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時代は、情報化社会から知識社会へ! リバネスCEO・丸 幸弘の提言

HILLS LIFE DAILYが「最初の年末」を迎えるにあたって、1年の締めくくりの言葉を求めたのは、研究者であり起業家でもあるリバネスの代表取締役CEO・丸幸弘。平成というひとつの時代が終わろうとしている今、生きていくために必要な“資産”は、カネではなく関係性にほかならないと丸は言う。関係性とは、一体何を意味するのだろうか。関係性を持たない者は、どうすればいいのだろうか? 

TEXT BY TOMONARI COTANI
PHOTO BY KOUTAROU WASHIZAKI

2000年代に入ったころから、経営者は“数字という魔術”に引っかかり、間違った使命感を振りかざしていると丸は指摘する。そしてそうした会社は、まもなくツケを払うことになるだろうと。

間違った使命感が招いた結末

——本日は、丸さんに2017年を振り返ってもらおうと思います。

 はい。思えば2017年のアタマに、ブログだかメールだかにこう書いたんです。「この1年間は、間違った使命感と間違ったリーダーシップで動いてきた結果が、全部出ます」と。その通りになったのではないでしょうか。

——どういうことでしょう?

 まず世界を見ると、たとえばトランプがアメリカの大統領になり、Brexitが起こり、フィリピンではドゥテルテが大統領になりました。ドゥテルテは、麻薬犯罪に関わる人物を片っ端から処刑しています。彼らは使命感を持ってやっているのですが、「強いアメリカをもう一度」とか、「死刑にする」とかって、ぼくは少しズレている使命感だなと思うんです。

——なるほど。日本はどうでしょう?

 戦争に敗れた日本は、戦後、「日本を豊かにするために」「世の中に貢献するために」という正しい使命感の下で、日本という国を再建してきました。その中から、トヨタやホンダやソニーが出てきたわけです。ただ、2000年代に入ってからその使命感が少しずつ曲がっていき、経営の主体が数字になっていきました。いわゆるコンサルタントがやるような、ロジカルに数字を出して、「KPIが何か」を決めていくような経営スタイルに変わったんです。

その結果、経営者は数字という魔術に引っかかり、間違った使命感のオンパレードになりました。東芝を筆頭に、数字というロジックを一番の使命感と据えた会社は、株主総会が目的化し、会社が増収増益しているように見せることを使命に経営を行い、その結果、会社が傾いていきました。それが、この20年間で浮き彫りになってきたことだと思います。

欧米の経営者の中には、その弊害に気がつき、「人がなにをやりたいか」とか、「情熱に従って生きる」とか、「課題を解決するために我々は存在している」とか、日本が昔言っていたことを言い出した会社が登場し、大きく成長していきました。象徴的なのがGoogleやFacebookやAmazonです。

僕は、これからは“直観と感性で経営する時期”に差しかかっていると思っています。「プランはなんだ」とか「PDCAを回せ」とか、そういうのは全部間違った感覚です。「ウチは数字を大事にして、みんなを一体化させて」……という経営手法を言っている人がまだ結構多いのですが、僕は完全に間違っていると思います。「お前は何がやりたいのか」、「どういう世界を作りたいのか」、「じゃあそれができる方法は何なのか」。そういったことを大切にする手法、つまりは直観と感性で経営する時代に変わっているのに、間違った使命感、間違ったリーダーシップで経営をしている限り、これからもどんどん会社は潰れていくと思います。

あと、“働き方改革”も完全に間違った使命感ですよね。働きたい人がいるのに、数字で縛って「何時に帰りなさい」とか、おかしくないですか(笑)? 感覚的にものごとをどう捉えるか、ということが大事な時代において、KPIだ、数字だ、売上げだ、働き方だ、時間軸だ……みたいなことは、みんなくだらないですよ。それを実行したり学びに行ったりしている人に、未来はありません。

——あはは。

 “プレミアムフライデー”というのもありましたよね。あれも、完全におかしいですよ。なんだよプレミアムって(笑)。その分平日にしわ寄せが行くし、仕事が終わっていなかったら、土日ゆっくりできないんだけど……という。あえてちょっと過激なことを言いましたが、労基で縛るのではなく、「その人が何をしたいか」で考える時代になってきているわけですよ。なのに、国が縛り始めている。国が指示を出すべきことではないと言いたいんです。

もう、とにかく混乱と迷走だなと。それが2017年の結論ですね。でも逆に言うと、チャンスがあるんです。たとえば僕らは今年、“第3新卒”という取り組みを始めました。

——それは一体、何でしょう?

