Japan Innovation Campus #2

シリコンバレーを“最強”たらしめているエコシステムに、日本人が加わるためには何が必要か?

イノベーションの中心地として、いまだ絶大なパワーを放つシリコンバレー。その強固なエコシステムは、どのようにして成り立っているのだろうか。そしてそのエコシステムに日本人が入り込むためには、いかなる視座が必要なのだろうか?——経済産業省が主催し、森ビルが運営受託するシリコンバレーのビジネス拠点「Japan Innovation Campus(JIC)」の活動が注目されるいまだからこそ必要なメッセージを、櫛田健児(カーネギー国際平和財団シニアフェロー)が発信する。

TEXT BY TOMONARI COTANI
PHOTO BY ABCDEF GHIJK

© Kenji Kushida

シリコンバレーのスタートアップ・エコシステムは、主に「ベンチャーキャピタル(VC)」「人材の流動性」「産学連携」「政府のサポート」「産業構造」「支援エコシステム」という6つの要素で形成されています。それぞれの要素が相互に作用し、地域全体のイノベーションと成長を促進しているのが、シリコンバレーの強みにほかなりません。

エコシステムを構成する6つの要素

まずシリコンバレーのスタートアップ・エコシステムにおいて、ベンチャーキャピタル(VC)の存在は欠かせません。VCは、革新的なアイデアや技術を持つスタートアップに対して資金を提供し、彼ら/彼女らの成長を支援します。それによって、多くのスタートアップがリスクを取りつつも、大きな飛躍を遂げることが可能になります。

櫛田健児|KENJI KUSHIDA カーネギー国際平和財団シニアフェロー。シリコンバレーと日本を結ぶJapan-Silicon Valley Innovation Initiative@Carnegieプロジェクトリーダー。キヤノングローバル戦略研究所インターナショナルリサーチフェロー。スタンフォード大学非常勤講師(2022年春学期、2023年冬学期)。1978年生まれ、日本育ち。スタンフォード大学卒、経済学、東アジア研究専攻。カリフォルニア大学バークレー博士号修了。スタンフォード大学アジア太平洋研究所でポスドク修了後、2011年から2022年までスタンフォード大学アジア太平洋研究所日本プログラムリサーチスカラーを務めてから現職。

次に人材です。シリコンバレーには世界中から優秀なエンジニアや起業家が集まってきます。また、スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)といった全米でも最高ランクに位置する大学との産学連携も盛んです。これにより、最新の研究成果や技術が迅速に実用化される環境が整っています。

そして、政府のサポートもシリコンバレーのエコシステムを支える重要な要素です。国防総省やエネルギー省を始め、様々な政府機関からの研究助成金や技術開発コンテスト、そして大規模な政府調達などの形でスタートアップの技術開発や事業成長の土壌が整っているわけです。

さらにシリコンバレーには、アクセラレーターや法律事務所といった支援エコシステムも充実しています。アクセラレーターは、スタートアップに対してメンタリングや資金調達のサポートを行い、成長を加速させます。一方で法律事務所は、知的財産権の保護や法的な助言を提供するだけではなく、投資家やスタートアップが必要とする人材を紹介する役割も担っています。

最後に、シリコンバレーの「産業構造」も重要です。シリコンバレーでは、大企業とスタートアップが補完関係にあります。大企業はスタートアップと提携することで、新しい技術やビジネスモデルを取り入れ、スタートアップは大企業からの資金やリソースを活用して成長します。この相互補完関係が、シリコンバレー全体の活力を支えています。

こうした要素が複雑に絡み合うことで、シリコンバレーのスタートアップ・エコシステムは形成されています。いくつかの要素を、もう少し詳しくお話ししていきたいと思います。

好循環を生み出すベンチャーキャピタル(VC)の存在

VCは1960年代、当時の(ウォール街を中心とした)伝統的な投資方法とは異なる「革新的な手法」──リスクの高いスタートアップに対して投資を行い、その成長を支援することで、高いリターンの取得を目指す手法──として誕生しました。

