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連載旅する新虎マーケット Ⅱ期

Exhibitor 2-3

gastronomy

ガストロノミーでたどる旅[燕市・三条市|新潟県 3 ]

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工場、ものづくりの視点で語られることの多いエリアではあるけれど、新潟県の他の地域と同じように、豊かな食文化と歴史がたっぷり。ガストロノミーでたどる燕と三条の旅に出かけてみませんか?

Text by Chiharu Shirai / Photo by Yujiro Ichioka

 

 

とかく工場、モノづくりの視点で語られることの多い燕三条地域ではあるけれど、新潟県の他の地域と同じように、ここにも豊かな食文化と歴史がたっぷり。今年の夏は、ガストロノミーでたどる燕市と三条市の旅に出かけてみませんか?

 

 

わきめもふらず、やるだけなんです

 
燕市と三条市を訪れたのは7月のこと。米どころ新潟らしく、車を走らせると美しい水田が無数に広がっています。どこもきちんと手入れが行き届き、雑草の姿もほとんど見えない中、随分と様子が異なる水田が一箇所。太陽の光をたっぷりと浴びて稲が力強く背を伸ばすのは同じだけれど、その周りに雑草たちが元気よく顔を出しています。

「ああ、やばい。また雑草抜きだあ」と笑うのは、この水田を営む樋浦幸彦さん。なんだか嬉しそうですね、と問いかけると「まあ、好きでやってるからね」となんとも言えないいい笑顔が返ってきました。他の水田と違ってここまで雑草が育つ理由。それは樋浦さんが完全無農薬、自然肥料100%という栽培にこだわっているからに他なりません。除草のための化学薬品も散布しないから、まるで雑草たちの天国のよう。だけどこれが本来自然のあるべき姿なのかも。

「この方法は僕の代からはじめたんですけど、はじめは手探りでね。肥料も売っていないから親父と手づくりしてました。草だらけの水田をじいちゃんに見られたときは、すごい形相でやめちまえって怒られたなあ」。苦労話も全部、樋浦さんにかかれば笑い話に変わります。

お米と並行して育てるきゅうりハウスを覗かせてもらうと、大きな葉をたっぷりと茂らせて、きゅうりの青臭い、でも清々しいいい匂い。「今年は天候不順がつづいたから、農家の腕の見せ所っす」。そう言って脇芽をかいていく。一見すると葉の数が減って成長が妨げられそうだけれど、こうすることで養分が必要な場所に行き届き、真っ直ぐ大きな実へとつながっていきます。

「僕もきゅうりみたいに、これからもわきめもふらず農家をやっていくだけっす」。樋浦さんが育てたきゅうりは旅する新虎マーケットでいただくことができます。また秋に開催されるイベント「燕三条 工場の祭典」では新米を食べるイベントも。手塩にかけたその味を、ぜひ味わってみてほしいと思います。

 

 

 

 

 

おしゃべりの花も咲かせたい、伝統の朝市。

 
2、7、12、17、22、27日……。2と7のつく日にこのエリアを旅するなら、早起きをして朝市に出かけてみませんか?

北三条駅降りてすぐのガード下沿いで開催されているのは600年以上もつづく朝市。朝の6時頃から続々とオープンする露店に並ぶのは、採れたての野菜、果物、山菜、その他いろいろ。露店のおじさん、おばさんたちに挨拶をしながら、「わあ、このなす大きいね! おばちゃんがつくったの?!」と会話を弾ませるのは、案内係を買って出ていただいた山倉あゆみさん。

「晴れの日も雨の日も、夏も冬もつづいてきた朝市。5日に一度は必ず新鮮な食材が手に入るので、冷蔵庫いらずで暮らせるんですよ」と教えてくれました。これからの時期のおすすめはなんですか?「葡萄でしょうね。東京じゃ1万円くらいするものが、1,000円くらいで手に入るんですから!」

 

 

 

 

 

 

 

おお塩っぱい、止まらない。

 
農家さん、朝市と巡って、最後にやってきたのは、1771年創業の酒蔵をルーツに持つ越後味噌醸造さん。

こちらの蔵では100年以上も前につくられた木桶で今も変わらず味噌を仕込んでいます。「一番大きいものだと5トンほどの味噌を仕込めます。生産性を考えたら軽いプラスチック製の桶などが良いのかもしれませんが、我々の味を守れるのは長年使いつづけた木桶だけ。木桶自体に菌が棲みついていて、それらが独特の風味を醸してくれるんです」と語るのは、30代にして代表を務める木龍康一さんです。「もうこれほどの木桶をつくれるのは全国でも一社しかありません。丁寧に使っていかなければいけませんね」と愛おしそうに木肌に触れました。