 一般的には、サラリーマンって60歳で退職じゃないですか。でもこれからは、100歳まで生きる時代がやってくるわけです。だとすると、退職しても40年ありますよね。「だったらもう1回、リバネスに新卒で入りませんか?」という制度です。今年、59歳でベネッセを退職したとある方が、第一号として入社されました。これはすごく大きなことだと思います。顧問や子会社の役員とかのお誘いもあったようですが、全部断って、ウチに来てもらいました。

「○○さん、何歳まで生きるつもりですか?」「90歳かな」「じゃあ、90歳まで一緒に働きましょうよ、世界変えて行きましょうよ!」って。社労士に言ったら、「それはリスクです」と言われましたが(笑)、「大丈夫です」って押し切りました。新卒だから、当然給料は下がります。そこからもう一回上げていこうよ、というワケです。アツくないですか? 

——単年契約の顧問として生殺しにされるのとは、モチベーションが大きく違いますね。

 そうなんです。人間は上がっていく感覚を気持ちいいと感じるわけですから。この第3新卒って、絶対流行るだろうなと僕は思っています。リバネスをメインにしてくれれば、ほかに別の会社の顧問をやったりするのは、どうぞどうぞなんです。つまり、トータルの収入額は自分で設計できる。こうした制度を、ぜひベンチャーがやるべきなんです。ベンチャーは、大企業がやってきたノウハウがほしい。でも顧問だと、「顧問さま」みたいになってしまうので、一緒に働いてくれる経験を持った人がほしい。ぴったりマッチするんですよ!

こういうミスマッチをキチンと埋めていくと、働き方改革なんて言わなくてもいろいろなことができる。ひとつの会社をメインに、2つめ、3つめ、4つめの収入源を持って……という時代が、これから来ると思います。

丸が率いるリバネスは、人生100年時代の到来に向けて、定年退職者を「新卒」として採用する“第3新卒”制度を今年からスタート。ノウハウを持った人材は、ベンチャーにとって貴重な戦力になると丸は考える。

お金の価値が、なくなっていく

——ところで、リバネスの人事は人工知能が行っていると聞きましたが、本当ですか?

 本当ですよ! 人工知能が社員の動きを感知して、それが評価系に乗っかり、人工知能が数字を決めています。僕は50個くらいの会社に携わっていますが、どこからいくらもらうかは、もうすぐこの人工知能が決めるようになります。ヤツは僕がどう動いているかわかるので、「リバネスから○万円、ここから○万……合計○万円毎月もらっていいですよ」と、提示してくるわけです。誰かがエラくて、おべっかしないと給料が上がらない……ということでは、フレキシビリティが生まれません。

——人工知能を導入したのは、いつごろからですか?

 slackを導入したときだから、2、3年くらい前だったかな。slackってコミュニケーションツールですが、いいカセットを導入することができるんです。コミュニケーション中のポジワード、ネガワードを、全部分析してくれたりします。「誰と誰がどれくらいコミュニケーションして、その内容のどの程度がポジティブで」とか、「誰と誰がやったプロジェクトが上手くいって、このチームだと上手くいくけれど、このチームでは上手くいっていない」とか、「相性がどうか」とかが、全部データで見えてきます。そういう時代になるので、何をもってフリーランスで、何をもってサラリーマンかという境界が、何となくぼやけていく。働き方や組織形態も変わっていくんですよ。

——ほぉ! ちなみにリバネスは、いま何人くらい社員がいるのでしょうか?

 70人くらいです。グループ会社を入れると200人くらいになるのかな。町工場が関連子会社になったりしましたので。今、システムをどんどん同期させているんです。そうするとエコシステムができてくる。僕らが課題を見つけてくると、ほかの会社の誰かとチームを組んで解決する。ベンチャーが100社あって、我々に味方してくれる大企業が200社くらいあって、大学が330あり、ほかのエンジニアもいて……。その真ん中にリバネスがあり、僕らは課題を発掘するのが仕事で、出てきた課題を風船のように浮かしておき、それをみんなでシェアする。「この課題を解決するにはどうするのが最短か」を、企業の枠を超えて、人類の進化のために使っていく。そういう時代が来ると思っています。そうなると、お金の価値が、本当になくなっていくと思います。

——お金の価値が、なくなっていくんですか!?