そして初期の投資案件で非常に高いリターンを生み出したことによって、多くの資金がVCに集まり始める好循環が生まれ、VCのエコシステムが確立されていったのです。

とりわけシリコンバレーにおける半導体産業の発展によって、VCは飛躍的な成長を遂げました。当時の半導体産業は技術革新が急速に進行し、新しい技術パラダイムを生み出すスタートアップが次々に登場し始める時期でした。そうしたスタートアップにVCが投資を行い、より大きな成功を収めることで、さらに資金が集まる……という好循環が生まれたのです。

その後もシリコンバレーは、半導体産業に留まらず、技術革新と起業家精神が融合した場所として常に新しいチャンスを生み出してきました。そうした環境下において、VCは技術革新の推進力として機能し、新たな技術パラダイムの創出を支援し続けているのです。

ちなみに政府の制度変更も、VCの成長を後押ししています。なかでも1974年の規制改革は重要な転機となりました。年金基金という巨大な投資ファンドがVCに投資できるようになったからです。この規制変更により、VCに集まる資金が大幅に増加し、シリコンバレーのスタートアップエコシステムは一層強固なものになったわけです。

VCの投資成功がさらなる投資を呼び込み、その資金がスタートアップの成長を促し、結果的に地域全体のイノベーションを加速させる。このダイナミックな成長モデルが、シリコンバレーの強さの源泉と言っていいでしょう。

各フェーズに対応する経験豊富な人材が集う街

続いて「人材と産学連携」についてご説明します。

シリコンバレーは常に、先端技術に精通した優秀な人材が集まる場所として知られています(学士以上の学位を持つ人が6割近くで、修士以上が25%以上を占め、海外出身者も3割から4割近く集まっています)。過去には半導体エンジニアや電子工学、機械工学の専門家が多く集まりましたが、最近ではコンピューターサイエンス、そして特に現在は人工知能(AI)関連のトップ人材が多く集まっています。実際、OpenAIやAnthropicは本社を、GoogleなどはAI拠点をサンフランシスコに構え、これらの企業のエンジニアは互いに交流し、技術の進歩を促進しています。

付け加えると、シリコンバレーにはスタートアップの各成長フェーズに対応する経験豊かな人材が豊富に揃っています。エンジニアなど以外でも、例えば、スタートアップが20人から100人、そして1000人規模に成長する際、必要となる人事制度の整備や組織運営といった会社の基盤づくりのノウハウを持つプロフェッショナルもたくさんいるわけです。この地域では、スタートアップの初期段階から成長期に至るまで、各フェーズで必要となるスキルセットを持つ人材が集積しているのです。

優秀な人材が集まる大きな要因が、優秀な大学の存在です。古くは1950年代、UCバークレーやスタンフォード大学から、半導体産業の成長を支えるブレークスルーが数多く生まれました。特にスタンフォード大学は、固体物理から多くのスピンアウト企業を輩出し、成功を収めています。教授や研究者がスタートアップに関与し、産業界と大学の相互作用を強化することで、理論と実践の融合、つまりは産学連携が促進されたのです。

カーネギー国際平和財団のオフィス前からベイエリアを望む。スタンフォード大学の象徴Hoover Towerが右手に見える。

もっと最近の例だと、例えばiPhoneが登場した際には、スタンフォード大学の卒業生がいち早く母校に招かれ、アプリ開発の授業を実施しました。それによって学生は短期間でスキルを習得し、他に先んじて成功を収めるケースが数多く生まれました。

また、スタンフォード大学のAI研究者フェイフェイ・リー氏は、サバティカル期間をGoogleで過ごし、在籍時の経験を通じて大学と企業の連携を深めています。あるいは(アンドリーセン・ホロウィッツやセコイア・キャピタルといった巨大VCが立ち並ぶ)サンドヒルロード界隈のVCも、距離的な近さも相まって、スタンフォード大学との連携に力を入れています。例えば、地球温暖化の問題に取り組む植物肉のインポッシブル・フーズはスタンフォード大学発のスタートアップですが、起業家はゲノム研究者として世界的リーダーになった教授が新しい技術分野を開拓し、その技術が完成する以前からVCによる資金提供を受けていました。

企業の問題意識が大学の研究に新たな視点を提供し、研究理論でのブレークスルーが企業の技術開発を加速させる。そんな双方向の知識交換が、シリコンバレーの強さを支えているのです。

