tokyo wine bars & restaurants

こだわりのワインを求めて秋の街へ——フードライター 佐々木ケイが選ぶ3店

秋はワインが美味しい季節。新しいワインとの出会いを求めて、ヴァン・ナチュールや独立系生産者など、ワインにこだわりのあるお店へ。ワインラバーが多く集まる港区のお店の中から、「BRUTUS」や「Hanako」でレストラン連載を担当する、フードライター 佐々木ケイさんが3店舗を厳選。

TEXT BY kei sasaki
PHOTO BY ayako masunaga

バリエーションが増えた、
ナチュラルワインと食のマリアージュ

ナチュラルワインが市民権を得て、日常使いできるワイン酒場が町のあちこちにでき始めた5~6年前から、ワインはより親しみやすく、身近なものになりつつある。レストランやビストロ、トラットリアなどから、楽しむシーンはどんどん広がり、多様化しているのも興味深い。そんな中、ワイン好きが熱い視線を注いでいるワン&オンリーな店をご紹介しよう。

農薬や化学肥料に頼らず自然な農法で育てたぶどうを、そのまま発酵させて造るナチュラルワイン。国内ではストリート発の小さなワインバー等を中心に人気に火が付いたが、今や、レストランでも注目の的。世界での評価を視野に入れたガストロノミーレストランがナチュラルワインを積極的にオンリストする一方で、居酒屋や焼鳥専門店まで、楽しめる場はどんどん広がっている。ありそうでなかった店をチェックしておけば、いざというときに役に立つはずだ。

❶ Pirrouette(ピルエット)

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1/3左:八角のようなフレッシュ感、甘みを感じるスパイスや果実のコンポートのような複雑な香り。ドメーヌ レオンボッシュ ゲヴェルツトラミネール 2016 ¥5,500、右:上品なテクスチャーとともに、チョコレートのビター、心地よい酸味が感じられる。ボリューム感のある肉料理に。ジンコスタ/ラ バスティード サンヴィンセント ¥4,800
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2/39月5日にスタートする秋のコースメニューから。新鮮な甘鯛のうろこを松笠に見立て、栗やマッシュルームなど季節の食材を添えた秋らしい一皿。ワインの香りのリゾットとともに。「甘鯛の松笠焼き 赤ワインリゾット 栗のラペ」コース料金¥8,000(税・サービス料別)※9/5より、レストランでのみ提供(終了時期は要問合わせ)
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3/3ピルエット ワインは、ブルゴーニュやボルドーを中心に作り手を厳選。レストラン、カフェ、エピスリーの3つの空間を備え、ガストロノミーから暮らしの食まで様々なシーンで利用することができる。

居心地はカフェ、料理はレストランクオリティ。浅草「オマージュ」をはじめ、フランスでも経験を積んだ小林直也シェフが作るフレンチを柱に、昼はワンプレートランチから、夜はワインバー使いもできる使い勝手の良さが魅力。さらにこちらでは、料理に使われている野菜やフランス産のバター、チーズ、自家製パン、生ハム、ワインなどを販売するエピスリーを併設。ウォークインのセラーには、フランスのナチュラルワインを中心に約250種のワインをずらり。店で体験したおいしさの一部を、自宅に持ち帰ることができる。

❷ Ordi-verre(オルディヴェール)

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1/3左:果汁とともに果皮を漬け込んで仕込むオレンジワイン。タンジェリンの甘い香りと、わずかにジンジャーのニュアンス。スモールフライ タンジェリンドリーム 2017 ¥1,296(グラス)、¥7,560(ボトル)、右:りんごの蜜、黄桃の甘いニュアンスが熟成。ローランバルツ ピノグリ 2005 ¥1,350(グラス)、¥8,100(ボトル)※すべて税込
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2/3しっとりしたウサギ肉のガランティーヌを、シェリービネガーとフォンドボライユを絡めたトウモロコシのソテーと、ピュレで楽しむ。中に隠されたゴボウの香ばしさもワインを呼ぶ1品。ローランバルツ ピノグリと合わせて。「ラパンのガランティーヌとトウモロコシのコンビネーション」¥3,024(※写真はコースポーション)
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3/3オルディヴェール ナチュラルワインとクラシックワインを中心に取り揃える。ゆったりと料理を楽しむテーブル席のほか、カウンターもあり、21:00以降はバーとしても利用できる。

西麻布「ル・ブルギニオン」で約10年、ソムリエを務めた戸田健太郎さんが2017年、白金高輪にオープンした「オルディヴェール」。「ル・ブルギニオン」といえば、東京を代表するフレンチの一軒であり、愛好家垂涎のブルゴーニュワインが揃うことで知られる。クラシックな造り手、熟成させたワインならではの味わいや料理と合わせた提案などを熟知した戸田さんは、土地の歴史を映すような王道ワインと、個性豊かな新世代の造り手が脚光を浴びるナチュラルワインを2本柱で紹介。クラシックをベースに現代の風を感じるフレンチは、コースでもアラカルトでも楽しめ、深夜はバーメニューを用意しワインバー営業をする懐の深さだ。

❸ 赤い部屋

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1/3左:長野県塩尻の城戸ワイナリーによる、少し乳酸やハーブのような爽やかさを感じるすっきりしたワイン。城戸 ヴェルデレー ¥5,000(ボトル)、右:フランス・ラングドックのナチュラルワインチェリーのような香りで。後味はすっきりとしたドライ。すいすい飲める微発泡。ラ・ボエム ミュスカ ロゼ ペティアン ナチュレル ¥8,000(ボトル)
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2/3どろソースとワインを煮詰めたオリジナルソースで仕上げた、ワインに合う焼きそば。九条ネギ、紅生姜、青のりをたっぷりのせて、半熟の目玉焼きを崩しながらいただく。焼きそば ¥1,450
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3/3赤い部屋 4,000枚近いレコードは70〜80年代のソウル、ジャズを中心に、山下達郎などの和ものも取り揃える。ワインは9割がナチュラルワインで日本の生産者も多い。お好み焼きや焼きそばのほか、チーズなど、ワインに合うフードも充実。グッドミュージックとおいしいワインを、気取らないお好み焼きや焼きそばと一緒に。

異色の店ながら、ワインファンのみならず、東京の夜を遊ぶオトナ達を虜にしているのがこちら。名の通り、店内は赤一色。バックバーにはレコードがずらりと並び、BGMというにはやや大きなボリュームで、ソウル、ジャズ、ファンクなどが流れる。この空間で関西風のお好み焼きとナチュラルワインをどうぞ、というから面白い。オーナーでソムリエールの松坂愛さんと、厨房を仕切る飯田貴志さんは、ともに青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」の出身。一見、キャラ勝負な店と思われがちだが、ブルーノート時代からナチュラルワインを扱ってきた松坂さんのワインの提案、サービスは安心のクオリティ。お好み焼き以外のつまみも飾らず、ちょっと気が利いていて、ワインに馴染みがない人でも心地よく酔えること請け合いだ。