主の中湊さん。夏場は深川豆腐など、季節ごとの食材を使った鍋を提供している。
5/6店主兼料理長の中湊茂さん。日本料理の長い経験を経て、現在では複数の飲食店を運営している。国内はもちろん、海外で開催される自然派ワインのイベントにも、『葡呑』名義で多数招聘されている。
6/6西麻布交差点から少し奥まった裏道にある。エントランスも店内も、隠れ家的な雰囲気。
古民家三軒分の木材を使用したというレトロな雰囲気の中、ナチュラルなワインと和食の組み合わせを提案する稀有な存在。料理は、店主の中湊茂さんが豊洲市場で旬の魚と野菜を自らの目利きで確かめ調理、提供している。特に魚は、その日に上がったものを、その日に入手できるよう手配しているとか。「メニューは、季節が変わるごと、また食材の仕入れ状況により日々変化していきます。カジュアルだけれど、旬を感じる気の利いた料理をお出しすることを心がけています」と中湊さん。
ドリンクには、日本酒、焼酎なども様々あるが、主力のワインは、基本的に自然派のみを置いている。輸入ものと国産ものがあり、デイリーで出せる銘柄が異なるので、オーダーはスタッフに相談を。
ディナーの前に食前酒を飲む店として、あるいは食事と酒をしっかり楽しむ一軒目、そして遅い時間からの二軒目と、様々な利用の仕方ができるのも魅力。最近では外国人観光客にも人気で、リクエストに応えて牛バラ赤ワイン煮込みや和牛ステーキなどもメニューに加わっている。
PHOTO BY YUJI YAMAZAKI(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
葡呑(ブノン) 住所 東京都港区西麻布4-2-14 電話 03-3406-2207 営業時間 18:00〜L.O.24:00(木曜・金曜〜L.O.翌2:00) 定休日 日曜・祝日と不定休(電話で確認を) ※カード使用可 ※国産の自然派ワインは仕入れにより品揃えが異なる ※価格は税別
❸ 自然派ワインとクリエイティブな料理に酔うビストロ
——Blanc(ブラン)
1/6赤ワインは北海道・余市で完全無農薬のブドウを栽培している「ドメーヌ・ド・タカヒコ」から。ビオロジックで野性酵母、完全全房で自然発泡が特徴。価格未定。白ワインはオーストラリアの造り手「ヤウマ」から日本に向けたメッセージのワイン。名前は「無理しないで」。オレンジやレモンなどを思わせる柑橘系の酸味がある。日本人には、堅苦しくかしこまってではなく、もっと気軽にワインを飲んで欲しいという想いが込められているそう。価格未定。
2/6正面入口右手の店頭ではパンが販売されている。バゲットやカンパーニュ、惣菜パン、甘いパンと25種類ほどが揃う。高知から送られてくる野菜を練りこんだものなど、限定のパンも用意。共同経営者でパン職人の和田尚悟さんが毎朝手作りして提供している。
3/6白にんじんと金時にんじんのババロア(写真は0.5皿分)¥1,200。根菜の優しい旨味と、上にのったイクラの塩気が絶妙にマッチする一品。刻んだ玉ねぎを煮詰め、牛乳で溶いた2種類のにんじんピューレを合わせ炊いてからババロア状に。
4/6炙りサンマのヨーグルトソース ¥1,400。炙った旬のサンマと高知産のシャキシャキした根菜のサラダ。ソースはギリシャヨーグルトに蜂蜜と鰹節などを合わせたもので、脂ののったサンマに爽やかなアクセントを加えている。
5/6日々アップデートされる、自然派ワインに合うメニューがゲストを愉しませる大谷陽平シェフ。自ら日本各地の自然派ワインを探求する。
6/6こぢんまりした店内は、テーブルとカウンターの16席。ランチ時は近隣のオフィスワーカーで賑わう。ディナーはなるべく予約を。
虎ノ門にひっそりと佇むこちらは、ベーカリーを併設するビストロ。国内と海外から集められた自然派ワインが60種類ほど揃う。大谷陽平シェフが集めるのは、いずれも「物語のある」こだわりの自然派ワインばかりだ。
銀座『ラール・エ・ラ・マニエール』、丸の内『ポワンエリーニュ』で働いていた大谷シェフは、その後渡仏。カンヌのアカリ家専属料理人に。一時帰国し、目黒『ル・ヴェールヴォレ』で研鑽を積み、パリの本店『ル・ヴェールヴォレ』で更なる経験を重ねた。「パリの店が自然派ワインを中心に扱う店でした。実際、自分でも美味しいと思うものが自然派ばかりだったので、日本でもそれを扱うビストロをやりたいを思ったんです」と語る。
料理は、パリ仕込みの基本に先進の感性が加味され、独創的な世界観を生み出している。コース仕立てにして食べてもいいし、大勢でシェアしながら楽しんでもいい。大谷さんが造り手の努力に感動したという北海道や新潟などの国産自然派ワインは、生産量が少なく入手困難な銘柄が飲めることも。11月後半から12月にかけてリリースされることが多いので、是非この機会にチェックしてみたい。
PHOTO BY YUJI YAMAZAKI(DAISAKU NISHIMIYA OFFICE)
Blanc (ブラン) 住所 東京都港区虎ノ門1-11-13 電話 03-6273-3164 営業時間 11:30〜L.O.14:00/18:00〜L.O.22:15(パンの販売7:00〜) 定休日 第1、第3土曜(第2と第4は予約貸切のみ営業)、日曜・祝日 ※カード使用可 ※価格は全て税別
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