KIDS' WORKSHOP #1

Q 砂漠のような月面で人は暮らせるの?——ispace ファウンダー 袴田武史 さん

今年も各ヒルズでは夏休みの子ども向けワークショップ「KIDS' WORKSHOP」がオープン! 六本木ヒルズの〈MIRAI SUMMER CAMP〉では、宇宙資源開発に取り組む ispace が「月面探査ミッションを体験しよう!」をテーマにワークショップを行います。はたして砂漠のように何もない荒涼とした月の環境で人は暮らせるのでしょうか? ispace のファウンダー&代表取締役の袴田武史さんに聞きました。

photo © ispace, inc.

※ ispaceのプログラムは申込の受付を終了しています。キャンセルが出ましたら こちらのページにて先着申込受付予定です。公式サイトと合わせてご確認ください。

——袴田さんとispaceがどんな活動をしているか教えてください。

袴田 ispaceは「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ」をビジョンに掲げて、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業です。近年の研究によると、月には約数十億トンの水が存在することがわかっています。水は宇宙飛行士の生活に欠かせない飲料水となるほか、水素と酸素に分解することで、ロケットの燃料にもなります。地球上と同じように、宇宙空間において、水は私たちにとって欠かせない貴重な資源です。ispaceは超小型宇宙ロボット技術を駆使して、月に到達するまでに必要なランダー(月着陸船)と、水を探すローバー(月面探査車)の開発に取り組んでいて、2020年〜21年ごろに、日本初民間開発の月着陸船による「月周回」と「月面着陸」の2つのミッションを実施する予定です。

日本初、民間主導でランダー(月着陸船)を月の周回軌道へと投入し、月のデータを地球へ届ける「月探査 Mission 1」のイメージ画像。2020〜21年ごろの実施を目指している。

代表を務める私は、映画『スター・ウォーズ』の世界に魅了されて、宇宙に強い興味を抱くようになりました。宇宙船を作るためには、工学を学ばなければいけない。そう思い、アメリカのジョージア工科大学で航空宇宙工学の修士を取得しました。しかし、宇宙開発には莫大なコストがかかります。いかに安く、効率的に開発できるかが実現の鍵だと感じました。そこで、大学院ではシステム工学を応用した概念設計を研究し、NASAなどの概念設計プロジェクトに参加しました。さらに、在学中に参加した民間宇宙開発のイベントをきっかけに、宇宙産業の新たな兆しに触れました。これからの宇宙開発は、エンジニアリングだけでなく、経営を学ぶことが重要だと感じた私は、卒業後に外資系の経営コンサルティングファームに就職し、プロジェクトリーダーを務める中でマネジメントを学びました。

『スター・ウォーズ』で描かれているような宇宙船が飛び交う世界を創るためには、何よりも民間宇宙開発によるスピーディーかつ革新的な事業展開が不可欠です。2007年に開始された、世界初の国際月面探査レース「Google LunarXPRIZE」に参加する日本チーム「HAKUTO」を始めたことをきっかけに、宇宙開発の事業化を決意し、2013年より株式会社 ispaceの代表取締役として宇宙資源開発事業に取り組んでいます。

——そうした研究開発やプロジェクトによって私たちの社会やライフスタイルはどのように変わっていくと思いますか?

袴田 2040年には、1,000人が月に暮らし、年間1万人が旅をしている──そんな世界を思い描いています。現在、地球でのより豊かで持続的な生活は、すでに人工衛星を中心とした宇宙インフラストラクチャー無しには成り立たなくなってきています。通信、農業、交通、金融、環境維持など様々な産業が宇宙インフラに依存しています。今後、IoTや自動運転などが発展するとともに、さらに宇宙インフラの重要性が高まります。宇宙インフラを持続的かつ効率的に構築していくには、宇宙資源の活用が鍵です。

また月の水資源をベースに築き上げられる街「ムーンバレー」は、建設、エネルギー、鉄鋼、通信、運輸、農業、医療などのプロフェッショナルとの協力関係のもとに成り立っていくでしょう。月は、見上げる場所ではなく、訪れる場所になります。そして、地球も月もひとつのシステムとなり、宇宙インフラを軸とした経済が地球に住む人々の生活を支え、持続性のある世界を実現させる。これが私たちの究極の目標です。ispaceが最初に取り組む月での水資源の探査は、その目標への出発点です。

様々な国籍や専門分野の人材が世界中からispaceに集まっている。

——キッズワークショップに参加する子供たちと同じ年齢の頃、袴田さんはどんなことをするのが好きでしたか?

袴田 中一の夏休みの課題として、水ロケット作りに取り組みました。結果、ロケットは無事発射し、非常に興奮したことを覚えています。今日振り返るまで気がつきませんでしたが、その時からモノづくりの面白さに魅了されていたのだと思います。

——子どもたちが未来へと歩んでいくための指針となるような言葉をひとつ教えてください。

袴田 『スラムダンク』に登場する安西先生の「あきらめたらそこで試合終了ですよ」です。これは、スタートアップの基本でもあるんですね。現代の人は、簡単にあきらめる人が多いように感じています。情報社会なので、いろいろな事が耳に入り、一つのことに集中しづらいのかもしれません。また、小・中学生はいろいろなことに挑戦することが大事だと思いますが、一つ一つに丁寧に、あきらめずに取り組むことは、きっと将来に響く経験になると思います。


袴田武史|Takeshi Hakamada
株式会社ispace ファウンダー&代表取締役/1979年生まれ。名古屋大学機械・航空工学科を卒業後、米ジョージア工科大大学院で航空宇宙工学修士号を取得。経営コンサルティング会社を経てispaceを創業。人類が宇宙で生活圏を築き、宇宙と地球が共存する世界を構築するため、宇宙ロボット技術を活用した民間宇宙事業を進める。2010年からGoogleLunar XPRIZEに「HAKUTO」を率いて参戦。

キッズワークショップ 2018

キッズワークショップ 2018 期間 2018年7月14日(土)〜 8月29日(水) 場所 六本木ヒルズ、アークヒルズ、虎ノ門ヒルズ、表参道ヒルズ プログラム詳細 各ヒルズの公式サイトで随時公開中〜〜六本木ヒルズ|Roppongi Hills アークヒルズ|ARK Hills 虎ノ門ヒルズ|Toranomon Hills 表参道ヒルズ|Omotesando Hills