Flower Parent and Child

タイムラプスでみる、村上隆の巨大彫刻「お花の親子」ができるまで

六本木ヒルズ「66プラザ」に見上げるばかりの巨大彫刻「お花の親子」が登場! 森美術館で開催中の「STARS展」にも参加している村上隆の大作だ。すぐそばに立つルイーズ・ブルジョワ「ママン」の迫力にも負けないこの新作彫刻を、いまなぜ村上は“建立”したのか?

TEXT BY Naoko Aono
Movie & Photo by Yu Inohara

「お花の親子」はどのように作られたのか? 66プラザでの設置過程の全貌をタイムラプスでご覧ください(58秒)The Bloodstone Public Collection Courtesy Gagosian With the cooperation of Kaikai Kiki Co., Ltd. ©2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved

「これは僕なりの、魂の叫びなんです」
——村上隆がいま「お花の親子」を“建立”した理由

「お花の親子」は村上隆のアイコンともいえる愛らしいお花の、文字通り親子の像だ。花束を手にしたママかパパに手を引かれた子どもは二人とも大きな笑顔を咲かせている。手にした花束も満開の笑顔だ。両足でしっかりと立つ像の高さは一番高いところで10メートル。全身が金箔で覆われて輝く。

「人は世界中どこでも、きらきら光るものに惹かれます。日本の仏像や寺社仏閣にも金を使ったものはたくさんあります。僕は日本画を学んだので、金箔の上に描くといったことも自然にやってきました」(村上)

この像が生まれるきっかけのひとつに、約15年前に発表された帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)の『国銅』という小説があったのだそう。奈良の大仏の建立にたずさわった人足の目から見たストーリーだ。

「奈良の大仏や京都の寺社仏閣などを作るのは、当時はどれだけ大変だったことか。それだけの強い思いがなければできなかったのでは」

奈良時代に比べれば遙かに技術が進んだ現代でも、これだけ大きな彫像を作るのは簡単ではないだろう。現に、制作には今年の始めからとりかかったというから1年近くかかったことになる。奈良の大仏同様に村上にも強い思いがあるはずだ。

この作品ではとくに、子どもとのコミュニケーションを意識したという。大きな口を開けて笑う姿は確かに一見わかりやすいし、親しみやすい。でも笑顔が必ずしもハッピーなものだけを現しているのではない、とも村上は言う。

「この笑顔に畏怖や、恐ろしいという感じを持つ人もいるかもしれない。アートにはそんな重層的なメッセージがこめられていることが重要だと思います。これは僕なりの、魂の叫びなんです」

「お花の親子」の“親”の笑顔の反対側にはもう一つの顔がある。そちらは目も口も閉じていて、唇に微笑を浮かべている。大仏ではないが、十一面観音像では正面を向いた顔のほかに十一の顔があり、その中で背面に大笑面という大笑いをする顔がある。この顔は煩悩や悪を大笑いで吹き飛ばし、仏道に向かわせるためにあるのだという。

「お花の親子」の笑顔は十一面観音の大笑面で、後ろの眠っているような顔は穏やかな表情で衆生を導く十一面観音の正面の顔なのかもしれない。笑顔で元気づけてくれる「お花の親子」はこの困難な時代に希望と勇気を与えてくれる。同時に、私たちの中にある悪を吹き飛ばすパワーもある像なのだ。

お花の親子」 場所 六本木ヒルズ 66プラザ 期間 〜2021.5月末頃(予定)

お花カフェ」 場所 ヒルズカフェ/スペース(六本木ヒルズ ヒルサイド2F) 期間 〜2021.1.3 時間 ランチ11:00〜15:00、カフェ15:00〜17:00、ディナー17:00〜22:00

グランド ハイアット 東京 コラボレーションメニュー」 場所 グランド ハイアット 東京 期間 〜2021.1.31 ©︎2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

STARS展」 場所 森美術館(六本木ヒルズ 森タワー 53F) 期間 〜2021.1.3 時間 10:00~22:00(最終入館 21:30) ※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)