見逃せない政府の役割

「政府による支援」も、シリコンバレーの発展には欠かせませんでした。

冷戦時代、米国政府は軍事技術の向上を目指し、半導体産業に巨額の投資を行いました。核戦争や直接戦闘以外のあらゆる手段を駆使してソビエト連邦と戦うためです。ソ連がスプートニクを打ち上げ、科学技術分野における劣勢に危機感を覚えたこともあり、米国政府は半導体産業への資金投入を一層強化しました。政府は研究開発費の提供だけではなく、新たに設立されたスタートアップの製品を大量に購入する「リードバイヤー」としても機能しました。そうした支援により、スタートアップは安定した収益を得て、技術革新を続けることができたのです。

その後、1970年代に米国はオイルショックに見舞われ、80年代にかけて経済の再編成が進みました。軍事予算が縮小されるなかで、シリコンバレーの半導体産業も民間の需要へとシフトするのですが、1980年代前半まで、シリコンバレー最大の雇用主は軍事企業であるロッキードでした。ペンタゴンは、シリコンバレー初期におけるエンジェル投資家的存在とも言えます。

米軍はさらに、多くのコンテストを通じて技術革新を推進してきました。例えば十数年前、米軍の戦艦や空母にはITサポートの人材が配置されていましたが、そのスキルレベルは必ずしも高くありませんでした。船上でのITトラブルを解決するべく、米軍は、ITサポートのスキルアップを図るための個別最適化された教育システムを求めていました。

そこで米軍は「このシステムを構築できる企業に対して10億円規模の契約を提供する」というコンテストを開催しました。そうした取り組みに応じて、シリコンバレーのスタートアップがシステム開発に取り組み、その成果が認められればVCからの出資も集まりやすくなります。政府がリードバイヤーとして機能することで、民間の需要を引き寄せることができるのです。

グローバル規模での社会問題に取り組むカーネギー国際平和財団。世界中に拠点を有する。

当然、日本でも助成金の提供は行われているものの、出口戦略としてのサポートが不足しています。シリコンバレーの成功モデルを参考にし、政府が調達や試験導入を通じてスタートアップを支援することが重要だと思います。例えば、自治体や知事がスタートアップの技術を活用して社会課題を解決する取り組みを推進することで、スタートアップの成長を支援することが可能になります。スタートアップ支援を強化するのであれば、日本も政府がリードバイヤーとして積極的に関与し、具体的な調達を行う必要があると考えます。

政府からGoogleへ

人材流動性が高い点も、シリコンバレーの特徴です。例えば、ペンタゴンでデザイン思考を担当していた友人がGoogleに移籍し、前職で得た知見を活かしているケースがあります。そしてもしかしたら彼はいずれまたペンタゴンに戻るかもしれません。このような政府と民間の往還も含む流動性は、両者間での知識やアプローチの共有を可能にし、相互理解を深める一方で、癒着リスクも確かに存在します。しかし、そうしたリスクを超えて得られるメリットが大きいのが実状です。

さらに付け加えておきたいのが、シリコンバレーの産業構造において、大企業とスタートアップの関係が非常に補完的だという点です。スタートアップのイグジットは、IPOだけでなくM&A(買収)も重要な手段で、数で言えばIPOよりも格段に多いのです。多くの大企業がスタートアップを買収することで、スタートアップエコシステムはさらに活性化します。

実際、GoogleやAppleといった大企業は、Android、Gmail、Googleマップ、iTunes、Siriなど、元々は外部のスタートアップから買収した技術やサービスを活用してきました。スタートアップは将来の大企業の姿であり、成功すれば巨大企業となり、独禁法の対象となるほどの影響力を持つことがあります。こうした企業は積極的にM&Aを行い、スタートアップのCEOが大企業に参画し、さらに新たなビジョンを追求することも珍しくありません。

ちなみに、大企業に買収された後、スタートアップの元CEOが企業の参謀として活躍するケースも多く見られます。彼らは数年後に再び独立し、新たなスタートアップを立ち上げることがあります。こうした循環がシリコンバレーのエコシステムを支え、常に新しい挑戦と革新が生まれる環境を作り出しているのです。

