アークヒルズ キッズコミュニティの自然体験プログラム「GREEN WORKSHOP」の2017年度クラスが4月22日(土)からスタートするのを機に、このプログラムを共同監修するNPO法人「CANVAS」の理事長、石戸奈々子さんに、いまこどもたちに学びとって欲しい力について聞きました。
TEXT BY HILLSLIFE.jp
photos courtesy of CANVAS
——石戸さんが「CANVAS」を立ち上げた理由とは?
石戸 いまのこどもたちは、これまでに誰も経験をしたことがないほどめまぐるしく変化する世界を生きています。知識はすぐに陳腐化し、今日の常識は10年後の非常識かもしれない。学校で学んだ知識だけでは対応できず、誰も答えを知らない。そんな世界です。
そのような時代を生きるこどもたちに求められる力とは、「異なる背景や多様な力を持つみんながコミュニケーションを通じて共に働いて、新しい価値を生み出す力」だと考えています。つまり、コンピュータには決して置き換わることのない、創造力とコミュニケーション力こそが求められているのです。
そこで2002年にCANVASを立ち上げ、こどもたちの創造的な学びの場をつくる活動を産官学連携で推進してきました。具体的には、カリキュラムや教材づくり、空間づくり、学びの場を推進するための地域コミュニティづくりなど手法は様々。その中で、造形、絵画、サイエンス、デジタル、電子工作、音楽、身体表現、映像、環境・自然などあらゆる分野において「つくる」を大切にしたワークショップを開発・実践しています。
ここで重要なのは、スキルを身につけることよりも、学び方を学ぶことです。変化の激しい時代を生きるこどもたちは、生涯ずっと学び続けていくことが大切になります。そのためには、こどものときに「学び方」や「学ぶことの楽しさ」を知ってもらいたい。わからないことがあれば学べばいいということさえ知っていれば、この先どんなことがあっても適応していけるからです。
——その時、こどもたちにとって「遊びの場」「学びの場」としての〈街〉の役割とは?
石戸 こどもたちはどこでも遊び、どこでも学びます。家でも公園でも空き地でも道路でも。押し入れでもキッチンでも物置でも。すべての空間がこどもたちにとってはラボなのです。ここを押すとどうなるの? これをつなげるとどうなるの?といったたくさんの実験をして、たくさんの試行錯誤をして、たくさんのことを学んでいるのです。特別なものはなにも必要ありません。場があればこどもたちは遊び、学ぶのです。
その意味で、街は遊びと学びに満ち溢れています。改めてそのような視点で街を見なおしてみると、新しい発見がたくさんあるように思います。
これまでに私たちが取り組んできたことでいうと、地域やこどものためには使われてこなかった施設をこどもたちに開放してみよう!ということがありました。こどものための新しい施設をつくることはもちろん素晴らしいのですが、いまある施設の空き時間や空きスペースを使えないか?という取り組みです。たとえば、2004年から進めてきたキッズクリエイティブ研究所は、大学の教室を、授業の行われていない週末にこどもたちに開放することからはじまりました。
——つまり、こどもたちとのコミュニケーションによって〈街〉のあり方や使い方がどんどん変わり、新しい価値が生み出されていくわけですね。
石戸 CANVASの活動を通じて感じるのは、こどもたちには求心力があるということです。こどもたちとともに街を考える取り組みを行うと、行政、企業、ミュージアム、学校など地域の様々な方々が、協力をしてくれました。場所を提供してくれたり、広報協力をしてくれたり、機材を貸してくれたり。もちろん、自分のこれまでの経験をお話し、こどもと一緒に取り組んでくれるだけで、こどもたちにとっては大きな学びとなります。こどもたちが主役となる活動を通じて、地域の大人が一体となる。それもこどもたちの持っている魅力だと思います。
アークヒルズでも、こどものために地域の方々と手をとりあい、そのような取り組みを進めてゆきますのでぜひお楽しみに!
ARK HILLS KIDS COMMUNITY
GREEN WORKSHOP
石戸奈々子|Nanako Ishido
NPO法人「CANVAS」理事長、株式会社デジタルえほん代表取締役、慶応義塾大学准教授。東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、こども向け創造・表現活動を推進するNPO「CANVAS」を設立。これまでに開催したワークショップは3000回以上、約35万人のこどもたちが参加している。総務省情報通信審議会委員、デジタル教科書教材協議会理事などを兼務。著書に『こどもの創造力スイッチ』『デジタル教育宣言』他多数。
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