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連載旅する新虎マーケット Ⅱ期

Exhibitor 3-1

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長岡人が愛してやまない枝豆[長岡市|新潟県 1 ]

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新潟県は枝豆の作付け面積が日本一。水田で育てられた枝豆は雑味のない、豆本来の味がたっぷりです。ぜひ夏は長岡へ。鮮度抜群の枝豆たちが、あなたのことを待っていますよ。

Text by Chiharu Shirai

 

Photo by Chika Miura

 

長岡駅に降り立ったのは梅雨の晴れ間となった7月のこと。取材のためにご用意いただいた車中から空を見ると、薄くかかった雲の隙間から太陽が顔を覗かせる。

そして、視線を下へと移動すれば、さすがは米どころ。豊かな田園風景が絶え間なく広がっています。稲はまだまだ大きく育つ前。膝下にも満たないくらいの背丈で風に揺られる姿は、まるで元気いっぱいの子どもたちがそわそわと体を揺らすようで、なんとも微笑ましい。

そんな緑の水田すべてが稲かと思いきや、ところどころに色の濃い葉を茂らせた植物が。これこそ、長岡人が愛してやまないという夏の風物詩、枝豆です。

 

Photo by Chika Miura


 

Photo by Chika Miura


 

家族の夏の団らんに、いつも山盛りの枝豆。

 
「昔はどこの田んぼの畦みちにも、必ず枝豆が植えてあったんですよ」

そう語るのは、ハンドルを握っていた市職員の鳥居さん。ご自身もまた、農家の生まれです。鳥居さんによると畦に枝豆を植えていたのは雑草対策の意味もあったそう。実を結んだものは市場へと回ることなく、そのまま家族の食卓へと並んでいました。夏の農作業で乾ききった体をビールで潤す、その横にはザルいっぱいに盛られた、ちょっぴり塩っぱい茹で枝豆。もちろん、大人だけでなく、子どもだってテレビを見ながら頬張ります。

「家族団らんの中には、いつも枝豆がありましたね」

そんな思い出話を聞きながら、最初の目的地に到着しました。

 

Photo by Chika Miura

 

作付け面積日本一、だけど知られていない理由とは……。

 
出迎えてくださったのは農家で、「世界枝豆早食い選手権」の発起人のひとりでもある丸山さん。2016年からはじまったイベントはテレビでも取り上げられ、2回目となる今年はスポンサーも参加者も倍増という人気ぶりです。

「早食い選手権は、長岡の農作物に注目してもらいたくてはじめたイベントです。新潟県は枝豆の作付け面積が日本一なんですが、皆さんご存じないでしょう?」と丸山さんは笑いました。「収穫した枝豆はほとんど自分たちで食べてしまうから、県外に出ていかないんです。長岡の人が枝豆を食べるときは小鉢にひとつかみ程度のような生半可な量でなくて、ザルに山盛りが基本。それでも新鮮で、豆の味がしっかり味わえるから、あっという間に食べてしまう。産地ならではのそんな食べ方を、ぜひここで楽しんでほしいですね」

『新鮮』という言葉が出てきたけれど、それは枝豆を語る上で欠かせないキーワード。実は枝豆は収穫した直後からどんどん鮮度が落ち、豆本来の風味が薄れていきます。それを防ぐために出荷時から細かな温度管理がなされますが、それでも長期にわたってストックしておくのは難しい。だからここ、長岡では10以上の品種を約2週間ごとに時期をずらしながら栽培。絶えずもぎたての枝豆を食べられるように工夫を凝らすほど、枝豆への愛は深いのです。ちなみに丸山さん、お好みの品種はあるんですか?