販売スペースではお味噌汁の試飲など、越後味噌醸造こだわりの味を試すことができます。中でも特筆すべきが「味噌漬け」。ほんのひとかけらを口の中に放り込んだだけで、おお塩っぱい! あまりの衝撃に目を白黒させていると、ここまでの道中を案内してくださった燕市職員の楡井さんが笑いました。「塩っぱいでしょう。めちゃくちゃ塩っぱいんですよ。だけど、この味、小さい頃には必ず家の食卓にあったなあ。これが燕の味なんでしょうね」
この味噌漬け、確かにカルチャーショックなくらいに塩っぱいのですが、お茶などでさっと口の中を

洗い流すと、また次のひと口を求めたくなるから不思議。なすや牛蒡、きゅうりと並んで、紫蘇の実も美味しいのですが、この紫蘇の実は近所のおばちゃんたちが持ち込んだものが使われています(お店の外には紫蘇の実買います」の看板も!)。皆さんも、燕伝統の塩っぱい味噌漬け、ぜひお試しあれ。

 

 

 

 

 

 

モノづくりのまちの新たな一面を知れた今回の旅。紹介したほかにも、地元のひとが「油を補給する」と言って食べに行く背脂ラーメンや、あまりの居心地の良さについつい長居してしまうカフェ「ツバメコーヒー」など、巡るべきところはたくさん。

そのどれもが地元愛に溢れていて、きっとお腹だけでなく、心まで温かくなります。食べる燕と三条、これにて終了。旅すればあなたもきっと、病みつきになること間違いなしです。

 

 

 

 

 

 

旅する燕市・三条市

 

Hiura Farm

ひうら農場
燕三条で27代つづく、由緒正しい農家。「赤ちゃんのひと口目にするお米でありたい」という思いの もとに、極力農薬を使わない栽培を実践。秋に開催される「燕三条 工場の祭典」での耕場イベント もお楽しみに。

Tsubame Coffee

ツバメコーヒー
みんなが好きそうなもの、ではなく、店主がとことん好きなものだけでできたカフェ。壁一面には建築、アート、暮らし、思想などジャンルにとらわれない本が所狭しと並び、自由に読むことができる。看板犬の「黒スケ」(黒柴オス)が出迎えてくれる。

Echigo Miso

越後味噌醸造
職人が手間暇をかけて「木桶」に仕込むことにこだわるお味噌屋さん。「発酵テーマパーク」として 発酵・醸造文化の発信に取り組むなど、伝統の枠にとらわれない活動も活発です。

2・7 Ichi

二・七の市
末尾に2と7が付く日に開催される定期市。農家さんの新鮮な野菜や果物を中心に、鮮魚、乾物、お菓子、花、衣服なども販売。お買い物はもちろん、地元の人たちの交流も楽しみのひとつです。

Sanjo Spicelabo

三条スパイス研究所
東京押上にあるスパイス料理店「スパイスカフェ」のオーナーシェフ・伊藤一城さんを中心にスタート。食べ進めるごとに、いくつもの風味がミックスされるスパイス料理は絶品です。

Sanjo Marche

三条マルシェ
三条の中心市街地が歩行者天国となり 、三条産の新鮮な農作物・旬の果物を使ったグルメやスイーツ、手作りクラフトなどがズラリ。不定期開催なので、イベントスケジュールは事前にチェックを。

「旅する新虎マーケット」は、全国津々浦々の魅力を集め、編集・発信し、地方創生へ繋げる“The Japan Connect”を目的とするプロジェクト。舞台は、2020年東京オリンピック・パラリンピックでメインスタジアムと選手村を結ぶシンボルストリートとなる「新虎通り」です。「旅するスタンド」でその街自慢のモノ、コト、ヒトに触れたり、「旅するストア」や「旅するカフェ」で珍しいグルメやセレクトアイテムと出会ったり。約3カ月ごとに新しくなるテーマに合わせて、日本の魅力を凝縮。旅するように、通りを歩く。そんな素敵な体験をご用意して皆さまをお待ちしています。
NEXTExhibitor 3-1

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