シリコンバレーのスタートアップエコシステムは、政府の支援、大企業のM&A戦略、人材の流動性といった要素が相互に作用し合い、持続的な成長と革新を実現しています。こうしたエコシステムを日本も参考にし、スタートアップ支援を強化することで、技術革新と経済成長を促進することが重要だと考えます。

ロールモデルとなる人物がいる

ここまでお話ししてきたように、シリコンバレーのエコシステムには効率的で強固なフィードバックループが存在し、それが、最強のエコシステムを形成する要因となっています。このエコシステムに日本のスタートアップが入り込み、成功を収めるためには、いくつかの戦略と考慮すべきポイントがありますが、まずは成功者についてお話しさせてください。

シリコンバレーで成功するためには、人脈が欠かせません。日本からシリコンバレーに来て起業を目指す場合、最も大きな課題は人脈の構築です。成功例として挙げられるのが、トレジャーデータを創設した芳川裕誠さんです。彼は日本での経験を活かし、シリコンバレーでビッグデータ関連のスタートアップを立ち上げ、短期間で急成長させました。そして、Armに約660億円で買収され一躍成功を収めました。

芳川さんの成功の大事な要因の一つには、彼がシリコンバレーで適切な人脈を構築し、必要なリソースを得ることができたことにあります。彼のように、まずはシリコンバレーで活動し、現地のコミュニティに深く関わることが重要です。

また、シリコンバレーには松岡陽子さんという卓越したリーダーがいます。彼女のキャリアは、多岐にわたる分野での成功と革新に満ちています。

松岡さん(通称ヨーキーさん)は、プロテニスプレーヤーを目指して高校生の時にアメリカに留学しましたが、怪我によりプロテニスの道を断念し、UCバークレーでコンピューターサイエンスを専攻しました。その後MITでPh.D.を取得し、カーネギーメロン大学で教授としてロボティクスの研究に従事。そこで、ロボティクスと神経学を融合させた「ニューロロボティクス」という新しい分野を切り開くのですが、その功績が認められ、30歳以下の天才に贈られる「マッカーサー・ジーニアス・アワード」を受賞しました。

カーネギーメロン大学からワシントン大学に移籍後、松岡さんはGoogleの「ムーンショット」を狙う研究機関「Google X」の創設メンバーとして一本釣りされ、そこで革新的なプロジェクトに取り組むことでGoogleの技術革新を支えました。

その後、元教え子が設立したスマートサーモスタットの会社NestにCTOとして参加し、NestがGoogleに買収された後も引き続きGoogleで活躍。その後はAppleへ移り重役として活躍されました。

そんなヨーキーさんが最近、パナソニックの子会社をシリコンバレーに設立し、チームを率いて新たなプロジェクトに取り組んでいます。

どうですか? ヨーキーさんの存在はシリコンバレーの多様性と革新の力を象徴しています。彼女の活躍は、日本人のスタートアップにとっても大きな励みとなるでしょう。

成功するための戦略

では具体的に、いくつかの戦略と考慮すべきポイントを挙げてみたいと思います。

まず、日本のスタートアップがシリコンバレーで成功するためには、自身のビジネスモデルが「日本市場に特化しているのか」、あるいは「グローバル市場で通用するか」を見極める必要があります。日本で成功しているビジネスがシリコンバレーで通用しない場合、日本市場で得た成功を資金源として、アメリカ市場向けに新たなビジネスを展開する方がいいでしょう。

また、シリコンバレーでの出資を求める場合、本社をシリコンバレーに移転することがほぼ必須となります。VCが提供する付加価値は、「ネットワークや人材紹介」が非常に重要だというのが大きな理由の一つです。もうひとつ、日本のスタートアップがシリコンバレーのVCから出資を受ける際、日本独特の複雑な条件が問題になることがままあります。シリコンバレーのVCはすでに業界として確立されたスタンダードな条件を好むため、日本のタームシートが複雑だったり、色々なシリコンバレーでは見ないような条件が入っていたりすると出資が難しくなります(特に、日本の投資家がすでに多くの株式を保有していると、シリコンバレーのVCは株式の取り分をどのくらいにするのか、日本人投資家をバイアウトするのか、その場合はどんな条件になっているのか、などが問題になります)。