「どれでも美味しいけれど、強いて挙げるなら『肴豆』と『一寸法師』という品種でしょうか。どちらも豆の香りがすごくいいんですよ」
そう言われると是が非でも食べてみたくなるけれど、その2品種が収穫されるのは9月の下旬を迎えてから……。早くも長岡を再訪する理由を見つけてしまいました。

 

Photo by Chika Miura


 

写真提供:ながおか農challeプロジェクト実行委員会


 

写真提供:ながおか農challeプロジェクト実行委員会

 

水で洗われた土で育てる、名人の枝豆。

 
折角ならば収穫しているところを見てみたい、と無理を言って、枝豆を栽培する中村文和さん(なんと偶然にも先ほど丸山さんが一番好きと言っていた『一寸法師』を生み出した名人!)のもとへ。目の前に広がる水田の所々に枝豆の葉が揺れる場所が点在しています。「収穫は早朝と夕方の2回。気温が高い時間に採ると、どんどんしなびてダメになるんです」と語ります。

収穫方法は手作業と機械の2種類で。この日収穫を迎えていたのは『陽恵』という枝豆で、この品種は実のなる高さが低いので機械では収穫できないそう。茎の根元を持って土から一気に引き抜く、豪快に土を払う、延々とその繰り返し。中村さんの体からどんどん汗が吹き出てきます。それでも作業は止まることなく、畦にどんどん束ねられた枝豆の山が並んでいく……。中村さんの農地では朝と夕、一日の作業で300〜600kgもの枝豆を収穫していくといいます。

米どころ、長岡の枝豆が美味しい理由は植える場所にも。

「ことし枝豆を植えているところは、去年水を張って稲を育てていたところ。前の年に水を入れて土の中が綺麗になった場所で育てているから、枝豆に余分な味が入らず、豆本来の美味しさが引き立つんです」
汗をぬぐいながら話す中村さん、少し誇らしそうに笑いました。

 

Photo by Chika Miura


 

Photo by Chika Miura


 

Photo by Chika Miura


 

Photo by Chika Miura


 

作業を終えた中村さんが、もぎたての枝豆の束を片手に、馴染みの店へ連れて行ってくださいました。注文した料理が運ばれてくる間、しばし中村さんへの取材がつづきます。家庭ごとに味って違うんですか?「水から茹でるひと、沸騰してから入れるとひと、先に塩で揉むひと、いろいろだわねぇ。茹で時間も塩加減もそれぞれで。私はサッと茹でて、冷ましてから食べるのが好きかな」。やっぱり食べるのは一年中?「いや、冬は採れないから食べないねぇ」。じゃあ冷凍物は?「あれは……、別の食べ物だから(笑)」。

そんなことを話している間に「はい、お待たせ!」とドーンっと現れたのが、大皿いっぱいに盛られた枝豆!中村さんが持参した枝豆をすぐに塩茹でしていただいたそうで、一同で感謝感謝。鮮やかな緑から湯気が昇り、まぶした塩がキラキラと輝く。その様子はなんだか神々しさを感じるほど。手に取り口へと運べば、適度な歯ごたえ、そして豆の香りが鼻へと抜けて、なるほど、手が止まらない!こんなに美味しい枝豆が近くにあったら、そりゃあよその県に出荷しようなんて思いません。

ビールにぴったりの枝豆が一年中食べられる便利な世の中ですが、ぜひ夏は長岡へ。鮮度抜群の枝豆たちが、あなたのことを待っていますよ。

 

Photo by Chika Miura


 

旅する長岡市

 

Aore Nagaoka

アオーレ長岡
長岡市役所本庁舎とアリーナ、交流施設、屋根付き広場などが一体になった施設。空間のデザインは新国立競技場の設計も手がけた建築家・隈研吾氏が担当。広場は「世界枝豆早食い選手権」の会場にも。
「旅する新虎マーケット」は、全国津々浦々の魅力を集め、編集・発信し、地方創生へ繋げる“The Japan Connect”を目的とするプロジェクト。舞台は、2020年東京オリンピック・パラリンピックでメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリートとなる「新虎通り」です。「旅するスタンド」でその街自慢のモノ、コト、ヒトに触れたり、「旅するストア」や「旅するカフェ」で珍しいグルメやセレクトアイテムと出会ったり。約3カ月ごとに新しくなるテーマに合わせて、日本の魅力を凝縮。旅するように、通りを歩く。そんな素敵な体験をご用意して皆さまをお待ちしています。
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