暮らしを豊かにするアイデアを、ヒルズエリアのエキスパートに教えてもらう連載「Tips for Life」。今回は「アンティーク・ウォッチ」にフォーカス。表参道ヒルズでレディスのアンティーク・ウォッチを専門に扱う〈ケアーズ 〉の森川洋史さんに、アンティーク・ウォッチの魅力や年代ごとの特徴、お手入れ方法を教えてもらった。
TEXT BY MIHO MATSUDA
PHOTO BY MANAMI TAKAHASHI
手仕事の結晶、機械式時計
機械式時計の時計が多く製造されたのは、1900年代初頭から1960年代頃まで(一部1970年代)。1969年に日本の時計メーカー〈セイコー〉がクォーツ時計を発表し、軽くて大量生産が可能なクォーツ時計が市場を席巻していく。
「〈ケアーズ〉で取り扱うのは、アールデコ期の1920年代から1970年代頃までの機械式時計です。クォーツ時計は古くなると機械ごとの交換や場合によっては修理不能になる場合があるのに比べて、機械式時計は劣化した部品を取り替えれば長く使うことができます。私たちは、長く使える時計に価値があると考えています」
長く使える機械式時計だからこそ、20世紀初頭の時計が今も元気に時を刻む。さらにアンティーク時計は、当時だからこそ実現できた時代を反映したデザインも魅力のひとつ。
「大量生産以前の時計は手仕事の結晶。実は、現代では再現できないものも多いんです。製造コストがかかることはもちろん、質感が出せない。メーカーからアンティークの復刻版がリリースされても、当時の質感が再現されていないからと、むしろオリジナルであるアンティークの価値が高まることもあるほど。現存する当時の機械を使って製造すると、オリジナルより価格が2〜3倍高くなってしまうこともあります」
アンティーク・ウォッチには、当時の文化を伝えるだけでなく、高度な技術を現代に伝えるものでもあるのだ。
レディスは今が狙い目!
男性には人気の高いアンティーク・ウォッチだが、それに比べると女性のコレクターはまだ少数。
「時計よりもジュエリーにお金をかける方が多く、女性のコレクターは男性に比べるとそれほど多くはありません。しかし、最近では、セレクトショップなどの取り扱いも増え、人気が高まっています。女性向けの時計は、同時期に製造された男性向けの商品と同様の技術や構造が反映されているので、クオリティが高くデザインも個性的です。価格帯は7、8万円台からダイヤ付きのジュエリー・ウォッチで100万円を超えるものなど様々ですが、全体的に男性ものに比べるとリーズナブルな商品が多くあります」
コレクターが増加中とはいえ、まだ少数という女性向けのアンティーク・ウォッチ。狙うなら今がチャンスだ。
アンティーク・ウォッチのケア方法
❶ 3、4年に1度はオーバーホール
「毎日することは、ぜんまいを巻く、時刻合わせをするといったことくらい。1本の同じ時計を毎日使うのではなく、なるべく数本の時計をローテーションして使うとより長持ちします。使用頻度にかかわらず、内部の油が切れてしまうため、3、4年に一度はオーバーホールしましょう」(森川さん)。写真は〈ケアーズ〉の修理工房でのオーバーホール。
❷ 長持ちの秘訣はこまめな修理
機械式はどうしても誤差が生じてしまうことがあるが、誤差が気になる場合は修理へ。「ケアーズでは、なるべく1日1分以内に調整する高い技術を持っているので、お気軽にご相談ください。また、水に濡れた場合も、放置せずにすぐに修理へ。もう少し早ければ修理できたのにと悔やむこともあります。また、機械式時計は磁気に弱いため、なるべく携帯電話と離して保管してください。バッグや財布のマグネットホックにも接触しないようにご注意ください。アンティーク・ウォッチは一生ものなので、大事にお使いいただければ何世代にも渡ってご使用いただけます」(森川さん)。
森川洋史|Hiroshi Morikawa
ケアーズ 表参道ヒルズ店店長。二級時計修理技能士。世界各地のアンティーク・ウォッチを取り扱う「ケアーズ」の中でも、表参道ヒルズ店は1920年代から1970年代までのレディスアンティークウォッチを専門に取り扱う。自社の修理工房をもつため、アフターケアも万全。適切なメンテナンスで長く使うことができる。
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