コロナ禍によって、私たちを取り巻く世界は一変しました。これからの未来を、私たちはどう生き抜いたらよいのでしょうか——。そこで、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーの「SPBS TORANOMON」の佐和千晶さんと、六本木ヒルズの「六本木 蔦屋書店」の野中公恵さんに、おたがいの店舗を訪ねて3冊ずつ計6冊の推薦図書をセレクトしていただきました。
TEXT BY MIHO MATSUDA
「新しい働き方」のヒントになる6冊
❶ DtoCという新しいファッションビジネスの形態
——『すこやかな服』マールコウサカ
「六本木 蔦屋書店」野中さんが「SPBS TORANOMON」で選んだ1冊
「『新しい働き方』と聞いて、まず頭に浮かんだのがこの本でした。著者のマール コウサカさんは、「foufou」というブランドのデザイナーです。このブランドは、直接お客様に届ける「DtoC」を実践しており、実店舗を持たず、オンラインで販売しています。SNSでお客様の疑問にていねいに回答するなど、細やかなコミュニケーションで、満足のいく商品に導く方法は、新しいアパレルのあり方であり、これからのファッションや物流のあり方だと感じました」
❷ セレクトショップのパイオニアが見据える未来
——『モード後の世界』栗野宏文
「SPBS TORANOMON」佐和さんが「六本木 蔦屋書店」で選んだ1冊
「六本木 蔦屋書店さんで最初に目に留まったのがこの1冊。著者は〈ユナイテッド アローズ〉の創業者のひとりであり、現在も同社のクリエイティブ・ディレクションを手掛けている栗野宏文さんです。セレクトショップの先駆けであり、いちはやくサスティナブルな取り組みをするなど常に世の中の先を読んできたUA。この本ではそんなブランドを支える著者の社会の変化を捉える力や、ニーズをキャッチするマーケティング感覚の鋭さを改めて感じました。ファッションの近代史がまとめられているのですが、モード終焉後、これからのファッションの行方を考える上で非常に興味深い1冊です。ファッション業界以外の方も参考になると思います」
❸ 今、求められているのは「社会の変え方」のイノベーション
——『未来を実装する』馬田隆明
「六本木 蔦屋書店」野中さんが「SPBS TORANOMON」で選んだ1冊
「〈テクノロジー〉〈イノベーション〉〈スタートアップ〉は、『六本木 蔦屋書店』と『SPBS TORANOMON』両方に通じるキーワードですが、この本の冒頭には、『今の日本に必要なのは、注目されがちな「テクノロジー」のイノベーションではなく、むしろ「社会の変え方」のイノベーションなのではないか』とあるんです。コロナによって、リモートワークが始まり、最初に話題になったのが、契約書の印鑑ををどうするかという問題でした。技術的には電子署名で印鑑の問題はクリアされているのに、受け入れる社会が追いついていない。本書は社会がテクノロジーをいかに受け入れるかが書かれているのです。これからの新しい働き方を考えるにあたり、テクノロジーに追いつく社会の整備が大きなテーマになるのではないでしょうか」
❹ データ社会に生きる現代人は必読の統計学入門書
——『統計学が最強の学問である』西内啓
「SPBS TORANOMON」佐和さんが「六本木 蔦屋書店」で選んだ1冊
「組織の中で意志決定をするにあたり、エビデンスが必要不可欠になった現代。あらゆる職種においてデータ解析や理系的な思考、数字から読み取る力が求められています。約8年前に出版された本書は、わかりやすい事例をもとにした統計学の入門書です。統計学を知ることで、原因に早くたどり着くためのリサーチ力が自然と鍛えられたり、どんな福利厚生が社員のモチベーションを上げるのかなど、感覚や経験に頼りがちなことにも次の手を打つことができます。どんな職種にも通じるものがあるので、全ての働く人におすすめします」
❺ 変化の時代にこそ取り入れたい、“アート思考”
——『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』末永幸歩
「六本木 蔦屋書店」野中さんが「SPBS TORANOMON」で選んだ1冊
「ここ数年、ビジネスにアート思考を取り入れようという動きがありますが、コロナ以前なら、それは経営者だけの話で、遠い存在だと思っていた方も多いのではないでしょうか。コロナ以降、働き方を含め、これまでの経験値が通用しなくなったときに、アート思考は、働く人すべてに必要なことだと、私自身も実感しました。本書は中高生向けの美術の授業をまとめたものです。堅苦しくなくすぐに読むことができるので、待ったなしで変化を迫られているオフィスワーカーの方にとって、現状を打破する手助けになる1冊なのではないかと思います」
❻ 最強投資家が説く、普遍のリーダー力
——『WHO YOU ARE』ベン・ホロウィッツ
「SPBS TORANOMON」佐和さんが「六本木 蔦屋書店」で選んだ1冊
「シリコンバレーの著名な経営者が絶大な信頼を寄せる最強投資家、ベン・ホロウィッツの2作目です。本書は企業文化を論じる内容でありながら、リーダーの例として登場するのは、人類で唯一、奴隷改革を成し遂げたと言われているハイチの指導者、トゥーサン・ルーベルチュールや、700年も武士による支配を可能にした日本の侍、チンギス・ハン、殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率したシャカ・サンゴールと、ユニークな人選が魅力。著者自身が大好きなヒップホップの歌詞が引用しながらポップに描かれる部分と、〈Amazon〉や〈Intel〉など世界のトップ企業の貴重なエピソードが語られる部分とリズム良く読み進めることができます。タイトルの『WHO YOU ARE』には、自分が何者で、何を目指しているのか、確たる指針を持つことが重要であり、それが起業やチーム力向上にもつながるという意味が込められています。スタートアップを目指す方は、投資家が重要視していることを知ることで起業のヒントを得られるはずです」
※ 森ビルの運営する各商業施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の予防対策を徹底して営業しております。現在、各店舗では営業時間を短縮しております。ご来店の際には事前にHPをご覧ください。
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