 今ちょうど、人類社会が変わろうとしている時期だと思います。情報化社会が終わり、次に知識社会が到来します。みんなが想像しているよりおもしろくなるし、みんなが想像しているよりもラクな時代が来ると思います。そうしたことに、ひとつでも貢献したいという思いがリバネスの経営理念でもあります。

今は仕事が苦しいから、時間を短縮させるわけじゃないですか。でもやがて、仕事はカネを払ってでもやりたいことに変わっていくと僕は考えています。間違いなくそうなります。

食べものが無料で配給され、住む場所がシェアリングエコノミーですごく安くなったときに、カネを稼ぐという行為に価値はなくなりますからね。その代わりに台頭するのが、「何かに貢献したい」という価値観です。そうなると、経済的優位性はほとんどなくなると思います。「金持ちだったんだ、へぇ、ショボ」みたいな(笑)。

この先重要になってくるのは、金融資産ではなく関係性資産だと僕は考えています。これまでは、お金で人を呼び寄せたり従わせたりしていたわけですが、遂に、お金じゃ人は言うことを聞かなくなるんです。

——なぜ、金融資産から関係性資産への移行が起こるのでしょうか?

 単純に、飽きたのではないでしょうか。仮想通貨が出てきて、通貨のイメージが崩れ始めていますよね。確実に信用があるものから、信用は作れるということがわかってきた。その点、関係性資産というのは最も無形の資産ですが、会社というのはそもそも、関係性資産から始まっているんです。

たとえばソニーは、10人くらいのエンジニアから始まっています。「お前がやるっていうんなら、オレもやるよ」といった関係性資産で構築されたチームが、たまたま金融資産を持ったんです。なのに、金融資産でレバレッジをかけてさらに金融資産を持とうとする“アメリカ型の資本主義経済”が、90年代ころからどんどん台頭しました。金持ちが偉くて、関係性資産で始めた会社をうまく使っているんです。「オレが出資したんだ」と言って。金融資産で金融資産を生むという方向へ行ってしまったんです。その弊害に、みんなが気づき始めるはずです。具体的には、2018年から2022年くらいまでの間に、すごく大きなパラダイムシフトが起こると思います。

——そのパラダイムシフトが起こると、どういう変化が起きるのでしょう?

 まず、大企業はかなり苦しい局面に立たされるでしょう。でも、トヨタは保ちそうですね。中小企業を切りましたから。「このまま内燃機関のクルマを作っていたら、トヨタは潰れるよ」と、僕はいろいろなところで言っていたのですが、誰か聞いていたのかもしれません(笑)。思いっきり舵を切りました。今回の役員ボードメンバーをみても、豊通(豊田通商)の若い人が役員にいたりしますから、なりふり構っていなことが窺えます。それくらい、恐竜が倒れそうなんです。増収増益は、数字のマジックですからね。

そして、もう一度「人とは何か」「人が働くとは何か」ということを、考え始めることになると思います。今までは80歳で死ねましたが、これからは120歳まで生きるかもしれない時代になります。長期的資産の構築をしないと、僕らは真っ当に生きられなくなるわけですが、そのときの“資産”はお金ではなく、関係性になっていることでしょう。

ちなみに今、僕は現金がなくても生きていける自信があります。それは、関係性資産を最も大事にして生きてきたからです。世界のどこに行っても、「いいよ丸ちゃん、ウチに来なよ」って言ってくれます。逆に誰かがそうなったとき、僕は助けますし。それが、世の中をこれから取り巻いていく価値観です。

——2022年まで、と仰ったのは何か根拠があるのでしょうか?

 オリンピックがひとつ、日本にとっては大きな存在です。あれでどうにか数字を保っているわけですから。ロジカルに数字を揃えないと、オリンピックが実現しないからです。だから今、増収増益を見せつけていますが、20年のオリンピックが終わると減収減益が続いたり、知の空洞化が起こるでしょうね、このまま行くと。

実は、僕らの世代が今、裏でやっているプロジェクトが段々表に出ていくのが、ちょうどそのころです。30代後半から40代前半の経営者で、今仕掛けているヤツらが入れ替わるようにして、そのころ台頭してくる。そんな時代が来ます。

それを読み切っている天皇陛下は、すごいと思いますよ。いいタイミングで平成を終わらせたと思います。すべてが見えているのではないでしょうか。平成という時代は、文字通り平坦な30年だったと思います。大きくもならないけど、小さくもならない。次の年号が何になるのかわかりませんが、激動、みたいになるかもしれませんね。

