New Wave in Tokyo Art Scene

六本木の〈アート・ヴィレッジ〉にパリから参入!——ギャラリー「ペロタン東京」オープン

パリのギャラリスト、エマニュエル・ペロタンが、六本木に彼の17番目となるギャラリー「ペロタン東京」をオープンした。世界のコンテンポラリー・アートシーンを引っ張るギャラリストの一人であり、村上隆を“世界のMURAKAMI”とした立役者でもある彼が、なぜ今、東京にギャラリーを開いたのか? オープニングで来日した彼に話を聞いた。

TEXT BY Jun Ishida
PHOTO BY Yasuyuki Takagi

世界のギャラリストは東京のアートシーンをどう見るか?

——東京にギャラリーを進出した理由は?

ペロタン 私自身、アジアの中でも特に日本とは縁があります。25歳の時に、NICAFという横浜で行われた国際コンテンポラリーアートフェアに参加し、そこで初めて村上隆に会いました。1993年当時、日本経済は不況に陥り、世界のコンテンポラリー・アート市場としては未成熟な地であったと思います。しかし、進歩的で革新的な若い世代のアーティストたちが花開いている時代でもありました。そのことに、とても興味が湧きました。それ以来、私たちは日本人アーティストたちと緊密な関係性を築いています。ビジネスだけでなく、日本との関係性を深めたいというのも東京にギャラリーを開いた大きな理由です。

オープニング展はフランスの巨匠画家、ピエール・スーラージュ。

——ギャラリーの場所として六本木を選んだ理由は?

ペロタン 六本木は大好きな街です。文化的で活気に満ちたエリアには、多くの美術館やギャラリーが揃っています。ピラミデビルや近隣のComplex665にも素晴らしいギャラリーの数々が集まっています。こうした傑出したギャラリーが徒歩圏内にあるというのは、刺激的でダイナミックなことです。ビジターにとっても好都合ですし、エリア全体が賑やかな雰囲気にもなります。

——日本のアートマーケットの現状を、どのように分析しますか?

ペロタン 私は分析はしません。発見するのです。ある意味、日本のアートマーケットの可能性を知るために今回ギャラリーを東京に設立することを決めました。今、唯一分かっていることは、日本のマーケットを発展させる必要があるということです。コンテンポラリー・アートの認知度を高めることが大事です。私がギャラリーをオープンした80年代のフランスのように、日本ではまだ古いものの価値が尊重されていて、新しいものはなかなか認められません。メンタリティを変化させ、ファッションや音楽の世界とも結びつくことで、新しいクリエイティブなエネルギーを作ることが重要だと考えます。

——東京ではどのようなアーティストを扱ってゆく予定ですか?

ペロタン 村上隆やMr.、タカノ綾、加藤泉といった所属アーティストに加え、森万里子、ヤノベケンジといった日本人アーティストともコラボレーションを行ってきました。もちろん、ペロタン東京では海外アーティストも紹介していくつもりです。オープニングでは現在97歳のピエール・スーラージュの近作を展示します。スーラージュは、キャリアがまだ浅い頃に日本で展示をしており、日本に特別な思いを抱いています。1950年代、彼の絵は東京国際ビエンナーレや東京国立近代美術館で展示されました。1992年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しています。

——東京ギャラリーの位置付けは?

ペロタン ギャラリーとしての国際的な成長は、企画やプログラムの広がりにも繋がります。それぞれの場所でプロジェクトを行い、様々なチャンスや可能性を高めていくこと。それによって相互作用が生まれ、お互いを補完し合うようないい影響を生み出します。東京ギャラリーがペロタン全体を刺激してくれることは間違いないと思いますよ!

ガラス張りのギャラリーのデザインは、香港ベースの建築家アンドレ・フー。

profile

エマニュエル・ペロタン|Emmanuel Perrotin
1989年、21歳でパリに最初のギャラリーを設立。現在はパリに4つのスペースを構えるほか、香港(2012年)、ソウル(2016年)でもギャラリーを運営。昨年、NYのローワー・イーストサイドに新スペースをオープン。

profile

ペロタン東京
ピエール・スーラージュの展示は8月19日まで。秋にはパオラ・ピヴィの個展、マウリツィオ・カテランとピエールパオロ・フェラーリによる”Toilet Paper”を展示予定(11〜19時 / 日月祝休)