秋はワインが美味しい季節。新しいワインとの出会いを求めて、ヴァン・ナチュールや独立系生産者など、ワインにこだわりのあるお店へ。ワインラバーが多く集まる港区のお店の中から、「BRUTUS」や「Hanako」でレストラン連載を担当する、フードライター 佐々木ケイさんが3店舗を厳選。
TEXT BY kei sasaki
PHOTO BY ayako masunaga
バリエーションが増えた、
ナチュラルワインと食のマリアージュ
ナチュラルワインが市民権を得て、日常使いできるワイン酒場が町のあちこちにでき始めた5~6年前から、ワインはより親しみやすく、身近なものになりつつある。レストランやビストロ、トラットリアなどから、楽しむシーンはどんどん広がり、多様化しているのも興味深い。そんな中、ワイン好きが熱い視線を注いでいるワン&オンリーな店をご紹介しよう。
農薬や化学肥料に頼らず自然な農法で育てたぶどうを、そのまま発酵させて造るナチュラルワイン。国内ではストリート発の小さなワインバー等を中心に人気に火が付いたが、今や、レストランでも注目の的。世界での評価を視野に入れたガストロノミーレストランがナチュラルワインを積極的にオンリストする一方で、居酒屋や焼鳥専門店まで、楽しめる場はどんどん広がっている。ありそうでなかった店をチェックしておけば、いざというときに役に立つはずだ。
❶ Pirrouette(ピルエット)
居心地はカフェ、料理はレストランクオリティ。浅草「オマージュ」をはじめ、フランスでも経験を積んだ小林直也シェフが作るフレンチを柱に、昼はワンプレートランチから、夜はワインバー使いもできる使い勝手の良さが魅力。さらにこちらでは、料理に使われている野菜やフランス産のバター、チーズ、自家製パン、生ハム、ワインなどを販売するエピスリーを併設。ウォークインのセラーには、フランスのナチュラルワインを中心に約250種のワインをずらり。店で体験したおいしさの一部を、自宅に持ち帰ることができる。
❷ Ordi-verre(オルディヴェール)
西麻布「ル・ブルギニオン」で約10年、ソムリエを務めた戸田健太郎さんが2017年、白金高輪にオープンした「オルディヴェール」。「ル・ブルギニオン」といえば、東京を代表するフレンチの一軒であり、愛好家垂涎のブルゴーニュワインが揃うことで知られる。クラシックな造り手、熟成させたワインならではの味わいや料理と合わせた提案などを熟知した戸田さんは、土地の歴史を映すような王道ワインと、個性豊かな新世代の造り手が脚光を浴びるナチュラルワインを2本柱で紹介。クラシックをベースに現代の風を感じるフレンチは、コースでもアラカルトでも楽しめ、深夜はバーメニューを用意しワインバー営業をする懐の深さだ。
❸ 赤い部屋
異色の店ながら、ワインファンのみならず、東京の夜を遊ぶオトナ達を虜にしているのがこちら。名の通り、店内は赤一色。バックバーにはレコードがずらりと並び、BGMというにはやや大きなボリュームで、ソウル、ジャズ、ファンクなどが流れる。この空間で関西風のお好み焼きとナチュラルワインをどうぞ、というから面白い。オーナーでソムリエールの松坂愛さんと、厨房を仕切る飯田貴志さんは、ともに青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」の出身。一見、キャラ勝負な店と思われがちだが、ブルーノート時代からナチュラルワインを扱ってきた松坂さんのワインの提案、サービスは安心のクオリティ。お好み焼き以外のつまみも飾らず、ちょっと気が利いていて、ワインに馴染みがない人でも心地よく酔えること請け合いだ。
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