教育制度の違いも、考慮すべきポイントです。日本の教育制度は非常に高い水準を誇りますが、スタンフォードやハーバードといったトップ大学への進学に直結するわけではありません。韓国の場合、国内市場の小ささもあってトップクラスの人材が海外に留学し、人脈ネットワークを築くケースが多く見られますが、日本では、東大に進学することで国内での成功がある程度保証されるため、わざわざ海外のトップ大学を目指す学生が少ないのが現状です。実際、2023年にスタンフォード大学に学部生の一年生として入学した日本人学生は2人しかいません。さすがに少ないのではないかと思います。

日本政府は、優秀な人材を育成し、シリコンバレーでの成功を支援するために、奨学金制度を充実させるべきだと思います。例えばトップ50の大学に合格した学生に対して全額奨学金を提供し、海外での学びとネットワーク形成を支援することが考えられます。そうした支援によって、将来的に日本に戻ったり、または日本と連携して活躍する優秀な人材が増えるのではないかと思います。

JICの存在意義

このような状況において、日本人コミュニティの強化を図るJapan Innovation Center(JIC)の存在は非常に重要です。JICは今後、日本人起業家がシリコンバレーで成功するためのプラットフォームを提供し、人脈形成をサポートすることを通じて、コミュニティの強化に貢献するでしょう。

ここ30年ほどの間にシリコンバレーにやってきた日本人の多くは、企業派遣として来ています。大企業から派遣された人々は平均して3年の任期で日本に戻るため、長期的な人脈を築くのが難しい状況です。1年目に人脈を作り、2年目に仕事を進め、3年目にやっと大きな案件ができそうな条件が揃ったのに次の派遣者にバトンタッチするため、大きな案件も進められず、せっかく築いた人脈がリセットされることが繰り返されています。

一方で日本人コミュニティは、2つの相反するプレッシャーに直面しています。ひとつは、日本人ばかりで集まることで現地のネットワークを築けないという批判。もうひとつは、日本人同士の繋がりが弱いという批判です。そうした状況の改善に向けても、JICは大きな可能性を秘めています。JICは、日本のスタートアップをシリコンバレーに呼び込むことで、外向けに「面白い日本のスタートアップ」をアピールし、日本全体のポテンシャルを理解してもらえる場を提供しますし、日本人コミュニティとしての交流を深めるためのプラットフォームとしても機能するはずです。

ただしJICがそうした役割を果たしていくためには、短期的な成果だけでなく、適切なKPI(重要業績評価指標)を設定したうえで、長期的な視点でエコシステムを構築することが重要です。3年や5年でプロジェクトが終了するのではなく、持続的にサポートを続けることで、より強固なエコシステムが形成されていくはずです。ほとんどの日本人起業家はシリコンバレーでの人脈を作っていかなくてはいけないので人脈構築にも時間がかかります。こちらに来てシリコンバレーでの人脈ゼロの段階からいきなりユニコーンは作れませんし、3年後にユニコーンが出てこないから失敗だ、と言われるのも的外れです。

世界選抜のシリコンバレーにおける日本のプレゼンス

シリコンバレーの最大の強みは「世界選抜」の集積地であることです。経済規模で見ても、日本はカナダの約2.5倍、イギリスの1.8倍の大きさを誇りますが、シリコンバレーでのプレゼンスは弱いと言わざるをえません。日本がこの世界選抜の場で存在感を示すことは非常に重要です。シリコンバレーで磨かれ、世界に通用する人材が増えれば、日本のスタートアップエコシステムも強化されるはずです。

日本のプレゼンスを強化するためには、シリコンバレーという世界選抜の場で活躍する日本人を増やすことが重要です。今後JICには、日本のスタートアップがシリコンバレーで成功するための拠点として、多様な成功パターンを想定し、柔軟なビジョンを持つことが求められます。シリコンバレーでの経験を積むことで、世界に通用する人材が育ち、日本のスタートアップエコシステムも強化される状況を生み出すために、わたしも尽力し続けたいと考えています。

Japan Innovation Campus


住所=212-214 Homer Ave, Palo Alto, CA 94301 USA
開館時間=月〜金8:00〜18:00、土・日・祝は休館