——確かに、集団催眠としての効果が言葉にはありますよね。

 そうですね。あるいは、上にのぼっていくような言葉になるのかもしれません。でも本当に平成というのはいい言葉で、30年間、平安なかたちで生きてきました……。ぼくらみたいな俗人だったら、オリンピックまで自分の年号でやりたいじゃないですか。すごいと思いますよ。昭和という戦争があった時代から平成に切り替わり、本当に平坦で平和な30年だったと思います。株価は何も変わらず。牛丼が30年前と変わらない値段ですから。すごいですよね、政府はあんなに変わったのに(笑)。

平成という“穏やかな30年”が幕を閉じ、今後は文字通り、新たな時代が、新たな価値観とともにやってくるはずだと丸は予測する。

人間が人工知能の勝てる部分

——「情報化から知識化へ」、という部分をもう少し補足していただけますか?

 人工知能というのは、まさに知識ですよね。情報じゃないんです。あれはパートナーなんですよ。自分と一緒に考えてくれるパートナーを、みんな手にすることができる。今までは、たとえばデータの羅列があったとき、考えられる人が見なければいけませんでした。でも、見る人によってベクトルが変わるから、僕が見たら超一流のデータでも、見る人が変わればおもしろくないデータだったりする。

でもこれからは、一緒に考えてくれる脳みそが横にいる時代が来るわけです。それが知識社会。それをネットワーク化して、シナプスのようにつないで生活をすることが、知識化社会なんです。情報化社会は、パソコンの前に座って「ひとりでも働けます!」と言って、検索して情報を見て、ちょっと稼ぐという社会でした。でも知識社会が来ると、モノを言うのは関係性資産です。

人類は、自分が豊かだなと思う方へ行くはずなので、関係性資産を使って知識社会が到来したとすれば、金融資産は本当に意味をなくしていくと思います。そのトリガーのひとつが、人工知能なんです。ちなみに、ウチの人事をやっている人工知能くんは優秀ですよ。文句ひとついわないし、賢くなっていきますから。

だっていやですよね。「給料を下げる」とか「キミはあっちの事業部へ行ってくれ」とか言うの。でも不思議と、人工知能が言うんだったら仕方がないと思えてしまうんです。「全体最適化を発表します」といって、ドキドキしながら「オレ、社長まだできるかな」って思ったり(笑)。「丸さんはもう社長を辞めて、会長になってください」となったら、「ああ、そうか」と思いますもん。「コイツが言うなら仕方ないか」って。「丸、お前そろそろ負けたよ、コイツに継いだらどう? そうしたら会社はもっとよくなるし、世界を変えられるよ」って言われたら、「仕方ないな」って。それを若造に言われたらイヤじゃないですか。「丸さん、時代終わったんで」とか言われたら、「うっせーよ!」ってなっちゃいますよね(笑)。

それはともかく、知識社会は確実に到来します。人工知能のほかには、ドローンですかね。「水がほしいな、烏龍茶じゃなくて」と思ったら、自分の脳波をキャッチしたドローンが飛んできて、水を運んでくる……。それも不可能ではありません。

で、持ってきた瞬間「飲まない」という判断をするのが、人間なんです。これがおもしろいところなんです。与えられて、最後に判断するのは人間。つまりは感情です。感情や情熱というのが、唯一のベクトルなんです。「飲みたいなぁ。でも……」というのが人間なんです。人工知能には「でも……」がないんです。だから、人間が勝てるんです。感性と直観の経営になる、というのはそういう意味でもあるんです。(取材時、同席していたリバネスCBOの)松原尚子は、カネでは動かない。でも、こういう感覚だと動く、ということを知っているのは人工知能ではなく、僕なんです。そういう関係性資産が、最も大事になってくる。

それに、年末のこのクソ忙しいときに、普通ならインタビューなんて受けないですよ(笑)。でも、信頼している人からのオファーだったから「おお、全然いいよ、すぐに来てもらって!」となったわけです。これ、関係性資産じゃないですか。はじめましての人だったら絶対イヤですよ(笑)。

見えない、損得勘定ではない感覚。それが、知識社会では最も重要視されてくる。損得勘定なら、人工知能に任しておけばいいわけです。

——お忙しい時期にスミマセンでした(笑)。知識社会の到来にあたって、人工知能とドローンが出てきましたが、ほかに重要になってくるものは何でしょうか?

 人工知能とドローン、あとは100歳まで生きる、つまりゲノム医療などのパーソナライズドメディカルやパーソナライズドヘルスケア。その3つが前提になると思います。

人工知能は、働き方を改革します。ドローンは、輸送形態を変える。空という空間を使うので。そして、あと100年生きるということも、実は働き方の変化を促します。その大元にあるのは、結局「人とは何か」ということなんです。人とは何かを科学する。そういう考え方が、2018年から22年くらいまでの間に台頭してくると思います。実際僕らも、ヒューマノーム研究所というものを立ち上げ、議論を始めています。

健康というものが、栄養素的、遺伝的なものから、働くという生き方に関する健康にシフトするので、たとえば、今僕が育てている睡眠のベンチャーというのも、トレンドになっていくと思います。

——人工知能やドローンが普及し、100歳まで生きることが当たり前になった時代には、関係性資産こそが重要になることは理解できました。では、現時点で関係性資産を保有できておらず、今後窮地に立たされる可能性がある人たちは、来年、何をやっていけばいいと思いますか?

 一番大事なのは、「自分が本当にやりたいことを見直す」ことです。ヘンな会合に行っても無駄ですよ。関係性資産の作り方って誰も教えてくれなかったと思いますが、超簡単で、「自分のやりたいことを、流されずにとことんやる」ことなんですよ。流されているから、関係性資産が作れない。「オレ、コレやりたいんだよね」というクエスチョンとパッションがあれば、勝手に人が重なっていきます。そこで関係性資産が生まれるんです。

外に解を求めようとするのではなく、内側と会話をするというクセを1年間かけて作ると、いつの間にか周囲に関係性資産ができているはずです。ただ知り合いを作るだけの無駄な会合に行かないこと。それだけです。ベクトルを持っていれば、関係性資産がどんどんできていく。「いやぁ、いっても給料いいし、リスクないからこの会社なんすよ」って言っている人は、絶対に関係性資産を作れない。「とりあえず会員になっておけば、いろいろ聴講できるので、どこどこに登録しました」という人は、すぐ止めた方がいいと思います。なにも生みませんから。

ベクトルを作らなければダメなんです。そのためには、自分の内側に聞くことです。「自分は何者か」「自分は何をしていきたいのか」「自分は何をしているときがハッピーなのか」……。それを問い続け、探し続けていると、いつの間にか関係性資産が構築されているはずです。

感情と感性とパッションがあるのが知識。それがないのが情報です。

——おお、名言!

 あと、来年おそらく言われるのが「イベント疲れ」や「コミュニティ疲れ」だと思います。妙に多いですよね、「アクセラレーターの何とか」みたいなやつ。そうした「コミュニティ」から、「場」に代わると思います、言葉が。

実はリバネスって、場作りの会社なんですよ。ベクトルのある人たちが勝手に集まる場を提供している会社なんです。町工場も、昔は場でした。ベクトルのある人が来て、「こういうのをやりたい」ということで、場が動く。

コミュニティというのはエネルギーが必要です。イベントもエネルギーが必要。僕らは場だけを提供して、そこで誰かが勝手にベクトルを発信すると、勝手にイノベーションが起きる。イノベーションは、必ず場から起こると僕は信じています。「すばらしいコミュニティ」や、「すばらしいイベント」ではなくてね。ヒューレットパッカードもAppleもそうでしたよね。

だから、改めてみなさんに言いたいのは、「イベントではなく場に行け」ということです。場に行くためのパスポートは、唯一、ベクトルを持つことです。だから、まずは自分の内側と相談してください。この年末年始、本当は何をやりたいのか、一生かけてでも何をやっていきたいのかを考え続けてください。それを考え続けるクセをつけることが、100歳まで働く、つまりは楽しく生きる原動力になります。カネを稼ぐ時代は、終わったんです。

profile

丸 幸弘|Yukihiro Maru
1978年神奈川県生まれ。リバネス代表取締役CEO。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程を修了。大学院在学中の2002年、理工系大学院生のみで研究者集団リバネスを設立。科学の出前実験教室からスタートした。以降、ユーグレナの技術顧問ほか数々の企業の立ち上や経営に携わる。ちなみに丸は、CEOのEは『Explosion(爆発)』や『Explore(探求)』や『Enzyme(酵素/触媒)』のEだと公言している。